拡張・仮想現実市場、今年は3兆円規模に
ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)傘下の高級スポーツ車メーカー、ポルシェが先ごろ、自動車整備用のメガネ型AR(Augmented Reality、拡張現実)機器を開発したと報じられたが、こうしたARとVR(Virtual Reality、仮想現実)の機器やサービスの市場は、今後急成長していくと見られている。
昨年のほぼ2倍に拡大する見通し
米国の市場調査会社IDCによると、ARとVRの製品やサービスに対する全世界の支出額は、今年(2018年)270億ドル(約2兆9978億円)となり、昨年から92%増える見通しだ。
こうして市場は今後も高い伸び率で推移していくという。その2017年から2022年までの年平均成長率は、71.6%になると、IDCは予測している。
ARは、目の前の現実の環境にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術。例えば、メガネ型や透過型ヘッドマウントディスプレーなどの情報機器を使い、現実の風景にさまざまな情報を表示すれば、工場などの作業現場で業務の効率化が大幅に向上するとして、今後の可能性が期待されている。
一方、VRは、目の前にある実際の場面から離れ、完全にデジタル世界に没入するという技術。これを実現する市販製品としては、米フェイスブック傘下のオキュラスVRや、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)などが販売するヘッドマウントディスプレーがある。
小売り、製造、運送の合計支出額は560億ドル
IDCによると、この市場で最も支出額が多い分野は、「消費者向け」市場。その2022年における、推計支出額は530億ドル。この分野では、VRゲームの市場規模が依然大きい。
そして、消費者向けに続くのが、「小売り」「ディスクリート型製造業(自動車、機械、電子機器などの製造)」「運送業」。これらの分野における2022年の合計支出額は560億ドルになると、IDCは見ている。
このほかの成長が見込まれる分野には、「小売業(商品展示)」「研究機関」「映画・テレビ」「公共インフラ(保守・点検)」「教育現場(学習用映像コンテンツ)」などもあるという。
また、支出額を製品やサービス別に見ると、AR/VRの中心的な役割を担うホストデバイスは今年、100億ドルに達する見通し。これに次ぐのが、VR用ソフトウエアで、金額は57億ドルだという。
高まるAR/VRへの関心
IDCのAR/VR部門リサーチ部門バイスプレジデントのトム・マイネリ氏によると、この市場では、新しいハードウエアの登場や、ソフトウエアの改良、利用事例の拡大といった動きに伴い、企業の関心がますます高まっている。
「すでに数多くの企業が、AR/VRに関する試験を行っており、今後これら技術に対する需要は、高まるばかり」と同氏は指摘する。
IDCが予測する、AR/VRへの支出額が最も多い国、地域は中国で、その今年の金額は102億ドルに達すると見ている。一方、2022年までの期間、市場成長率が最も高い国は米国で、年平均成長率は、99.1%になるとしている。
(このコラムは「JBpress」2018年6月12日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)