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「地球から冷蔵庫をなくしたい」発明以来200年技術が同じ冷蔵庫を鮮度維持庫に変え食品ロスを減らしたい

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
フレッシュトロンの説明をする(株)エバートロン代表取締役の田中久雄氏(筆者撮影)

世界初の電気冷蔵庫が発明されたのは1834(天保5)年。米国の発明家パーキンスが世界で初めての圧縮式の冷凍方式を開発した(東芝未来科学館 公式サイトより)。

冷蔵庫の基本的な機能は発明以来変わっていない、と話すのが、株式会社エバートロン代表取締役の田中久雄氏だ。

冷蔵庫は、発明されてから200年間も経っています。200年間も全く技術が変わっていない家電が冷蔵庫です。ただ冷やすだけ。私たちは地球上から冷蔵庫をなくしたいです。全ての冷蔵庫を鮮度維持庫に変えるということが、僕たちの夢です。早く(冷蔵庫を)博物館入りさせたい、というのが私たちの気持ちです。

出典:株式会社エバートロン 代表取締役 田中久雄氏の言葉(2018年12月14日に開催されたエバートロン製品発表会にて)

株式会社エバートロンは昭和43年(1968年)11月4日に設立された。社名の「エバートロン」は「永遠の電子」の略。独自の水分子コントロール技術で、揚げ物の衣の油吸収率を平均50%削減する「Dr. Fry(ドクターフライ)」や「Dr.Fry-2」など、プロのシェフがこぞって活用する機械を生み出してきた。

「フレッシュトロン」のデモキット。人気のため数ヶ月待ちの状態という(筆者撮影)
「フレッシュトロン」のデモキット。人気のため数ヶ月待ちの状態という(筆者撮影)

冷蔵庫の鮮度維持期間を数倍にする「フレッシュトロン」を開発

このたび、エバートロンが開発したのが、鮮度維持装置の「フレッシュトロン」。冷蔵庫の鮮度維持期間を数倍長くするという。

実際に、この装置を使って、日本で獲れた魚を海外の飲食店に送る、という実験過程について、2017年10月24日に放送されたテレビ東京系列の番組「ガイアの夜明け」で紹介されていた。

筆者は2017年10月16日、レビューをしている映画『0円キッチン』のトークイベント(於:クックパッド本社)で監督ダーヴィド・グロス氏と登壇した際、株式会社エバートロンの代表取締役の田中久雄氏と、広報室ディレクターの松村美波氏とご挨拶していた。前述のテレビ番組が放映されたのは、その一週間後だ。

2018年12月14日、株式会社エバートロン製品発表会で説明する、代表取締役の田中久雄氏(筆者撮影)
2018年12月14日、株式会社エバートロン製品発表会で説明する、代表取締役の田中久雄氏(筆者撮影)

一般の冷蔵庫だと傷んでしまうタイを、5日間、鮮度保持できる

鮮度を維持する装置「フレッシュトロン」では、2枚の電極を使っている。

たとえば、タイ。普通の冷蔵庫ですと、こういうふうに腐ってしまいますけれども、この2枚の電極を冷蔵庫に入れた瞬間に、5日間は、内臓が腐らずに維持できる、というふうになります。

出典:2018年12月14日、株式会社エバートロン製品発表会で、代表取締役の田中久雄氏の説明

2018年12月14日、株式会社エバートロン製品発表会で説明する、代表取締役の田中久雄氏。左は一般の冷蔵庫で保存したタイ、右がフレッシュトロンで保存したタイ。内臓の鮮度を保つことができている(筆者撮影)
2018年12月14日、株式会社エバートロン製品発表会で説明する、代表取締役の田中久雄氏。左は一般の冷蔵庫で保存したタイ、右がフレッシュトロンで保存したタイ。内臓の鮮度を保つことができている(筆者撮影)

35日間保蔵した豆苗は水分の蒸発を抑制

野菜に関しては、豆苗(とうみょう)の実験結果が披露された。

35日間保蔵した場合、冷蔵庫では重量が85%まで減少した。水分が蒸発したためである。緑の部分も褐変(茶色く変化)している。

一方、フレッシュトロンで保蔵した場合、重量変化は92%に留まった。

豆苗の保蔵実験結果を説明する、田中久雄氏。左は一般の冷蔵庫、右はフレッシュトロン(筆者撮影)
豆苗の保蔵実験結果を説明する、田中久雄氏。左は一般の冷蔵庫、右はフレッシュトロン(筆者撮影)

一般の冷蔵庫の野菜室で8日間保蔵した青梗菜(チンゲンサイ)

野菜や果物などに含まれる水分を維持させることは、鮮度を保つことにつながる。

ちなみに8日間、一般の冷蔵庫の野菜室(温度6度)で保存した青梗菜(チンゲンサイ)は、葉っぱがしなびて、黄色くなってきた。

8日間、一般の冷蔵庫の野菜室で保蔵した青梗菜(チンゲンサイ)(2018年12月10日から17日まで野菜室で保蔵、筆者撮影)
8日間、一般の冷蔵庫の野菜室で保蔵した青梗菜(チンゲンサイ)(2018年12月10日から17日まで野菜室で保蔵、筆者撮影)

出荷調整・廃棄ロス削減・原価コストダウンなどに貢献

フレッシュトロンは、世界中の食料倉庫に革命を起こしたいと考えて開発された。

さまざまな問題に貢献することが期待できる。たとえば食材を入れた時の品質や鮮度を長期間維持する「鮮度維持」、水分の蒸発を抑制する「乾燥予防」、廃棄率を削減させる「食品ロス削減」、飲食店では、食材を安価な時期に購入することで原価を下げることができる「原価のコストダウン」、地域格差や季節格差をなくす「出荷調整」など。

鮮度維持装置「フレッシュトロン」が実現する野菜や鮮魚などの鮮度維持(株式会社エバートロン公式サイトより)
鮮度維持装置「フレッシュトロン」が実現する野菜や鮮魚などの鮮度維持(株式会社エバートロン公式サイトより)

ある食品メーカーでは、農産物が収穫された時の状態をできるだけ長く維持するため、独自の倉庫を開発し、保蔵している。

家庭での食品ロスが最も多いのは野菜類だ。「フレッシュトロン」が、事業者はもちろん、家庭での食品ロス(フードロス)削減に寄与することが期待される。

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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