ノート(50) 起訴前最後の取調べ 事件を振り返って改めて思ったこと
~解脱編(22)
勾留20日目(続)
待ち受けるマスコミ
昼食後、午後1時ころから中村検事の取調べが行われた。中村検事によると、保釈で拘置所を出ると想定したマスコミが、その場面を撮影するため、大挙して待ち構えているとのことだった。
保釈などあり得なかった。あえて保釈請求をしない、というのが弁護方針だったからだ。この点は中村検事にも伝えていたことだった。
データの印刷日時
起訴前最後の取調べであり、これまでに事件に関する事情聴取や供述調書作りは一通り終わっていた。しかし、この日は、中村検事が作ってきていた1通の供述調書を確認し、サインするところから始まった。
文書データの印刷日時に関する簡単な内容のもので、本来は事件の経緯や状況に関する長い供述調書の中に盛り込んでおくべき話だった。すなわち、最高検が専門業者に委ねて文書データを詳細に解析したところ、データに記録されている「前回印刷日時」というものが判明した。
もっとも、それは上書き保存前に最後に印刷した日時を意味するにすぎず、上書き保存後の印刷日時は全く記録されないことから、「前回印刷日時」と本当の意味での「最終印刷日時」とは必ずしも一致しないものだった。
一方で、当時の検察にはこうした知識まではなく、厚労省虚偽証明書事件に限らず、捜査の過程で文書データを専門業者に委ね、解析するようなことまではやっていなかった、というものだ。
この記事は有料です。
元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバーをお申し込みください。
元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバー 2017年4月
税込1,100円(記事3本)
2017年4月号の有料記事一覧
※すでに購入済みの方はログインしてください。