トルコ大手日刊紙はシリアのアサド大統領の娘ザイン氏について痛恨のフェイク・ニュースを掲載
トルコ大手日刊紙のスクープか?!
トルコの大手日刊紙の一つ『サバフ』は8月23日、シリアのバッシャール・アサド大統領の娘ザイン氏(16歳)がトルコ国内で目撃され、その写真が数日前からインターネット上で拡散されていると伝えたうえで、写真を掲載した。
エヴレン・アブドゥッラホール記者の記事「バッシャール・アサドの娘ザイン・アサドがボドルムに! 皆がこの話題で持ちきり」(Besar Esad’in kizi Zein el-Esad Bodrum’da! Herkes bu iddiayi konusuyor)によると、ザイン氏が目撃されたのは、トルコ南西部のエーゲ海に面するリゾート地のボドルム市。
ザイン氏はイスタンブールの親戚を訪問した後、ボドルム市を訪れたという。
ザイン氏、そして彼女とともにボドルムを訪れた友人たちは、いずれも身元を隠し、市内で6台の高級車をレンタルし、クルーザーでクルージングをするなどして観光を楽しんだという。
その時に撮影された写真がこれ(↓)。若い女性2人と男の子1人が写っているが、画像が粗く、ザイン氏本人かどうかは確認できない。
アラブ・メディアはこぞって否定
『サバフ』の報道に関して、サウジアラビアの衛星チャンネルのアラビーヤは、写真の女性2人が、アサド大統領のおじのジャミール・アサド元人民議会議員(ハーフィズ・アサド前大統領の弟)の娘ファラク氏の娘とクサイ・アルスラーン少将の娘で、ザイン氏ではないと伝えた。
また、シリア政府に批判的な立場をとるレバノンのネット新聞『ムドン』も、ザイン氏のトルコ入国は不可能だとしたうえで、写真の女性がジャミール・アサド元人民議会議員の孫娘だと報じた。
アサド大統領の子供たちへのネガティブ・キャンペーン
アサド大統領はアスマー・アフラス夫人との間に3人の子をもうけている。長男のハーフィズ氏(2001年生まれ、19歳)、長女のザイン氏(2003年生まれ、16歳)、次男のカリーム氏(2004年、15歳)である。
アサド家については、大統領府や国営のシリア・アラブ通信(SANA)が負傷兵とその家族を慰問する様子がたびたび報じている(「アサド大統領一家がハマー県の戦傷者の家庭を慰問」、「アサド大統領がクリスマスと新年を祝して、家族とともにヒムス県各地の負傷兵の家庭を慰問」を参照)。
また、長男のハーフィズ氏は、国際科学オリンピックや国際数学オリンピックのシリア代表チームのメンバーとして、スイス、ルーマニア、ブラジルでの大会に参加する様子が伝えられているほか、2017年7月にはブラジルのテレビ・チャンネルのグローボーのインタビューに応じている(「アサド大統領の長男ハーフィズ氏「人々は父についていろいろ言いますが、彼らの多くには物事が見えていません」」を参照)。
だが、最近では、子供たちを貶めようとするネガティブ・キャンペーンが目立つようになっている。
7月29日には、米財務省外国資産管理室(OFAC)がシーザー・シリア市民保護法と大統領令第13582号に基づき、ハーフィズ氏を13の個人・団体と共に制裁対象に追加した(「米国はシーザー・シリア市民保護法の一環として「ハマー・マアッラト・ヌウマーン制裁」と銘打って、アサド大統領の長男ら14の個人・団体を新たに制裁対象に」を参照)。
一方、ザイン氏については、求婚し、結婚したいと告白する兵士の映像が6月に拡散され、話題となった。
また、今月初めには、850米ドルもするクリスチャン・ディオールのカジュアル・シューズをインターネットで購入したとの情報も拡散されていた。
『サバフ』の報道も、こうしたキャンペーンの一環をなすものだが、今回の痛恨のフェイク・ニュースにより、アサド家ではなく、それを非難する自らの信頼を貶めることになった。