「桐島聡と名乗り出た男は紙の保険証で他人になりすました」は誤り。自費診療との報道
末期がんで入院中の男が東アジア反日武装戦線の桐島聡だと1月25日に名乗り出たことを受けて、「紙の保険証だったから桐島聡は他人になりすましができた。マイナ保険証だったらこうはならなかった」との意見がSNSで拡散していますが、これは誤りです。
「がんの治療費は高額のはず→他人の保険証を使っている?」推測がいつの間にか真実に
これは桐島聡を名乗る男が末期がんで入院していたとの報道を受けて、「がんの治療費は高額のはずなのに、どうして入院できているのだろう?」という疑問から始まったものと思われます。
そこから「高額な治療費を抑えるには他人の保険証を使うしかないはず」という推測が生まれ、いつしか「桐島聡は他人の保険証を使って入院していた!」が事実かのように広まりました。
そうしたなかでマイナ保険証(マイナンバーカード保険証)推進派がSNSを中心に「マイナ保険証なら顔写真が入っているから桐島聡は他人になりすますことはできなかった」との意見を展開。
紙の保険証維持派を攻撃する武器として、「桐島聡、紙の保険証で他人になりすまし説」を使うようになりました。
しかし、その後の報道でこれは誤りだと分かります。
桐島聡を名乗る男は保険証を提示せず、自費診療
桐島聡が名乗り出てから2日後の1月27日、各メディアは相次いで「桐島聡を名乗る男が保険証を使っていなかった」ことを報じ始めます。
桐島聡を名乗る男は、“ウチダヒロシ”という仮名で自費診療を受けていたとのことです。
また、末期がんでの入院も「がんで長期入院して末期がんになった」のではなく、「入院した(搬送された)時点で末期がんの状態だった」ということです。
つまり、「桐島聡と名乗り出た男は紙の保険証で他人になりすました」という意見は誤りだと言えます。
「マイナ保険証でもテロ犯捜索には役立たない」も正しいとは言えない
この自費診療の報道を受けて、今度は紙の保険証維持派が「自費で診療しているのだから、マイナ保険証だったとしても指名手配犯の捜索には役に立たない」とマイナ保険証推進派に反論し始めていますが、これも正しいとまでは言えません。
マイナ保険証に切り替わっていたならば、指名手配犯は保険証で他人になりすますことができなく(難しく)なります。
つまり、いままで紙の保険証でなりすましが行われていたかもしれない可能性を潰すことができます。
桐島聡と「紙の保険証 VS マイナ保険証」は関係ない
要するに、今回の桐島聡を名乗る男と保険証問題はまったく関係がないわけです。
今回の桐島聡を名乗る男は紙の保険証を使ってなりすましをしていないし、マイナ保険証があれば桐島聡を名乗る男が見つかっていたわけではありません。
一方で別の指名手配犯が紙の保険証を使ってなりすましをしているかもしれないし、マイナ保険証に切り替わっていれば別の指名手配犯が見つかるきっかけになっていたかもしれません。
結局、今回のデマはマイナ保険証推進派が自分たちの意見を補強するために桐島聡を名乗る男の報道を使ったというだけのものです。
そしてそれがデマだったからと言って、「マイナ保険証で他人になりすますことができなくなる」というメリットはなくなりませんし、紙の保険証の方が優れているということにもなりません。
以上です。