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韓国「日本統治からの解放記念日」に"反日"を探す… 「釜山の街角の日本化」案じる記事がランク1位に

(写真:イメージマート)

8月15日は韓国の「光復節」。日本の植民地支配からの解放記念日だった。

例年、大統領が参席しての政府公式の式典が厳粛なムードのなか行われ、この歴史を繰り返すまいという誓いが立てられる。

すると「反日でピリピリする」といった雰囲気も予想しがちだ。

ところが、今年の夏はなかなか「日本」の影があまり見えなかった。2021年までの文在寅政権時には、反日の刺客、キム・ウォヌン氏(元光復会=抗日闘争遺族会長)の「親日狩り」過激スピーチがあったりもしたのだが…

政府公式式典での尹錫悦大統領のスピーチのうち、このフレーズが話題になった。

「日本は安保と経済のパートナー」

光復節の大統領スピーチとしては破格の内容にも見えた。

大論争が巻き起こるかに見えたが、「待った」が入った。まさにそのスピーチが行われていた15日の午前に尹錫悦大統領の実父が逝去。ユン・ギジュン氏は国内の名門延世大学名誉教授で、国内の統計学の権威だった。享年91歳。

すると政界も、論争よりもまず弔いという雰囲気へと変わっていった。弔問会場には“宿敵”の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表も訪れ、尹大統領と握手を交わす姿もメディアで報じられた。

大統領スピーチへの国内メディア反応 関心は「日本」より…

翌16日の報道ぶりを見ても、やはり日本の影は薄い。

国内主要メディアの16日朝刊で尹大統領による「日本はパートナー」発言を1面トップもしくは社説で報じたのは「朝鮮日報」のみだった。

「8.15に『韓日はパートナー』 尹大統領異例のメッセージ、日本の好反応が続いてこそ」

韓国側の片思いでは意味がない、という内容だ。

いっぽう、8月15日の大統領スピーチで主要メディアが大きく報じたのは、むしろ以下のふたつの発言内容の方だった。

「共産前提主義は反国家勢力。彼らに屈してはならない」

暗に左派野党「ともに民主党」の勢力をも批判するもの。この日に「日本はさておき、国内の左右対立を煽るようなスピーチ」というのは前政権の文在寅時代にも見られたものだった。以下の各紙は1面トップでこの内容を伝えている。

▲ 京郷新聞 = 国を取り戻した日、国民を分断させるスピーチ

▲ 国民日報 = "共産主義の盲従、反国家勢力が活発化"…光復節の日、尹の主張

▲ ソウル新聞 = 尹 "共産全体主義の勢力に屈服してはいけない"

▲ 世界日報 = "共産全体主義の盲従、反国家勢力が今も活発化"

▲ アジアトゥデイ = 尹 "反国家勢力に屈服してはいけない"

もうひとつはこの点。

「抗日独立運動は、独立運動ではなく自由民主主義国家を作るための建国運動だった」

抗日独立運動は「反日」のみならず、大韓民国という国家を作るための運動だったという定義だ。これは主に保守系のメディアが大きく報じている。

▲ 朝鮮日報 = "独立運動は自由民主主義の建国運動"

▲ 中央日報 = "先烈たちの独立運動は自由民主の建国運動"

これは日本の話、というより「韓国のありよう」について触れる内容だった。

釜山の「日本化」を案じる声がほぼ唯一の「日本の影」

それでも探っていけば「日本」の影はあった。

国内最大ポータルサイト「NAVER」では、ニュースを掲載する各メディアのデイリーアクセスランキングが公表されている。

8月15日の掲載140メディアの全ニュースのうち、見出しに「日本」が入った記事がベスト5に入ったのは9本。かなり少ないという印象ではある。うち4本が台風の話題。さらに1本は登山専門メディアの「富士山に鉄道ができるのか?」という記事。

残り4本はこういったタイトルだった。

「無料で見られないように4メートルの壁を設置…日本の花火大会も『有料化』」(韓国日報)

14日の隅田川花火が大盛況だった様子。規模が拡大し続ける中、主催者側が収益確保のために観覧席の有料化を図っているというニュース。

「25年ぶりに起きたこと…韓国、日本に追い越される」(韓国経済)

今年の第2分期のGDP成長率が「日本1.5%」「韓国0.6%」だったことを紹介。韓国が日本に成長率で上回られたのは「25年ぶり」として危機を煽る内容。

「日本で数日間で韓国人数千人が死亡した事件」(オーマイニュース)

左派系メディアは今年が関東大震災が起きて100年目にあたり、その時に起きた朝鮮人虐殺事件の様子を8月15日のこの日に報じた。

最も強い「日本の影」はこの記事に見られた。国内最大の通信社「聯合ニュース」のデイリーアクセスランキング1位になった。

「ルポ:ここは大阪か? 日本語の看板に占領された釜山のホットプレイス」(聯合ニュース)

韓国第2の都市圏釜山の中心街西面(ソミョン)に近年新たなホットプレイスができている。そこが折からの日本ブームに乗り、店頭に日本語があふれる店で埋まっている。現地の人たちの「たんなる流行」という声を拾う一方で、同メディアは「韓国料理店よりも日本語が書かれた店を探す方が簡単」と記した。

この現状について、大学教授2人のコメントを紹介している。

カン・ボンウン教授(光云大学東北アジア文化産業学部)「日本との関係が良くなり、その文化を楽しむことは良いが、単純に消費対象としてだけ見る点は残念」「

外交的問題が解決されていない状況で、日本風の飲食店、居酒屋が増えることは違和感を感じる」「日本との関係やその国に関する学習と理解がある程度進展してから、文化を受け入れる必要がある」

ソ・ギョンドク教授(成信女子大学):「いくら韓日関係が改善されたとしても、まだ日本文化に不快感を感じる消費者も多い」「日本文化が韓国に入ることを反対することはできないが、消費者の立場から見て不快に感じるほど過剰な面があり、経営者の立場からもこの部分を考慮すべき」

重ねて、この記事は8月15日の国内最大の通信社内のアクセスランキング1位になった記事。1000以上のコメントが寄せられ、旧Twitterに転載された投稿では5万ビューを記録した。韓国内の「やはりこの日を忘れまい」という心情の現れだと感じられる。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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