世界遺産の価値からみた金閣寺
世界遺産の魅力シリーズ、今回は人気スポット金閣寺をご紹介。応永4(1397)年の今日5月13日に「金閣」が棟上げされたと記録がある。こちらを訪れると、大半の人がまず金箔の煌びやかさに感嘆する。昭和62年に金箔の張り替え時にかかった費用が約7億4千万円。厚みのある約20万枚の金箔を、漆を塗って二重に貼られている見事なものだ。
昭和25年の放火による全焼を経て、昭和30年の再建で現在の姿に「復元」されたが、実は金箔は焼失以前「ほとんど目視できない状況」であった。興味深いのは、それでも金閣という建物は当時国宝指定を受けていたということだ。つまり金箔に価値があるだけではなく、仮に金箔が無かったとしても、創建時から一度も焼失していなかったことはもちろん、建物自体が貴重な価値を有していたということになる。
この建物の価値は「構造」にあって、1階から3階までが全く別の様式で建てられていることが評価されていると言える。1階は「法水院(ほっすいいん)」と呼ばれて平安時代の寝殿造、白木白壁で造営されており、2階は「潮音洞(ちょうおんどう)」と呼ばれて鎌倉時代の武家造、3階は「究竟頂(くっきょうちょう)」と呼ばれて室町時代の禅宗仏殿造となっている。このように一つの建物に三つの時代の代表的建築様式を内包させている建物は日本広しといえども金閣だけだろう。
さらに金閣の周辺の庭園は「特別史跡及び特別名勝庭園」に指定されているため、全国でも10箇所にしかない景色と歴史が融合した場所ということになる。鏡湖池に映る金閣は「逆さ金閣」と呼ばれて美しく、池に浮かぶ最も大きな葦原島(日本列島を表す)や各島に配置された石は、当時の守護大名達が義満に使用してもらうべく各地から運び込んだ選び抜かれた石で、「赤松石」、「細川石」など有力守護大名の名前の付く石まで残る。
現在参拝者は金閣と庭園を一緒に見て写真にも収めるが、当然ながら庭園自体は金閣から眺めて一番美しく見えるように構成されており、本来は金閣から見るべきものと言える。ただ現在は原則的に立ち入ることができないので、筆者が(特別拝観時に)撮影した内部からの写真(ごく一部)を参考までに。1階内部には宝冠釈迦如来坐像や足利義満坐像も安置されている。
庭園散策のルートの最後に現れる「夕佳亭」というお茶室は、江戸時代初期、後水尾天皇が来られた時に金閣寺を美しく眺めていただこうという趣旨で、金森宗和好みによって造営されたという。南天の床柱と萩の違い棚が特徴だ。
金閣のベストシーズンはやはり秋の紅葉の時期。金閣の北側には多くの楓が植えられており、まさに紅葉の名所といっていい。金閣寺自体は年中人気の寺院なので、紅葉のために敢えていくという人は少ないかもしれないが、散紅葉も含めて、紅葉レベルが純粋に高いということは強調しておきたい。