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「20世紀最悪の人道危機」に苦しむソマリアが「今世紀最悪の人道危機」で発生したシリア難民を受け入れる

青山弘之東京外国語大学 教授
スーマール・ジャディード、2020年8月29日

シリア難民を受け入れるソマリア

1991年に内戦が激化して以降、国家分断や飢餓に苦しみ、「20世紀最悪の人道危機」と評されたソマリアが、「アラブの春」波及に伴う紛争によって「今世紀最悪の人道危機」に見舞われたシリアから難民を受け入れている――そうしたニュースがインターネットで報じられた。

ソマリアの首都モガディシオにある新ソマリア情報研究開発機構が運営するニュースサイトの「スーマール・ジャディード」(新しいソマリア)は8月29日、同国中部のガルグドゥード州の州都であるドゥサマレブ市に、シリア難民十数世帯が到着したと伝えた。

同サイトによると、ドゥサマレブ市の自治体や地元の宗教関係者らがイニシアチブをとり、シリアから逃れてきた彼らを支援し、受け入れるための活動を行ってきた。

ガルグドゥード州政府は、彼らがドゥサマレブ市にとどまることを選べば、土地を与え、人道支援を行うことを約束している。

ソマリア政府は2018年以来、同国内に居住するシリア人に対して、財産所有や投資などにおいて優遇措置を講じている。

シリア難民の受け入れは、ガルグドゥード州以外でも行われており、地元当局は彼らの国籍取得を認め、必要な支援を行っているという。

シリア難民の帰還状況

一方、ロシア国防省は、シリア政府とともに難民と国内避難民(IDPs)の帰還に向けた調整を行っている難民受入移送居住センターの8月30日付日報で、29日に難民396人(うち女性118人、子供202人)が新たに帰国したと発表した。

ロシア国防省(Facebook)、2020年8月30日
ロシア国防省(Facebook)、2020年8月30日

396人はレバノンからの帰国者。

これにより、シリア南部の主要地域が政府の支配下に復帰した2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は593,204人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者197,956人(うち女性59,526人、子ども100,685人)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は822,484人(うち女性246,802人、子供419,176人)となった。

なお、難民受入移送居住センターが43カ国において把握している難民の総数は6,705,117人。この数は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が発表している難民数(8月14日現在)の5,553,896人よりも1,151,221人多い。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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