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野茂氏の女房役マイク・ピアザ氏が、イタリアのサッカーチームのオーナーとして奮闘。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ドジャースやメッツで捕手として活躍したマイク・ピアザ氏は昨年6月にイタリアのACレッジャーナという3部のプロサッカーチームを買収した。

2015年6月ごろに、ピアザ氏が、破産宣告したイタリアの名門クラブ、パルマの買収を目指しているというニュースが流れたが、しばらくして、ピアザ氏は買収交渉から撤退を表明。その翌年に、ピアザ氏はイタリアの3部チームのオーナーになった。買収額は明らかになっていないが、地元の報道によるとピアザ氏の投資額は300万ドル程度(約3億3900万円)らしい。

2月20日付けのニューヨークタイムズ紙は、米野球殿堂入り選手であるマイク・ピアザ氏がイタリアでサッカーチームの経営者として奮闘する姿を伝えている。

ACレッジャーナは1990年代半ばにはセリエAで戦っていたが、その後に破産し、スタジアムもレンタルしている。厳しい経営状況にもかかわらず、ピアザ氏は飛び込んで入った。

ピアザ氏は米国生まれの米国人だが、祖父がイタリアからの移民。ピアザ氏自身はイタリアを初めて訪れたのは34歳の時だったが、「カモが水に戻るように」イタリアとのつながりを感じたのだという。イタリアのサッカーチームに投資したいという気持ちをここ数年、持っていたようだ。

ニューヨークタイムズ紙に、ピアザ氏はこんな話をしている。「選手だったとき、飛行機が小さいと文句を言っていたんだ。“なぜ、(ボーイング)757を抑えられなかったんだ?どうして、737なんだよ。オーナーはケチだな”って。今、オーナーとしての僕は”どういうことだ? 一部屋100ドルもするホテルだって?”ってね」。

野茂氏とバッテリーを組んでいたころの若き日のピアザ氏は、いかにも球界のスーパースターという雰囲気を纏っていた。移動の飛行機や遠征先のホテルに愚痴を言っていたという過去の逸話も、あの頃のピアザ氏を思い浮かべると、うなづける。

かつてのスーパースターはオーナーになり、チーム再建を目指しての経営は今のところうまく行っているようだ。

ニューヨークタイムズ紙によると、新しいスポンサーがつき、いったんは離れていったスポンサーも戻ってきたという。シーズンチケットを持っている人の人数は、昨年の2615から5243と2倍になったそうだ。

記事には地元の声も紹介されている。「マイク・ピアザの計画を断固として信じているよ」というものや、「彼はとても大金持ちなんだろうけど、とても近しい感じにさせてくれる人」などと好意的。ピアザ氏はイタリア側からすれば、”外国人オーナー”ではあるが、熱心に試合も観戦し、育成から入場券販売にも積極的に関わっていることなどから、地元ファンの信頼を得ている様子。

野球殿堂入りを果たしたばかりのピアザ氏は楽隠居を選ばず、異種目の、再建が必要なチームのオーナーになるという新しいチャレンジに打って出ている。

そういえば、記事中に「ピアザが初めてイタリアに行ったのは34歳の時だった。この時点で彼は日本へは7回行っていたのだが、なぜか、祖父の母国には行ったことがなかった」と、来日回数が引き合いに出されている。

自らのルーツ、イタリアとのつながりの深さに感じ入る一方で、来日7回でも、あまり思い入れはないのかもしれないと、少々、寂しい思いがしないでもないが。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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