侍ジャパンは強い、しかし…上原浩治が語るWBCの難しさと選手の本音
実に6年ぶりの開催となる。野球の国・地域別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」が3月8~21日に東京、台湾、米国で開催される。2009年の第2回以来の優勝を狙う日本代表「侍ジャパン」も続々とメンバーが発表されてきた。
メジャーでも投打の二刀流で実績を積み上げるエンゼルスの大谷翔平選手や、メジャー屈指の右腕と評されるパドレスのダルビッシュ有投手、東京五輪で主軸を担ったカブスの鈴木誠也選手をはじめ、日本球界からもセ・リーグ三冠王の村上宗隆選手らが名を連ねる。さらに、今回は史上初となる日系人選手、ラーズ・ヌートバー外野手もメンバーに入った。
身長190センチ、95キロの恵まれた体格で、昨季はカージナルスで108試合に出場して14本塁打をマークした。ミドルネームは「タツジ」というそうで、大会では外野の一角として期待が高まっている。
WBCの侍ジャパンは日本球界の主力とメジャー移籍組の「混成チーム」だったが、ヌートバーの加入は「日本にルーツを持つ」新たな代表像を示してくれるのではないだろうか。我々の世代は2004年アテネ五輪に初めてオールプロで挑んだ。それまで五輪を最高峰の舞台に頑張ってきたアマチュア選手たちのプレー機会を奪ってしまったという複雑な思いも抱いた。プロが引き継いだ以上、出場に意欲を持って調整するトップ選手がいることは喜ばしい限りである。
グランドレベルでは、今回のチームも強さに疑いの余地はない。一方で、大会の位置づけとしては、世界的な盛り上がりを見せたサッカーのワールドカップ(W杯)と比べると、野球は北中南米と東アジアと、盛んな場所が限定的である。日本で開催される1次ラウンドも、日本戦以外で観客がどれくらい入るだろうか。
大会日程もシーズン開幕前に日程が組まれていることに、メジャーの「調整」の疑念が生じてしまう。彼らはシーズンが始まっても5月くらいまでのプレーと、シーズン終盤やポストシーズンのプレーは〝本気度〟がまるで違うことを、身をもって経験している。
代表の選手たちには、モチベーションやシーズン本番への気持ちの切り替えなどの課題とうまく向き合ってほしい。私自身、2006年シーズンは結果的にWBC準決勝の韓国戦がベストピッチだった。シーズンになると、これまで日本代表で味方として戦っていた選手たちと対戦することになったり、世界一から、レギュラーシーズンへの切り替えも難しかった。
日本代表は五輪もWBCも常に優勝を期待される。しかし、一発勝負の試合は戦力がどれだけそろっていても、決して簡単ではない。目の前の試合を一戦必勝の気持ちで戦ってほしい。ファンの皆さんも、あの選手が入っていないなどの意見はあると思うが、代表メンバーが決まったらみんなで侍ジャパンを応援しましょう。