「銀行ポイ活」にメガバンク困惑? 自動送金に制限
三井住友銀行の「Olive」口座では、5月29日から定額自動送金に設定できる件数が制限されたことが注目されています。
その背景には「銀行ポイ活」の盛り上がりに困惑する姿が浮かび上がってきます。いったい何が起きているのか、銀行側に聞いてみました。
銀行ポイ活で「自動送金」急増か
ポイ活にはさまざまな手法が編み出されていますが、その中で「銀行」の存在感が高まっています。
典型的なものとしては、口座に一定金額の振り込みがあった場合、ポイントを付与するというサービスです。
たとえば「T NEOBANK」では、他行から1万円以上の振込があるたびに20ポイントがもらえます(最大で月間25回、500ポイントまで)。
自分で他行から振込をしても1回にカウントされますが、普通なら振込手数料がかかるため損をするだけです。しかし手数料を無料にできるのであれば話は変わってきます。
他行への振込手数料を優遇する特典としては、auじぶん銀行が最大15回、スルガ銀行は最大10回を提供しています。ほかにも、住信SBIネット銀行はT NEOBANKの振込回数にはカウントされませんが、最大20回となっています。
この状況下で始まった三井住友銀行の「Olive」は、定額自動送金は回数制限なく無料、手動での他行あて振込手数料もローンチ特典として回数制限なく無料と、まさに「ポイ活に使ってください」と言わんばかりの特典をぶつけてきたわけです。
特に人気があるのが振込を自動化できる自動送金の機能です。1度設定すれば全自動でポイントを獲得できることから、SNSや動画サイトを通してテクニックが広まったようです。
しかしOliveのサービス開始後は状況が一変。3月10日に新規の申し込みは一時停止となり、その後は「1件まで」に制限された状態で再開されたものの、5月29日には「同一口座あてには2件まで」という形に落ち着きました。
こうした変更に至った経緯について、三井住友銀行は「一時的に申し込みが集中したため、安定したサービス提供の観点から新規申し込みを抑制した。今般、お客様のニーズ、安定したサービス提供を行うため、同一口座あては2件までとした」(広報)と説明しています。
銀行側は「安定したサービス提供のため」という点を特に強調しています。裏返せば、こうした制限をかけざるを得ないほど、サービスが不安定になる事態に陥っていたことを示唆しています。
こうしたポイ活利用について、三井住友銀行としてもある程度は想定して準備をしていたようですが、押し寄せるポイ活勢の熱意はそれを上回るものがあったといえそうです。
定額自動送金の「本来の」用途としては、毎月定額を振り込む仕送りや月謝、家賃などが考えられますが、同一口座あてに2件まで設定できれば、大きな問題にはならないでしょう。
なお、この制限はこれから自動送金を新規に申し込む場合に適用されるもので、「すでに自動送金を設定済みの方は、問題なくご利用いただける」(広報)としています。
手動の振込については、現時点で大きな問題にはなっていないようです。無制限で手数料無料になるローンチ特典(本来は月3回まで無料)については、「終了時期未定」のまま継続中としています。
ちなみに三井住友銀行は「ことら送金」にも対応しています。個人での利用で、送金額が1回あたり10万円以下、送金先の銀行が対応しているといった条件付きで、他行あてにも無料で送金できます。
ところで、OliveのWebサイトには注意喚起の文言として、「極端な利用が認められた場合、ネットバンキングの利用を停止する場合がある」との記述が加わっています。
これが意味するところは、「一部で通常の振り込みとは異なる利用が確認されたため、お客様への注意喚起から掲載をしたもの」(広報)とのこと。普通にポイ活を楽しむ人を想定したものではなく、システムに極端な負荷をかける例外的なケースに対する注意のようです。
ポイント目当ての振込には疑問
そもそも銀行ポイ活では、なぜ自分の口座に他行からの振り込みがあるだけでポイントをもらうことができるのでしょうか。
その仕組みとしては、銀行振込では送金元の銀行から送金先の銀行に手数料が支払われ、振り込まれた側に収入が発生することから、その一部を利用者に還元しているとみられます。
ただ、このスキームが広まりすぎるとポイント目当ての振込が増え、銀行システム全体に無駄な負荷を与える恐れがあるのは気になるところです。
その中で、制限をかける動きも出てきています。大和ネクスト銀行では、本人名義の口座への振込は手数料が無料になりますが、T NEOBANKなどポイ活に人気のある一部の銀行は対象外となっています。
東京スター銀行では、「スターワン口座」からの自動振込において、これまで無料だった他行あて振込手数料を「110円」に引き上げる変更があり、話題になっています。
ポイ活をきっかけに銀行のさまざまなサービスを体験できるのであればまったく問題ないのですが、そうした価値を生まないポイ活については、長続きしないのではないかと考えます。