魚介類の半数、資源量危機 日本周辺、水産庁が評価
最近、サンマやスルメイカなどの不漁のニュースを頻繁に耳にするようになりました。今日は、日本周辺の主要な魚介類の半数が資源量危機というこちらのニュースを深掘りしてみましょう。
このニュースの元となったのはこちらの水産庁のプレスリリースです。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/181030.html
資源の半数が低水準というと驚く人も多いと思いますが、実は、現在の資源評価が始まった1996年(平成8年)から一貫して、約半数の水産資源が低水準にとどまっています。あまりメディアに取り上げられてこなかったのですが、最近になって低水準資源が増えたわけではありません。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/190124.htmlより引用
私は、仕事柄、漁師と話をする機会も多いのですが、魚が減っているというのは彼らの共通認識です。そして、漁獲量も激減しています。日本の海面漁獲量(天然)を下の図に示しました。1996年の600万トンから、2018年には325万トンへと半減しています。サンマやサバなど個々の魚種に着目してみると、年によって増えたり減ったりするのですが、全体で見ると直線的に減少しているのです。このペースで漁獲量が減っていくと20年後には漁業という産業がなくなっているかもしれない。そんな勢いで漁獲量が減少を続けています。
数字に強い読者なら、「低位、中位、高位の比率は安定しているのだから、資源状態に大きな変化はないのではないか?」と疑問に思うかも知れません。魚が減っても低位、中位、高位の比率は変わらないというそのカラクリは、日本が採用している独自の資源水準の定義にあります。
海外では持続的に漁業を行うのに適切な資源水準(MSY水準)を中位と定義して、資源水準を評価するのが一般的です。この場合、魚が減れば低位の割合が増えていきます。日本では、最近の平均的な資源水準を中位と定義しています。魚が減った状態が長く続けば、その水準が中位になるという仕組みです。日本で中位水準と評価されている資源のなかには、過去の過剰漁獲で資源が減少した状態が維持されているものも、多く含まれています。国際的なやり方で水準を評価すれば、ほとんどの資源が低水準になるでしょう。
例えば、福島県が主な漁場であるヒラメ太平洋系群は、原発事故以降、漁獲がほぼ停止したため、資源が大幅に増加しました。資源が高位だったにもかかわらず、急速に増えました。高位や中位の水準が低く設定されていることがわかります。減った状態を中位水準としたので、資源のポテンシャルに対して、極めて低い水準になっていたのです。
日本における「豊漁」の報道にも注意が必要です。こちらの記事に詳しく書きましたが、かつては100万トン獲れた北海道のニシンは資源が激減して、数十年が経過しました。最近になって、たまたま数千トン獲れた年があると「ニシンが豊漁」とメディアが大きく報じます。他国であれば資源崩壊と定義されるような状態でも、日本では豊漁になってしまうのです。
以上見てきたように、資源が低位水準から回復せず、漁獲が激減しているのですが、水産庁はプレスリリースの中で「これら資源の回復に向け、的確な資源管理を今後も行っていくことが重要です。」とコメントをしています。すでに的確な資源管理が行われているという認識のようですが、認識を改める必要があるでしょう。