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【年度内六冠ロード】大天才・藤井聡太竜王(20)挑決で佐藤天彦九段(34)に連勝し棋王挑戦権獲得!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月27日。東京・将棋会館において第48期棋王戦コナミグループ杯・挑戦者決定二番勝負第2局▲藤井聡太竜王(20歳)-△佐藤天彦九段(34歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は18時52分に終局。結果は81手で藤井竜王が勝ちました。

 藤井竜王は棋王戦10連覇中の渡辺明棋王(38歳)への挑戦権を獲得しました。

 五番勝負第1局は長野県長野市・長野ホテル犀北館でおこなわれます。

 今期棋王戦では合計3局を戦った藤井竜王と佐藤九段。準決勝は佐藤九段が勝ったあと、挑決で藤井竜王が連勝しました。

 現在、五冠を保持する藤井竜王。王将戦七番勝負の防衛戦と並行して、棋王戦五番勝負を戦い、六冠目にチャレンジすることとなりました。

 過去に六冠を制覇した棋士は羽生善治現九段(52歳)ただ1人しかいません。もし今年度、藤井竜王が六冠となれば史上2人目、そして最年少での達成となります。

 藤井竜王の今年度成績は34勝7敗(勝率0.829)となりました。(未放映のテレビ対局をのぞく)

 藤井竜王は6年度連続での勝率8割以上も見えてきました。

 なにもかもが規格外すぎる藤井竜王。満を持して、六冠チャレンジを決めました。

藤井竜王、横歩取りの戦いを制して六冠チャレンジ!

 第1局、第2局ともに振り駒の結果、先手は藤井竜王。佐藤九段は2局続けて横歩取りに誘導しました。

 横歩を取らせたあとの佐藤九段の選択は、第1局はオーソドックスな角を上がる形。そして第2局は比較的実戦例の少ない桂を跳ねる形でした。対して藤井竜王は「ひねり飛車」の形に構えます。

 36手目。佐藤九段は元に戻れない桂を、さらに中段に跳ね出します。佐藤九段、決断の一手でしたが、藤井竜王は慎重にして正確。藤井竜王が桂の捕獲に成功し、形勢をリードしました。

 61手目。藤井竜王は得した桂を飛車取りに打ちます。飛車が逃げたあとに、さらに桂を跳ね出していくのがうまい手順。使いづらいはずの桂をうまく使うのが藤井竜王の特長の一つで、優位を確かなものとしました。

「なんでこんなに上手く指せるんですかね」

 解説の森内俊之九段が感心するほどに、着実にゴールに近づいていく藤井竜王。粘りを身上とする佐藤九段に粘りを許しません。

 佐藤九段は持ち時間の4時間を使い切り、74手目からは一手60秒未満で指す一分将棋。対して藤井竜王は45分を残しています。過去には先に大幅に時間を使って、早めに時間切迫に追い込まれる場面もよく見られた藤井竜王ですが、最近ではそうしたことも少なくなりました。

 81手目。藤井竜王は相手の成桂を取って盤石の態勢。佐藤九段は攻防ともに見込みがないと見て、ここで投了しました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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