重心に全集中!災害避難も登山もふだんのカバンの持ち方も「鬼滅の刃」に学んで荷物を軽くせよ
以前から私の防災レクチャーでは、アウトドアスキルである荷物が軽くなるコツを説明しています。ポイントは2つです。揺らさないことと重心を上げることです。昔は、「二宮金次郎像を参考にしてね」とお話ししていたのですが、それだと今どきの小中学生に通じません。高校生、大学生も微妙です。ですので、「鬼滅の刃を参考にしてみて!」と人気に便乗させてもらって伝えていたら、こどもも大人もすぐ実践してくれるようになりました。みなさんは、鬼滅の刃の持ち方になっていますか?毎日の暮らしでカバンが軽く持てていれば、災害時も素早く行動できます。映画が流行っている今だからこそ、持ち「型」を変えてみてください。
ポイント壱ノ型「揺の呼吸」
よく「女性は何キロまで荷物が持てますか?」という質問をいただくのですが、人によって体力は、違いますし、後述するように、持ち方で軽く感じたり、重く感じたりするのです。何キロ持てるか考える前に、まず、持ち方の工夫をしてみてください。
カバンが揺れると、慣性の法則が働き、カバンがその場に止まろうとする力に反発しなければいけません。揺れていると、同じものを持っていても重くなってしまうのです。
そのため、アウトドアのリュックは、揺らさないように、チェストベルトやウエストベルトで体にフィットするよう調整します。リュックによっては、上記写真のように肩ラインも微調整して、さらに揺れない工夫をしています。トレイルランニングのリュックの形は薄く体のラインに沿っていて、体と別に揺れないようになっています。それくらい揺れないことは重要なのです。
津波から避難する時や、地震の際、落下物や転倒物から逃げる時、素早さが重要になります。それなのに、危険を避けようとした時に、カバンだけが慣性の法則でその場に止まろうとすると、避難の一歩が出遅れてしまいます。そんな逃げ遅れ方は嫌ですよね。
「揺の呼吸」をマスターして、いつもカバンを揺らさないようにしてみてください。ふだんからカバンが軽いことが、災害時にも素早く動けることにつながります。揺れなければ軽くなるので、カバンを服の中に入れて揺れを抑えてしまうのも「あり」です。
ポイント弐ノ型「重の呼吸」
次のポイントは、重心です。リュックの中にパッキングするアウトドアスキルとして、テントなどの重たいものは上に、衣類などの軽いものは下に入れます。もっとも、最近はリュックの形自体に工夫があり、モノの入れ方を工夫しなくても軽くなるものもありますが、その際も仕組みは同じなのです。重心が上になれば軽いのです。
数式にすると上の図のようになります。重心が下だと、重心間の距離が長くなるので、荷物の質量が同じでも重くなるのです。感覚としても、こどもをだっこするより、おんぶや肩車するほうが軽く感じるのは、このためです。頭に水瓶を乗せて運ぶという行動も、重心を上にして軽くする工夫をしているのです。日本の昔ながらのおんぶも、赤ちゃんが肩越しに顔がみえる状態になるほど高い位置になるので、軽くなるのです。だから、何キロの質量のものを持つかというだけでなく、持ち方が重要なのです。
これを説明する時、今までは、二宮金次郎像に活躍してもらっていました。金次郎さんの持っている薪の本数に注目してください。下よりも上の本数の方が多いのです。昔の人はちゃんと重たいものを上にする工夫があったのです。ところが、最近のカバンの持ち方はどうでしょう?みなさん、腰より低い位置に背負っていたりしませんか?リュックの上部が肩よりずっと低くないですか?これは、普段から重たい持ち方です。でも、二宮金次郎像は小学校でも見かけなることは少なくなっていますよね。そこで紹介するようにしたのが、「鬼滅の刃」です。
主人公の竈門炭治郎くんが持っている箱の中に何が入っているかは、ネタバレになる方もいるかもしれませんので、ここでは触れませんが、箱の位置に注目してください。ちゃんと高い位置で持っていますよね!さすが大正時代の子だと思うのです。
そして、これを紹介したら、「高い位置でカバンやリュックを背負うなんて恥ずかしい」と思ってた方から、「すぐ真似したい」と感想をいただくことが増えました。すぐ行動につながる鬼滅効果は絶大です。
重心に全集中
揺らさないことも、重心を高くすることも、いずれも重心が重要な要素になっています。揺れるということは重心が定まっていないからです。寝ている赤ちゃんをだっこするほうが、起きている時よりも重くないですか?体重は変わっていないのです。でも、重心が定まらないと重いのです。
ポケットに荷物をいっぱいつめて走っても、ポケットが腰より低い位置にあったり、ポケットのある服が大きいと体とは別の揺れが起こるので、リュックよりも重くなることもあります。合言葉は重心に全集中です。
ふだんも登山も災害時もカバンやリュックを持つ時は、揺らさない工夫と高い位置で持つ工夫をしてみてください。ふだんできていないことは災害時にできません。災害時だけ急に重たい荷物を持てるようにはなりません。アウトドア業界では、自分の体にぴったりカバンがフィットすることを「シンデレラフィット」と呼んでいました。でも、「鬼滅フィット」と呼び替えてもいいかもしれないと思っています。
それから竈門炭治郎くんは、いつも箱を持って闘っているわけではない事にも注目です。津波避難など、急いで避難が必要な場合を考えると、重たい荷物はあらかじめ安全な高台に置いて、避難に集中できるようにした方がよい場合もあります。
ということで、劇場版「鬼滅の刃」無限列車編が大人気になっている今だからこそ、ふだんの暮らしから、軽いカバンの持ち「型」を鬼滅風にして、きたるべき災害に備えていただければと思います。