口永良部島噴火 降灰予想と取るべき行動
口永良部島で爆発的噴火
きょう(29日)午前9時59分、鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじま:標高657メートル)で噴火があり、噴煙は一時、火口上9000メートルの高さまで達しました。表紙の絵は気象レーダー(高解像度降水ナウキャスト)が10時10分にとらえた噴煙です。
そして、こちらの図は噴火後25分間の噴煙の広がりの様子です。
気象レーダーは主に雨雲をとらえて、雨の強さを観測するものですが、火山噴火に伴う噴煙もキャッチすることができます。1970年世界で初めてアイスランドのエクラ火山(Hekla)で噴煙エコーが観測され、日本では1973年の爺爺岳(ちゃちゃだけ・国後島)を初め、1991年雲仙岳、2000年三宅島、2011年霧島山(新燃岳)など数多くの観測事例があります。
噴煙エコーはもともとは偶然、とらえられたものですが、近年の気象レーダー観測網の拡大、そしてレーダーの観測頻度が高まったことから、火山噴火の観測に大きな役割を担うようになりました。とくに、噴煙の高度や悪天候時の観測に効果があり、降灰予想の精度向上にも期待されています。
降灰予想と取るべき行動
下記の図は気象庁が発表した口永良部島の降灰予想図(29日午前11時)です。29日午後4時にかけ、噴煙は南東方向へ流れ、屋久島にはやや多量の降灰が予想されています。
29日午後3時現在、噴火は続いていて、噴煙の高さは火口上200メートルです。これは現在の状況が継続された場合の予想なので、噴火が弱まったり、強まったりした場合は予想が変わる可能性があります。常に、最新の情報を確認して行動してください。
これまでの降灰予想(2008年スタート)は火山灰の広がりのみ予想し、降灰の量まではわかりませんでした。しかし、今年(2015年)3月から始まった新しい降灰予報では、どこに、どれだけの量の火山灰が降るかを詳しく知ることができます。
さらに、降灰の量を降灰の厚さにより、「多量(1ミリ以上)」「やや多量(0.1ミリ以上1ミリ未満)」「少量(0.1ミリ未満)」の3つに分けて、降灰の影響と取るべき行動が示されました。
今回の口永良部島の噴火では口沖永良部島では多量の降灰(赤色の範囲)、口永良部島から約10キロ離れた屋久島ではやや多量の降灰(黄色の範囲)が予想されています。
多量の降灰では道路一面が火山灰に覆われ(白線が見えない)、見通しが悪い状態で、車の運転や外出を控えるなど警戒が必要です。また、やや多量の降灰は火山灰が降っていることがわかるような状況なので、マスク等で身を守ることが大切です。
重ねて、口永良部島の噴火と降灰予報は最新の情報に留意し、行動するようお願いいたします。
【参考資料】
気象庁地震火山部発表(平成27年05月29日11時00分):火山名 口永良部島 降灰予報(詳細)
新堀敏基,桜井利幸,田原基行,福井敬一,2013:気象レーダー・衛星による火山噴煙観測 ―2011 年霧島山(新燃岳)噴火の事例―,験震時報第 7 7 巻,139-214.
口永良部島の噴煙をとらえた気象レーダーの作画は片平敦さんの協力をいただきました。