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野菜保存袋ってどのくらい持つの?3社3種類の袋に1ヶ月間チンゲンサイ(青梗菜)を保存して比較してみた

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
三井化学「スパッシュ」始め、各社から発売されている、野菜用鮮度保持袋(筆者撮影)

まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロス。日本では646万トン(環境省・農林水産省 平成27年度推計値)発生しており、東京都民が一年間に食べる量(重量)に匹敵すると言われている。

そのうち、45%に当たる289万トンが、家庭から発生している。「企業が悪い」と思っている人が多いが、案外、家庭からも出ているということだ。そのうち、最も多く捨てられているのが野菜類。農林水産省の統計調査(平成26年度)によれば、世帯人数にかかわらず、どの世帯でも野菜類の廃棄が50%前後と多く、全世帯の平均は47.7%と最も高くなっている。次いで果実類が17.8%なので、野菜と果物だけで、廃棄しているうちの65.5%と、半分以上を占めることになる。

世帯員構成別、主な食品別の食品ロス量割合(世帯食一人1日当たり)(平成26年度 農林水産省 食品ロス統計調査、世帯調査より)
世帯員構成別、主な食品別の食品ロス量割合(世帯食一人1日当たり)(平成26年度 農林水産省 食品ロス統計調査、世帯調査より)

野菜と果物の、家庭でのロスを減らすことができれば、家庭由来の食品ロスは今より減ると予想される。

それに貢献する一つの手段が、野菜や果物の鮮度を保持する「鮮度保持袋」だ。各社から発売されている。

三井化学東セロの「スパッシュ」や関西紙工の「愛菜果」など

一般の方が投票するランキングサイトで調べてみた。2016年10月のランキングでは、三井化学東セロ(とうせろ)株式会社の「スパッシュ」が注目アイテムとして紹介されており、2位にランクインしている。

2018年2〜3月のランキングでトップに選ばれているのが、関西紙工の「愛菜果(あいさいか)」だ。

これらランキングの上位にランクインしている、三井化学東セロの「スパッシュ」、関西紙工株式会社の「愛菜果」、株式会社ストリックス デザインの「鮮度保持ポリ袋」を購入してみた。それぞれ、インターネットの通販サイトや、100円ショップ、文房具店などで購入できる。

写真左からスパッシュ、愛菜果(あいさいか)、鮮度保持ポリ袋(筆者撮影)
写真左からスパッシュ、愛菜果(あいさいか)、鮮度保持ポリ袋(筆者撮影)

3社3種類の袋に1ヶ月間、チンゲンサイ(青梗菜)を保管して比較してみた

3社3種類の鮮度保持袋にチンゲンサイ(青梗菜)を保管し、冷蔵庫の野菜室(庫内温度6度)で約1ヶ月間保管し、比較してみた。

食品の保存に関するプロフェッショナルである、元東京農業大学教授の徳江千代子先生の監修書籍『賞味期限がわかる本』(宝島社)によれば、青菜の保存期間は一週間くらい。濡らした新聞紙にくるみ、冷蔵庫の野菜室に入れることで、一週間くらい持つという。

1ヶ月というと、その4倍の期間だ。かなり過酷な試験と言える。前述の徳江先生監修の本によれば、青菜は、茹でて冷凍すれば1ヶ月持つが、生では無理だろう。

2018年11月6日に冷蔵庫の野菜室(庫内温度6度)に入れて、12月4日に出してみた。

2018年11月6日から12月4日までの約1ヶ月間、チンゲンサイを保存してみた(筆者撮影)
2018年11月6日から12月4日までの約1ヶ月間、チンゲンサイを保存してみた(筆者撮影)

3種類とも、チンゲンサイ1わのうち、2枚以上の葉が黄色や褐色などの色の変化を起こしていた。だが、意外なほど、チンゲンサイの水分量が保たれていた。実験の際に準備するコントロール(比較対象)は作らなかったが、おそらく、袋に入れなければ、もうとっくに萎(しお)れていただろう。野菜保存袋は、長期的に保管力を高める効果があると言える。

黄色になった2枚の葉を除いた、三井化学東セロの「スパッシュ」で1ヶ月間保存したチンゲンサイ。水分が保たれており、1ヶ月も経ったとは思えないほどみずみずしい(2018年12月4日、筆者撮影)
黄色になった2枚の葉を除いた、三井化学東セロの「スパッシュ」で1ヶ月間保存したチンゲンサイ。水分が保たれており、1ヶ月も経ったとは思えないほどみずみずしい(2018年12月4日、筆者撮影)

農林水産省食品産業もったいない大賞 農林水産大臣賞を受賞した三井化学東セロの「スパッシュ」

三井化学東セロ株式会社の「スパッシュ」は、2016年、農林水産省の食品産業もったいない大賞、農林水産大臣賞を受賞している。

アグロ・イノベーション2018に出展した三井化学グループ(筆者撮影)
アグロ・イノベーション2018に出展した三井化学グループ(筆者撮影)

この「スパッシュ」が、2018年11月20日から22日まで東京ビッグサイトで開催されたアグロ・イノベーション出展されるという。神戸での講演を終え、奈良に泊まってから、東京の会場に向かった。

2018年11月22日、東京ビッグサイトで開催された「アグロ・イノベーション2018」に出展する三井化学株式会社のスパッシュ(筆者撮影)
2018年11月22日、東京ビッグサイトで開催された「アグロ・イノベーション2018」に出展する三井化学株式会社のスパッシュ(筆者撮影)

会場では、「スパッシュ」「パルフレッシュ」「アドフレッシュ」と、鮮度保持期間の異なる3種類の袋が展示されていた。

三井化学株式会社、フード&パッケージング事業本部 企画管理部の基盤技術グループリーダー、吉田存方(のぶまさ)さんにお話を伺った。

「スパッシュ」は約7日間、野菜を保管できる

「スパッシュ」は、およそ7日間の鮮度保持期間がある。

出展された「スパッシュ」を説明する社員と、それを聴く来場者(筆者撮影)
出展された「スパッシュ」を説明する社員と、それを聴く来場者(筆者撮影)

「パルフレッシュ」は3週間。

3週間の鮮度保持期間を持つ「パルフレッシュ」(筆者撮影)
3週間の鮮度保持期間を持つ「パルフレッシュ」(筆者撮影)

「アドフレッシュ」は5ヶ月間、鮮度を保持することができる。

5ヶ月間もの鮮度を保つことができる「アドフレッシュ」(筆者撮影)
5ヶ月間もの鮮度を保つことができる「アドフレッシュ」(筆者撮影)

「スパッシュ」は、野菜の水分量を適度に保つことにより、鮮度を保つことができる。

「スパッシュ」は、OPP(オリエンテッドポリプロピレン)を使っており、「パルフレッシュ」はPE(ポリエチレン)を使っている。ポリエチレンの方がしなやかで強く、重量のあるものにも耐え得るのだという。

「パルフレッシュ」を使ってのりんごの保存(筆者撮影)
「パルフレッシュ」を使ってのりんごの保存(筆者撮影)

何回くらい繰り返して使うことができる?

吉田さんに、スパッシュは、何回くらい繰り返して使えるかを伺ってみた。洗って、乾かせば、数回は使うことができるとのこと。

「スパッシュ」は、楽天のサイトで購入できる。「パルフレッシュ」は、これまで業務用がメインだったが、ドラッグストアの「サンドラッグ」で、現在、チャックを二重にした「W(ダブル)チャック袋」が販売されているそうだ。

サンドラッグで家庭用として販売されている鮮度保持の「W(ダブル)チャック袋」(筆者撮影)
サンドラッグで家庭用として販売されている鮮度保持の「W(ダブル)チャック袋」(筆者撮影)

競合他社の2種類についても違いを聞いてみた

かなり無茶振りだが、競合他社の2種類についても、吉田さんに、「スパッシュ」との違いを伺ってみた。

3種類の袋で1ヶ月間チンゲンサイを保存した結果。変色している葉が数枚あるものの、それ以外は色と水分が保たれ、かなり日持ちすることがわかる(筆者撮影)
3種類の袋で1ヶ月間チンゲンサイを保存した結果。変色している葉が数枚あるものの、それ以外は色と水分が保たれ、かなり日持ちすることがわかる(筆者撮影)

「スパッシュ」は、野菜の水分状態を最適に保つことで鮮度保持ができ、変色や萎れ(しおれ)を防ぐことができる。

「愛菜果(あいさいか)」は、エチレンを吸着させることにより鮮度を保つことができる。「愛菜果」のパッケージにも説明があり、エチレンガスを吸着透過させる「大谷石」の粉末をポリエチレンに加工しており、水滴が付着しにくく、腐敗菌の発生や増殖を抑制する、と書いてある。

ストリックス デザインの「鮮度保持ポリ袋」は、ASKという抗菌剤による抗菌効果と、エチレンガスの減少効果により、野菜の鮮度を保つことができる。

三者三様、それぞれ、違ったアプローチで、野菜や果物の鮮度を保ってくれるということだ。

2018年11月19日、愛知県主催のシンポジウムでも野菜保存袋が配布された

2018年11月19日、愛知県主催で、食品ロス削減シンポジウムが開催され、筆者は基調講演し、パネルディスカッションのファシリテーターを務めた。

この会場では、来場者に、野菜保存袋が配布されていた。

2018年11月19日、愛知県主催の食品ロス削減シンポジウムで来場者に配布された野菜保存袋(筆者撮影)
2018年11月19日、愛知県主催の食品ロス削減シンポジウムで来場者に配布された野菜保存袋(筆者撮影)

先日、ある都道府県の店舗で、その地域指定のゴミ袋がレジ袋として使われていて便利、という投稿を目にした。レジ袋として渡されたものが、ゴミ袋に転用できるということだ。今、レジ袋廃止の動きが出ている。どうしても顧客にビニール袋を渡さなければならない場合、野菜や果物の鮮度保持袋を使うというのもありかもしれない。取っ手はついてないけれど。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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