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パリ五輪から考える、多様性と企業におけるそのはたらき

末永雄大アクシス株式会社代表取締役兼キャリアコンサルタント
(写真:アフロ)

こんにちは。アクシス株式会社 代表・転職エージェントの末永雄大です。

中途の人材採用支援をしつつ、月60万人以上の読者を持つ「すべらない転職」という転職メディアを運営している中で、Yahoo!ニュースでは2013年から「働き方3.0」というテーマでキャリアや雇用分野について発信させてもらっています。

パリオリンピック2024が開幕してから、様々な競技で白熱した戦いが見られ、多くの人が熱中していることかと思います。

にぎやかで楽しいムードの盛り上がりを見せる反面、トランスジェンダー女性が参加したボクシング女子の試合の件から多様性に関して様々な議論がなされています。

 パリ五輪のボクシング女子66キロ級2回戦が1日(日本時間2日)に行われ、イマネ・ケリフ(アルジェリア)とアンジェラ・カリニ(イタリア)が対戦。開始わずか46秒でカリニが棄権し、ケリフが勝利した。ケリフは性別適格性検査に合格しなかったため昨年の世界選手権で失格となった過去があり、パリ五輪への出場が賛否を呼んでいる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b052018e0274921e82bedab77411c49459c5b465

近年、世界的に多様性が重視されるようになり、政策や法律等の様々な場面で耳にするようになりました。こうした国際的なスポーツの祭典においても話題となったことで、より一層多様性に関する考え方は変わってくるのではないでしょうか。

ここでは企業における観点に着目して、多様性を正しく理解し尊重していくには何が必要なのかを考えていきたいと思います。

企業に求められる多様性とは?

多様性のその中身には、性別や年齢、国籍のような属性的なものと、文化や信仰、価値観やライフスタイルのような思考的なものがあります。

また、多様性という言葉はダイバーシティにも置き換えられ、経済産業省が「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」という定義でダイバーシティ経営を推進しています。

企業においては、どういった理由で多様性が重視されているのでしょうか。

異なる背景や考え方を持つ人で何かに取り組むことは、異なる視点から考えることに繋がります。そうすることでより多様化する社会における様々な層の顧客のニーズを深く理解することができたり、革新的なアイデアが浮かびやすくなったりします。結果的に社会に寄り添い、顧客の為になる働きへと繋がっていきます。

時代の変化に伴い、こうした多様性に配慮されている企業の価値は高まってきているように感じます。以前と比べて、社会全体が多様性に関心を持ち始めたことや、女性の社会参画がより活発化してきたこと、男女問わずワークライフバランスが重視される傾向にあることなどが背景にあると考えられます。

また、人口減少による人材不足という面でも、こうした多様な人材を採用し、戦力としていくことは持続可能な企業や社会を築いていくためにも重要な要素となります。

ダイバーシティ実現への課題とは?

企業の多様化にはまだ課題もあります。

ダイバーシティの実現において課題となるものに、誰しもがもつとされているアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)というものの存在が挙げられます。これは先入観や固定概念によるものの見方や捉え方のゆがみ、偏りのことであり、無意識ではあるものの、それを認識し、マネジメントしていくことが重要になってくるとされています。

例えば、自分が持っている服と同じ服を着ている人が目につく、赤い車が欲しいと思っていると街を歩いていても赤い車を目で追ってしまう、こういった些細なこともアンコンシャス・バイアスと呼ばれる認識の歪みです。多くの情報を得る中で人は無意識化で情報の選別を行っているということです。

こういったことが人に対しても起きているということです。

経済産業省の発表した報告の中の例を挙げると、ある女性の功績を従業員に読ませた場合と、その女性の功績を架空の男性の功績として読ませた場合では、架空の男性の功績としていた後者のほうが「尊敬に値する」「一緒に働きたい」と感じられているということがあります。

これは性別によるバイアスがかかっているといえます。性別以外にも国籍や身体障害などでも知らず知らずのうちに偏見をもっているのです。

これに対抗するには、無意識化にあるバイアスの存在を認知し、自身のコントロール下におくことが効果的であると考えます。

経済産業省の発表した報告からも、多くの企業がアンコンシャス・バイアスが存在していることそのものを認識するためのアンケートや研修等を行っていることがわかります。

継続的な取り組みの結果、男性の育休取得率の向上や、女性の管理職登用の倍増などの結果に繋がっており、認知や意識をすることでアンコンシャス・バイアスは軽減することができることが分かります。

平等な採用人事や労働環境・制度をより良いものへと更新していくためにも、こうした取り組みは行われるべきであり、また、個人個人の取り組みが社会全体の考え方の変化へと繋がることで、新たな常識が無意識化の常識へと変わっていくのではないかと思います。

まとめ

企業において多様性を認めることは、企業のイノベーション力の底上げすることや、より深い市場理解へと結びつきます。社会における責任を果たすという点でも、企業が多様性を積極的に取り入れる必要があり、その価値を最大限に活かすことで、持続可能な成長の実現も可能となるでしょう。

アクシス株式会社代表取締役兼キャリアコンサルタント

青山学院大学法学部卒。新卒でリクルートキャリア(旧リクルートエージェント)入社。 リクルーティングアドバイザーとして様々な業界・企業の採用支援に携わる。東京市場開発部・京都支社にて事業部MVP/西日本エリアマーケットMVP等6回受賞。その後サイバーエージェントにてアカウントプランナーとして最大手クライアントを担当し、 インターネットを活用した集客支援を行う。2011年にヘッドハンター・キャリアコンサルタントとして独立。2012年アクシス株式会社を設立。代表取締役に就任。キャリアコンサルタントとして転職支援を行いながら、インターネットビジネスの事業開発や社外での講演活動等、多岐にわたり活躍する。

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