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退路断ち海外挑戦の小倉順平。自粛期間中トレーニングの苦労は?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
サンウルブズへは2017年にも加入(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 2020年のシーズン途中に国内トップリーグのNTTコムから国際リーグ・スーパーラグビーのサンウルブズへ移籍した小倉順平が、6月8日、オンライン取材に応じた。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響などでチームは5月30日に解散していた。日本政府の緊急事態宣言発令後の心境を語る言葉には、外出自粛が求められるなかでのアスリートの苦悩がにじんだ。

 その他、3月14日のシーズン中断前に感じたこと、新天地を求めた経緯なども語られた。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月14日にスーパーラグビーが中断されました。その前に、サンウルブズの国内ホームゲームがなくなり海外遠征が長期化していました。

「日本に帰る時は中止になる時だろうなと思っていた。だから、あまり帰りたくはなかった。スーパーラグビーの中断が決まる前から、他のスポーツがどんどん中止になっていたので、『いつかなるな』という予想はしていた。噂も少し流れていましたし。だから、(正式決定時は)そんなにびっくりするほどではなかったです。世界がこうなっていたから、とうとう来ちゃったか、というくらいです。(それまでは)ただ、目の前のできる練習と試合をひたすらやる、中止になってしまったらそれはそれでしょうがない、というマインドでやっていたと思います」

――自粛期間中は。

「緊急事態宣言が出る前(4月上旬頃まで)はジムも普通に開いていたし、公園でのトレーニングと走ることを含め、できていました。でも、緊急事態宣言後はジムも閉まりましたし、外を走るのもあんまりいい顔をされなくなりました。スポーツ選手というのもあるので、変に目を付けられるのもよくないと思ったので、一時、自粛をして、家の中でできることをやった感じです。いまはまたジムが開き出しましたが、前ほどは行けていないです。以前は毎日行っていましたが、いまは2~3日に1回、マスクをつけて、です」

――周りの目は気になるもの。ただ、マスクをしながらのトレーニングは苦しいはずです。

「マスクって濡れると口に張り付くんです。(ただ、外すと)見られるんですよね。(周りの目は)気にし過ぎてもよくないとは思いますけど、やっぱり、マスクしてないだけで浮きますからね、いまは。大変な時期ではあるなと思います。それは日本全体がそうで、僕だけじゃない」

――改めて感じていることは。

「家の中にいるのが好きな人もいますが、散歩したり、公園に行ったりする人は多い。この時期、色々と感じることはあるのではないでしょうか。あと、スポーツって、大事なんだなと思いました。スポーツを観て、盛り上がって、それが息抜きになっている人がいるんだと(改めて)感じました。(スーパーラグビーが中断されて)色んな人が連絡をくれるし、SNSでいろんな選手がオンラインでトレーニングをすると一緒にやってくれる人もいる。サンウルブズがやっていたエナジーチャレンジ(トレーニングの世界同時配信で4~5月に実施。小倉はメニュー進行で音頭を取った)もそう。スポーツのイベントが大事なんだな、と思いました」

――さて、久々のスーパーラグビーはどんな印象でしたか。

「ニュージーランドのハリケーンズは別次元で強かった(2月9日に15―62で敗戦)。個々が強いのはもちろんですが、それ以上に『ラグビーって、こんな簡単なんだ』と思わされるようなところがあった。ひとりひとりが判断して、スペースにボールを運ぶ…と」

――彼らも所定の戦術に沿って動いてはいるのでしょうが、あくまで「判断」の妙が際立つ。

「(戦術も)あるんでしょうけど、(プレーの)精度が高いですし、ひとりひとりが判断をしているように見えた。誰かをマークしなきゃいけないというより、全員が全員…という感じです」

――自分たちがハリケーンズのように戦うには。

「長く同じ人たち同士で練習していくのは大事だと思います。最低限のフィジカルも重要だと思いました」

――判断力の高い選手に「フィジカル」で苦しんだら、どんどん後手を踏む。

「全くテンポが落ちないなかゲイン(突破)されると後手に回る。ミスマッチ(大型選手と小柄な選手とのマッチアップが生じること)にもなってしまうので」

――いま、目指している選手像について教えてください。

「いままで自分で仕掛けることが多かったんですけど、代表で安定して活躍できる人はミスが少なく、変な動きをしないというか、無駄な動きがない。何事も精度高くしているのはもちろんですけど、ミスが少なく、やることが統一されている。

 まず練習中に軽くミスをしない。練習時間が長くなった時に軽くミスするケースもあるんですけど、それでも、練習からミスしないようにするのが大事です。練習では(ミスをしても)ごめんって言えば済んじゃうのですが、それがなくなるように」

 身長172センチ、体重82キロの27歳。桐蔭学園高校、早稲田大学を経て2015年に国内トップリーグのNTTコムへ入り、3年目に社員からプロへ転向していた。さらなる進化と2017年以来の日本代表復帰を狙う延長線上で、今季のサンウルブズ入りを目指した。

 しかし今回、スーパーラグビー(当初はプレーオフを含め2~6月の予定)とトップリーグ(同1~5月)の日程がほとんど重なっていた。小倉はNTTコムとの契約期間中でもあったため、シーズン中にあたる2月15日の移籍成立まで話し合いを重ねていた。

 もし前所属先から罰則を受けることになっても、呑み込むつもりだった。

「送り出してくれたNTTコムには感謝しています。シーズン中に(チームを)出るって、普通ではないこと。迷惑をかけたと思っています。言ったら、僕は契約違反をしているので。僕みたいな選手が皆そうなったら(シーズン中の移籍を決めたら)チームが成り立たなくなる。

 その時はサンウルブズが最後のシーズンになると言われていて、今後、一生ないかもしれない。そこで、(そのチームに)行くチャンスがあるのに行けないのは…。それで、この決断となりました。結果的には、行けてよかったと思います」

 今後のサンウルブズの動向は未定。小倉は取材時の段階では、国内チームへの移籍を検討中としていた。悔いなき道を歩む。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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