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今年こそ恵方巻の廃棄を減らそう!国がコンビニ・スーパーに対し「需要に合う量を売る」よう初の文書通知

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

農林水産省は、恵方巻が毎年、大量に廃棄される問題の解決に向けて、コンビニエンスストアやスーパーなどの業界団体に対し、需要に見合う販売をするよう、文書で通知することになった。2019年1月11日の朝、NHKが報じている。

売れ残った「恵方巻」が大量に廃棄される問題がSNSで話題となるなど、過熱する販売競争に懸念も出ています。

このため農林水産省は、恵方巻の販売が本格化するのを控えて、スーパーやコンビニエンスストアなどが加盟する7つの業界団体に対し、消費者の需要に見合う販売を行って、食品の廃棄を減らすよう求める文書を通知することになりました。

文書の中では、恵方巻の大量生産をやめる方針を消費者にチラシで理解を呼びかけて、廃棄量を削減した兵庫県内のスーパーの事例も紹介されています。

農林水産省が、恵方巻の廃棄をめぐってこうした文書を出すのは初めてです。農林水産省は「少しでも食品廃棄物を減らして、環境に優しい取り組みを企業に求めたい」としています。

出典:NHK 2019年1月11日 4時43分 報道

「恵方巻の廃棄を少なくするため、国が動いてくれて嬉しい!本当にありがたい」という気持ちが大きい。

一方、「省庁が文書で通知を出さなければ歯止めのきかない小売企業って・・・」という気持ちもある。

ヨーロッパのスーパー、たとえばイギリス大手のTESCO(テスコ)などは、自社独自で食品ロスの調査を行い、食品ロスが出やすい2個以上のまとめ売りをやめるなど(日経MJ記事より)「たくさん売れれば売れた方がいい」だけでない、倫理的な企業経営の理念をきちんと取り入れている。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsでは「2030年までに小売・消費レベルの食品廃棄を半減する」と数値目標設定

2015年9月の国連サミットで採択された、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)では、17あるゴール(目標)のうちの12番目で、「2030年までに小売・消費レベルの食品廃棄を半減させる」という数値目標を設定した。

SDGsの12番目のゴールでは「2030年までに小売・消費レベルの食品廃棄を半減させる」と数値目標が設定されている(国連広報センターHPより)
SDGsの12番目のゴールでは「2030年までに小売・消費レベルの食品廃棄を半減させる」と数値目標が設定されている(国連広報センターHPより)

経済活動と環境配慮を両立させるという世界的な方針が打ち出されている。「売り逃がし無いよう、たくさん用意しておいて、余ったら捨てる方が経済合理性がある」とばかり、毎日、大量に廃棄するのは、SDGsに反している。先進国の姿勢としても恥ずかしい。

われわれ消費者が「日常の」コンビニエンスストアやスーパーの姿勢を観察しよう

消費者としては、コンビニエンスストアやスーパーの、普段の姿勢をきちんと観察し、気づいたことは必要な人に伝えていこう。

企業の公式サイトには「環境に配慮します」「食品ロスを減らします」といった理想的なことが書いてあっても、現実は違っていたり、現場の従業員には全く伝わっていなかったり、という齟齬(そご:ギャップ)を、取材を通して経験してきた。

パートやアルバイトに店舗での業務の多くをゆだねているスーパーでは、「仕事で食べ物を捨て、店から出ればさっきまで捨てていた商品に金を払う」スーパーで働くパート主婦の叫びといった矛盾が生じており、パートやアルバイトで働く人たちが食べ物の無駄に直面している。

大学生や外国人従業員に頼るコンビニエンスストアや飲食業界も同様だ。1282人の大学生に聞いた「飲食系のバイトで食べ物を捨てたことがありますか?」で書いた通り、現場で働く人たちは、ありのままの企業の姿を毎日見て、感じている。

24時間365日、360度全方位すべてに体裁を取り繕い続けることはできないのだ。

その人、その企業の姿勢は、ちょっとしたところから、にじみ出てくる。

企業が捨てるコストだって、他人ごとではない。われわれの納めた貴重な税金や食料品価格から支払われている。

2019年2月の恵方巻の廃棄は、2月3日以降だけじゃない。予約販売のチラシ撮影も考えると、1月以前から始まっている。

2018年2月には、兵庫県のスーパー、ヤマダストアーの「もうやめにしよう」という広告が多くの人の共感を呼んだ。

社会は、変えられないわけじゃない。少しずつでも、動いている。

どの企業がどう具体的に廃棄を減らしていくか。せっかく貴重なお金を払うなら、廃棄を減らす努力をする企業を応援したい。みんなで見ていこう。

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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