外国語の勉強、やる気をどう維持? 北欧言語・ノルウェー語編
英語の勉強をしている時、モチベーションが続かずに、途中で挫折してしまいそうになる。そういう時、ほかの人はどうやって「やる気」を維持しているのだろう?
そう思ったことはあるだろうか?
英語やフランス語などと比べて、使う機会の少ない北欧の言語。
北欧には英語が得意な人も多いため、現地の言葉を何年間も話せずに(話そうとせずに)暮らしている外国人は多い。
北欧ノルウェーの人口は530万人。規模的には小さい国の言葉である「ノルウェー語」を学ぶ人々を取材した。
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オスロで開催されていたのは、「言葉をどうやって学ぶか」という3時間の無料セミナー。文法などを教える授業ではなく、「言葉の勉強方法」を、ノルウェー人が外国人に伝授する。
参加者の国籍や年齢は幅広く、仕事を探している人が多かった。ノルウェーでの仕事探しは大変で、敷居が高い。
その勉強方法、大丈夫?自分に合っている?
- 勉強方法が正しければ、実は、子どもよりも大人のほうが語学の上達は早い
- 15~30分あれば、15個の新しい単語を暗記することが可能
- 子どもと違って、大人は「外国語を学ぶ価値」に納得していないと、挫折する
- 勉強方法を誰かかから教えてもらっても、実際に実践する人はとても少ない
- 「時間がない」と愚痴をいう人が多いが、時間は必ず見つけることができる
「一緒に仕事」という移民の暮らしをサポートする団体で働くアーラン・ニーハイムさん。パワーポイントで、外国語の勉強方法と「脳の仕組み」を説明する。
脳は自分が思うようには動いていない、「脳の仕組みの理解」が語学上達につながる
ただがむしゃらに勉強しても、新しい言葉は脳に定着しない。脳はどのように動いているのか、効率的に勉強するヒントとアドバイスが提供された。
「答えを誰かからすぐに教えてもらったら、『暗記するのは僕の仕事じゃないな』と脳は思い込んでしまいます。面倒でも、自分で考えてみる。そのプロセスがあってこそ、脳は新しい情報を覚えてくれます」。
問題集などですぐに答えを確認しようとする人、答えを誰かにすぐ聞く癖がある人は、覚えておいたほうがよさそうだ。
単語帳「フラッシュカード」は、効率的な語学勉強になるかもしれない
効率的な単語の暗記方法として、ニーハイムさんがおすすめするのが、「フラッシュカード」という単語帳。今の時代なら、スマホではフラッシュカードのアプリが何個もあるし、手作りすることもできる。
詳しくはネットで検索すると出てくるが、カードの表に問題、裏に答えを書く。脳が新しい言葉を覚えるためには、「時間を置いてから復讐する」ことが大切なため、数日後にまた繰り返す。
自分の記憶や体験を文章に加える
「これを覚えるのは、僕の仕事だ」と脳に理解してもらうには、工夫がいる。
「犬」という単語を覚えるなら、カードの裏には「私の犬の名前はポチだった」など、自分の昔の記憶と結びつけるといい、とニーハイムさんは話す。
「でも、実際に単語帳で復習するということを、『行動にうつす』人は少ないんです」とも付けくわえる。
「話せるようになりたい」と思い続けるだけで、そのために行動にうつしている人は、どれくらいいるだろうか?
「記憶と結びつける」ということは、私は無意識に以前からしていたんだな、と聞いていて思った。
短い日記を書くと、先生に添削してもらって、フランス語やノルウェー語を勉強していた。今も、フィンランド語で短い日記を書いているところだ。教科書ばかりを見つめがちな人は、やってみるといいかもしれない。
あなたは、どうやってモチベーションを維持している?
オスロ大学大学院で政治学を学ぶ韓国人のイエラム・キムさんは、大学でノルウェー語クラスを最初に受講した。だが、欧州言語を話す留学生は上達のスピードが速かったため、その時の苦労した体験が、今でもトラウマになっているそうだ。
ノルウェー人に囲まれて、ノルウェー語で大学の一般科目を受け始めた頃、時には嫌になることもあったという。
ストレスが溜まりすぎないように、自分を大切にすることも大事
「だから、たまには授業に行かずに、自分で教科書を読んでいました。それでも試験には合格できました」。
落ち込みすぎて挫折しないために、「ノルウェー語の環境から離れる」という工夫も必要だったと言う。
「悔しい体験」が私のやる気に火をつける
「ノルウェーで仕事を見つけたいという思いが、私の言語学習のモチベーションです」。
オスロ大学大学院で保健経済学を学ぶ韓国人のエジンさんは、数日前の「悔しかった」体験が、新しいモチベーションになっていると話す。
「就職活動中で、ある企業から電話がかかってきたんです。でも、私のノルウェー語能力が十分ではなかったという理由で、面接のチャンスを逃してしまった」。
狙っていた職種だったので、「とてもフラストレーションがたまった。その悔しい体験が、今の私のモチベーションになっています」。
モチベーションとなるものは、何個かあったほうがいい
「自分の背中を押す、内からのモチベーションがないと、語学勉強は続かない」と講習後に取材で答えるニーハイムさん。
「将来ノルウェーの会社で働きたいからという理由は、ずっと先にある長期的な目標。それだけで続けることは大変です」。
「昔フランス語を学んでいた時、私もモチベーションがなくなってしまったことがあり、困っていました。ブリュッセルに住んでいた時に、現地の人と交流できる部活動に参加して、毎週彼らと会話する習慣を作ってみたら、効果がありました」。
「仕事を見つける」という長期的な目標だけでは、くじけやすい。現地の友達をつくるなど、毎日の生活で「これは話せないと大変だな」と思える環境に身を置くとよいのでは、とニーハイムさんはアドバイスした。
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朝日新聞GLOBE+「北欧言語を学ぶ。語学勉強に必要な「悔しい」気持ち」
Photo&Text: Asaki Abumi