智弁 春夏連覇へ好発進! 夏の甲子園開幕
満員の甲子園で夏の選手権が開幕(タイトル写真)。初日第2試合にセンバツ王者の智弁学園(奈良)が登場し、初出場の出雲(島根)に6-1で快勝した。奈良予選で不振だった3番・太田英毅(2年)が初回に2ラン。予選で苦しい投球が続いたエース・村上頌樹(3年)も5安打1失点とまとめ、本番での強さはさすがだった。
==奈良予選、大苦戦で甲子園へ==
「予選はプレッシャーがあって、少し力みました」という村上は、40回1/3で13失点と苦しんだ。3回戦で公立の磯城野(しきの)に、9回2死までリードを許す展開。準決勝では公立の名門・郡山に3本塁打を浴び、終盤にようやく追いついて、いずれも延長で振り切った。天理との決勝も9回、1点差に詰め寄られる冷や汗ものの勝利。薄氷を踏む思いで夏のスタートラインに立った。
==予選不調の太田が一発 エース・村上も復調==
村上同様、予選で苦しんだのが太田。3番ながら5試合で1打点。.211で長打はゼロで、「自分が打っていたらもっと楽に甲子園に来られた」と責任を感じていた。その太田が初回の好機、出雲のエース・原暁(3年)の高めに浮いたチェンジアップを逃さずとらえると、打球はバックスクリーンの横に飛び込んだ。3回にも2死からの連打で突き放すが、出雲もその裏に1番・橋本典之(2年)が左翼越えの二塁打を放って食い下がる。初出場校の健闘にスタンドが沸いた。
立ち上がり、やや球が高めに浮いていた村上は、中盤に入ってエンジンがかかり始める。5回の2死2塁では、9番・都田紘大(3年)を渾身の高めストレートで三振に仕留めた。この1球は、自己最速にあと1キロと迫る144キロをマークした。村上は、「ここで1点を取られたら相手が勢いづくので、しっかり抑えなければと思っていました」と勝負どころで力を発揮する貫禄を見せた。
==勝負どころでスクイズ決まる==
続く6回の攻防が試合を分けた。智弁は、1死2、3塁の好機を迎える。
先述の奈良大会の磯城野戦、郡山戦で決勝打を放っている1番・納大地(3年)に対し、小坂将商監督(39)が出したサインはスクイズ。「相手の攻撃も1番からだったので、どうしても1点を取りたかった」という指揮官の勝負手が見事に決まって(記録は安打)4-1と突き放した。その裏、村上は失策で先頭の出塁を許すが、ここは捕手・岡澤智基(3年=主将)が、相手盗塁を阻止し流れを渡さない。出雲・植田悟監督(44)も、「走者を置いてからのバッテリーの落ち着きが違っていた」と唸った。「6回の1点で楽になった」という村上は、7回以降、三者凡退を重ねて無四球、119球で完投した。予選で苦しんだ二人は、異口同音に「甲子園では楽しみたい」と笑顔を見せた。予選で苦しんだとは言え、負けなかったのは力がある証拠だ。さらに、その苦戦が今後の試合で生きるのは間違いない。2回戦は、開幕戦で僅差勝ちした鳴門(徳島)に決まった。センバツ同様、初日での勝利は日程的にも恵まれた。
==初出場・出雲の健闘光る==
完敗を喫したが、出雲の健闘も光る。
エース・原は、「(本塁打は)正直、すげぇな、と思いました。でも智弁相手に自分の納得する球も投げられたし、満員の観衆の前でベストパフォーマンスができました」と胸を張った。ピンチで何度も好守を見せた遊撃の都田や三塁の森本晃叶(2年)のきびきびした動きは印象に残る。甲子園は球児たちを逞しく成長させる場でもある。2日目に履正社(大阪)が、3日目に横浜(神奈川)が登場し、序盤戦から今年の甲子園はいつも以上に熱い。