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コロナジョークの心理:「俺コロナ」や「県外出たら退学」:熱心さ?おやじギャグの失敗?

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:みんなが笑えるのなら良いのですが(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

<緊張の中で、人は「笑い」を求める。しかし、一歩間違えると、他人を不快にさせ、犯罪にすらなってしまう。>

■学生に「県外出たら退学」

コロナ騒動に関連して、大学教員の「行き過ぎた発言」が問題になりました。

新型コロナウイルス感染拡大を受け、奥羽大(福島県郡山市)歯学部の男性教授が今月、県外に出た学生は「退学処分となります」などとメールを送っていたことが分かった。~「感染予防を注意するあまり、(退学という)行きすぎた表現になってしまったようだ」(同大広報)と話している。

出典:「県外に出たら退学」福島・奥羽大教授が学生にメール 大学「行き過ぎた表現」と謝罪 4/14毎日新聞Y!

この先生に悪気はなく、本気でもなく、むしろ学生指導の熱心さやウケ狙いが、行き過ぎた発言になったかと思います。

■俺コロナ

先日から、コロナに関するジョーク、悪ふざけで、逮捕までされている人もいます。

69歳男性。成田空港で飛行機が出発する前に、「俺、陽性だけど大丈夫?」と発言。この男性を機外に降ろすために飛行機は1時間以上遅れ、男性は偽計業務妨害容疑で逮捕。

54歳男性。群馬県の電車内で「俺はコロナだ」と話したことで他の乗客とトラブル。電車が1時間止まり、偽計業務妨害容疑で逮捕。

42歳男性。愛知県内の家電量販店で「俺はコロナだ」「コロナビーム」などと叫び逮捕。

49歳男性。愛知県内のドラッグストアで「俺はコロナ」などと言って女性店員に向かって咳をして逮捕。

逮捕されて報道されたものだけで何件もありますから、コロナの冗談で人に迷惑をかけた人は、かなりいることでしょう。

■なぜコロナジョークを言ってしまうのか

人は、何か気の利いたことを言って受けようとします。ごく当たり前の「おはようございます」や「よろしくお願いします」ではインパクトが弱いですから、何かを言おうとします。

上手くウケれば、評価が上がりますが、失敗すれば白けさせ、評価が下がり、時には失脚します。

政治家がジョークや、支持者へのリップサービスのつもりで言ったことが、後で問題になることは、後を絶ちません。

今、新型コロナウイルスで緊張感が増す中だからこそ、その緊張感をやわらげ、少し微笑めるようなことを言おうとして、失敗する有名人芸能人もいます。

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■ちょっと面白がらせたい、騒がせたい

幼い子供が、大人の前でわざと「おしり」「うんち」などと言って大人が騒ぐのを面白がることがあります。

これを大人がしてしまうこともあります。わざと人の嫌がることや下品なことを言って、ウケを狙います。

お笑い芸人も、下ネタで笑いを取ることがありますね。

これと同じことで、コロナでしてしまう人もいます。コロナジョークを言って、周りが騒いで、「いや、いや、冗談」とタネあかしをして笑ってもらえれば、成功です。

でも、逮捕されてしまった人たちなどの言ったことは、笑えない冗談です。みんなに迷惑をかけました。

逮捕された人は中年男性が多いのですが、これは中年がついおやじギャクを行ってしまう心理と近いでしょう。

NHK「ちこちゃんに叱られる!」では、「おやじギャクは、脳側頭連合野が活性化し前頭葉ブレーキがきかなくなっているから」と脳科学者 茂木健一郎先生が解説していました。

思いついた言葉遊びを、すぐ口にしてしまうのが、中年男性です。語彙が豊富だったり、コミュニケーション能力があるから駄洒落も言えるのですが、行き過ぎれば嫌われます。

■大いに騒がせたい

軽いジョークを超えて、騒がせたいと思う人もいます。包丁を取り出したり、ピストルを見せれば大騒ぎになるでしょうが、今なら「コロナ」の一言で大騒ぎです。

武器も腕力も社会的地位も、何もなくても、コロナの一言で大騒ぎが起こせます。

■緊張からの開放

あなたは、家族の中や、気心が知れた友人たちの中で、コロナジョークを言いませんか?

少なくない人々が、不謹慎ではありますが、コロナジョークを言ったことがあるでしょう。決してコロナを軽く見ているわけではなく、患者のことを思っていないわけではないのですが。

コロナ騒動で、世の中が暗くなっています。人に近づくと「密です!」などと言われてしまいます。いつもより緊張して、外出しています。

それが、家庭に戻ったり、仲良くの友人どうしで集まった時に、緊張が解けます。あるいは緊張を解こうとします。それが、コロナジョークにつながります。このコロナジョークのTPOを間違えると、大変です。

福島第一原発事故のあとも、同様のことが起きたかと思います。現地を視察した後で、緊張感が解けた政治家がついジョークを言ってしまって、それが失言と言われ責められたこともありました。

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■病気、感染症、災害、ストレス、笑い

病気も、災害も、笑える出来事ではありません。でも、そんなときこそ、笑いが必要です。「パッチ・アダムス」(病院の中のピエロ、臨床道化師を始めた人)のような存在は貴重です。

ただそれは、簡単ではありません。パッチ・アダムスは、医師であり、同時にクラウン(ピエロ)の専門教育も受けています。様々な病気、特に感染症は、偏見差別に苦しんできた歴史もあります。

災害レベルの感染症拡大の中で、私たちはストレスがたまっています。それぞれの人が、何とかしたいと思っています。

でも、乱暴や過度の飲酒やギャンブルのような、不適切なストレス発散では、かえってストレスが高まります。悪ふざけは、本人が喜んでいるだけで、周囲は不快になります。

つい冗談を言ってしまう気持ちはわかります。しかし私たちは悲しみや不安に共感しながら、お洒落なユーモアのセンスで場を和まし、この難関を乗り越えたいと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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