ふるさと納税の新たな形を模索 日用品の購入で終わらない寄付となるか #専門家のまとめ
感謝祭の翌日の金曜日に行われる大規模なセール「ブラックフライデー」。各種ECサイトでもブラックフライデーに関連したプロモーションが盛んだ。
一方、年末が近づくにつれて、ふるさと納税を検討している人も多いだろう。今年は、このブラックフライデーとあわせてふるさと納税の利用促進も盛り上がりを見せている。
筆者はふるさと納税の問題点について以前にYahoo!個人でまとめたことがある。行政のみならず企業版のふるさと納税を行うなど様々な手法が開発されるなど、ふるさと納税の市場そのものは右肩上がりだ。
これまで、ふるさと納税では地産の野菜やお米、時には日用品など自宅で使えるお得な商品を積極的にアピールするところが多かったが、近年では体験型や高額返礼品など趣向を凝らしたものも増えてきた。
10月からは総務省によるルールの厳格化によって、各自治体もふるさと納税の活用戦略を練り直しが図られている。ルールの厳格化に先んじて、夏頃にふるさと納税を前倒しで利用した人もいるかもしれない。
改めてふるさと納税の理念に沿って考えるならば、その地域の活性化に期する取り組み、例えば地域の文化的支援、地域の魅力向上や雇用促進といったものに活用されるべきだと筆者は考える。
実際に、ふるさと納税を利用する際には、教育資金、観光促進、移住促進など、寄付金の用途について選択する欄が設けられている。一方、実際に選択はしたものの、具体的にどのような取り組みや活動に使われているのか知る機会はあまり多くはない。寄付金の使用用途や獲得した予算によってどのような社会的なインパクトが生まれたのか、今後の自治体の広報戦略とも繋がるポイントだ。
近年、日用品や食料品だけではない、地域の文化的な支援や社会的な課題解決のための寄付を募る取り組みが増えてきている。ここでは、そうしたユニークな取り組みの一部を紹介する。
*リンク先は取り組みを紹介する報道記事をピックアップしている。寄付を検討している人は、検索等で各種ふるさと納税サイトにアクセスしてもらいたい。
▼電子地域通貨を返礼品に 地域限定の利用用途で、実際に足を運ぶ機会が生まれ、返礼品だけに終わらない地域経済の好循環が生まれる
電子地域通貨を返礼品に 高山・飛驒で「さるぼぼコイン」ポイント
※朝日新聞 2023年11月25日
▼伝統工芸の後継者育成のための機会と資金を提供する取り組みで、返礼品だけで終わらない継続的な資金サポートにつなげる目的
※朝日新聞 11月23日
▼ふるさと納税でNPO支援 孤立する子ども達のための居場所づくりの資金源として活用されることで、具体的な社会課題の解決にも一役買う
孤立する若者のための第3の居場所を。東京都立川市のふるさと納税で寄付募集
※HEDGE GUIDE 2023年11月16日
▼ふるさと納税の寄付金で保護猫支援と猫を軸とした事業展開へ 官民連携の事業の創出で三方よしの社会課題の解決を目指す
「ふるさと納税で保護猫を救う」斬新なカラクリ 猫の殺処分ゼロを目指す「ネコリパ」の取り組み
※東洋経済オンライン 2021年12月23日
今回紹介した取り組みは、あくまで一事例であり、他にも、各自治体からユニークや取り組みが生まれている。これまでの大雑把なカテゴリーでの資金の使用用途に終わらない、具体的な事業そのものに応援する仕組みも生まれており、他の自治体もこうした他事例を参照しながらふるさと納税の活用戦略を練り直してもらいたい。
キモとなるのは、行政だけの取り組みに終わらない、地域事業者やNPOらと連携し新たな事業を創出し、地域の価値向上や地域経済の循環や社会課題の解決に積極的につなげようとする姿勢だ。そして、そうした姿勢そのものが、地域の魅力や価値に直接つながるPR効果も生まれてくるだろう。
一方、加熱する返礼品競争によって、産地偽装問題で苦情が殺到したケースもある。返礼品の偽装によってふるさと納税の制度から除外され、地元議会の争点として現在進行で議論されている自治体もある。
苦情1千件 ふるさと納税「日本一」都城に逆風 産地偽装で市長陳謝(朝日新聞、2023年11月24日)
公文書の偽造疑惑など調査へ、兵庫・洲本のふるさと納税問題で百条委(朝日新聞、2023年11月21日)
これまでにも、換金性の高い返礼品や地場産の商品とはいえない日用品を返礼品にしたケースもあり、そうした事件が出来事を経て、定期的に総務省によるふるさと納税の改定が行われてきた。今回の10月の規制でも、調達経費の制限のみならず、返礼品を地場産に限定するルールも課されたほどだ。
ふるさと納税の是非やあり方の見直しを求める声は各所からも挙がってきているのも事実だ。
【社説】ふるさと納税 見直しの論議を地方から(西日本新聞、2023年11月20日)
最終的には、地域のファンをいかに増やすかという戦略であり、ふるさと納税という仕組みが仮になくなったとしても、地域のファンや事業を作り出し地域を活性化させる道筋を作ろうとすることが大切だろう。