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テレビ「中高齢視聴者」切り捨ての時代へ

碓井広義メディア文化評論家
立川志の輔さんと小野文惠アナ(番組サイトより)

長寿番組の終了ラッシュ

今年2月2日(水)、立川志の輔さんが司会を務めてきた「ガッテン!」(NHK)が終了しました。

1995年に「ためしてガッテン」としてスタートして以来、四半世紀以上も続いた長寿番組でした。

そして今月末、「バラエティー生活笑百科」(同)も37年の歴史に幕を閉じます。

民放でも昨年秋、46年続いた「パネルクイズ アタック25」(テレビ朝日系)が終わりました。

「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(同)も4月1日の放送が最後となる予定。こちらも27年にわたる名物番組です。

もちろん、どんな番組も永遠に続くわけではありません。

様々(さまざま)な事情で終了が決まり、また新たな番組がその枠を埋めていくのはテレビの日常でしょう。

ただ、今回の長寿番組終了ラッシュには共通の背景があるのではないでしょうか。あえて厳しい表現をすれば、「中高齢視聴者の切り捨て」です。

視聴者を「年齢」で絞り込み

まず、テレビ界全体で視聴者の減少が続いており、2019年にはテレビの広告費がインターネットに抜かれてしまったという現実があります。

しかも、今年2月に広告会社の電通が発表した「2021年 日本の広告費」によれば、昨年のネット広告費は約2兆7000億円。

ついにマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告費総額を上回ってしまったのです。

危機感を強めたテレビ各局は、重視すべき視聴者を年齢で絞り込んできました。

日本テレビ、TBS、フジテレビは現在、「49歳まで」を重点的なターゲットとしています。

テレビ朝日は「50歳以上も重視する」としていますが、テレビ界全体として中高齢に冷たいのが事実です。

この層は「テレビをよく見てくれるが、商品購買力は弱い」と判断したからでしょう。本当にそうなのかどうかは、ともかく。

商業放送である民放が、生き残りの経営戦略として視聴者を限定することは、止められないのかもしれません。

NHKと「中高齢視聴者」

しかし、公共放送であるNHKがそれに追随する必要はない。きちんと受信料を支払っている中高齢向けの番組も放送する義務がある。

ましてやコロナ禍で外出の機会が減った分、テレビを楽しみに暮らしている中高齢は少なくないのです。

たとえば、かつてテレビ朝日で放送されていた「カーグラフィックTV」は、現在もBS朝日で続いています。

またTBS「噂の東京マガジン」も、BS-TBSに場所を移して放送されています。

どちらも、番組視聴者の多くを占める、中高齢層に対する配慮でした。

「ガッテン!」を単に終わらせるだけでなく、 BSプレミアムなどで続けるという方策もあったはずです。

最近のNHKは、若い世代の視聴者を増やそうとしているのか、視聴率狙いなのか、タレントに頼ったバラエティーなど、民放的な作りの番組が目立ちます。

画面だけを見ていると区別がつかないほどです。

しかし、長年テレビと共に歩んできた視聴者を簡単に切り捨てるのではなく、0歳から100歳までを受け入れる多様性を大事にしてほしい。

それこそ本来の「NHKらしさ」だと言えるのではないでしょうか。

<追記>

「パネルクイズ アタック25」が、BSで復活するそうです。

その名も「パネルクイズ アタック25 NEXT」。

舞台は、3月27日(日)に新規開局する「BSJapanext(ビーエスジャパネクスト)」。

あの「ジャパネットたかた」が運営するBS局です。

司会も変わらず谷原章介さんで、1時間番組に。

初回の放送は開局当日の27日(日)ですから、目玉番組の1つということでしょう。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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