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共産党による「カジノ反対」論の欺瞞

木曽崇国際カジノ研究所・所長

どうも最近、「カジノ合法化」反対に関して共産党の鼻息が粗いですね。以下、インターネットメディアのthe PAGEからの転載。

カジノ解禁に反対する理由「ギャンブル依存症を増やす」/共産・大門参院議員

http://thepage.jp/detail/20131006-00000001-wordleaf

もしカジノが解禁されたら、多重債務どころの話ではありません。一晩二晩で工場を失う、なんてことも起こりかねない。とてもひどいギャンブル被害が起こる恐れがあります。僕は、多重債務で苦しむ人を実際にたくさん見てきました。だからカジノは解禁するべきではないのです。共産党だから「青少年向けの環境悪化」などの理由で反対なんでしょ、と言われることもありますが、単純な二元論で反対しているわけではありません。[...]

上記のように共産党のカジノ反対派の急先鋒である大門議員が語っていますが、世のカジノを楽しむ者がすべて多重債務に陥るような前提で語っている彼の論は全く正しくなくて、そのうちの95%は賭博をレジャーとして適正に楽しんでいる方々です。必要なのは5%程度の「賭博に参加すべきではない人達」をスクリーニングし、賭博から遠ざけさせ、そして適切な治療行為等を提供することなのであって、共産党の主張は少数の「問題のある人達」の立場に偏りすぎている。私はそう考えています。

そもそも共産党のギャンブルに対する主張は、私からしてみれば全く一貫性がなく、したり顔で「多重債務者が…」などと語っている大門議員の主張自体が非常に欺瞞に満ちているのですよ。

我が国では今年の3月、兵庫県小野市において全国初となる生活保護受給者の「公営賭博およびパチンコでの浪費を防止する条例」が施行されました。大前提として我々が認知すべきなのは、賭博というのは本来的に「無くなってしまっても構わない資金」を予め設定し、その範囲で楽しむべき一種の「贅沢行為」であるということ。生活保護受給者は、給金による宝飾品などの贅沢品の購買が禁じられているわけで、その他の贅沢品の購買と同様に賭博行為やそれに順ずるパチンコでの遊技行為を扱いましょうという小野市の条例は全国でも始めての試み。私も含めて多くのカジノ合法化賛成派はこれら小野市のアクションに対して支持の立場にあります。

ところが、この小野市の条例成立にあたって市議会の中で唯一反対したのが日本共産党なのですよ。以下はそれを報じた産経ニュースからの転載。

「生活保護費でパチンコはダメ」兵庫・小野市で“浪費”禁止条例を可決

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130327/lcl13032722560000-n1.htm

生活保護費や児童扶養手当をパチンコなどのギャンブルで浪費することを禁止し、市民に情報提供を求める兵庫県小野市の「市福祉給付制度適正化条例」案が27日、市議会本会議で原案通りに可決、成立した。病欠1人を除く市議15人のうち反対は共産1人だった。[...]

この日の本会議では、反対の共産議員が「受給者からささやかな楽しみを奪い、弱者への差別を助長する危険性もある」と指摘。賛成の議員は「市民の大多数が賛成している。条例で市民同士のつながりを深めたい」と述べた。

「受給者からささやかな楽しみを奪い、弱者への差別を助長する危険性もある」これが唯一反対をした共産党市議による指摘です。また同じく小野市の同条例に対して、高橋ちづ子衆議院議員が衆議院の厚生労働委員会にて同じ趣旨の発言をしていますね。以下、高橋議員ご自身のブログより転載。

“水際作戦”合法化許されない

http://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-339

日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は29日の厚生労働委員会で、生活保護改悪法案の質疑に立ち、申請者を締め出す“水際作戦”の合法化をやめよと追及しました。[...]

○高橋(千)委員

基本的には保護費を何に使うかというのは自由だということでよろしいですよね。やはりそれは、アルコール依存症ですとか、買い物依存症ですとか、病的に何か支援をやらなければならないということに対して支援をするというのはいろいろな仕組みをつくる必要があると思うんですけれども、何かそれが、本当にわずかな保護費の中でのささやかな楽しみまで全部管理をされるのかということがあってはならないわけです。

しかし、現実にそれが条例になったのが、兵庫県の小野市の条例でありますけれども、ここは私は三つ問題があると思っています。それは、生活保護費だけではなくて、児童扶養手当とかその他福祉制度についての金銭給付についても対象になっている。もう一つは、パチンコ、競輪、競馬その他ということで、何か、範囲がどこまで広がるんだろうということ。そして三つ目が、市民に通報の責務を与えている。こうなるとさすがに、ささやかな楽しみどころか、パチンコをやる人は皆通報しなさいではないですけれども、そういう極端なことになってはならない。

要は、「生活保護費の使用は基本的に自由であるにも関わらず、小野市の条例は受給者のささやかな楽しみを管理しようとしている」という主張なわけですが、これを冒頭の大門議員の主張を比較して眺めると非常にワケが判らない主張となるんですね。共産党は、生保受給者の賭博参加は「ささやかな楽しみであって管理されることがあってはならない」としながら、一方でその他大勢の国民が「自分の稼ぎ」で賭博に参加する行為を「依存症を招くので禁ずべき」と主張している。もはや主張として完全に論理破綻しているのですよ。

しかも、非常に皮肉なのは、高橋議員が厚生労働大臣に向って主張している下記部分は「生活保護費」を「国民が自ら稼いだお金」に置き換えれば、我々カジノ合法化推進派の主張している内容とほぼ一致します。

(再掲)基本的には保護費を何に使うかというのは自由だということでよろしいですよね。やはりそれは、アルコール依存症ですとか、買い物依存症ですとか、病的に何か支援をやらなければならないということに対して支援をするというのはいろいろな仕組みをつくる必要があると思うんですけれども、何かそれが、本当にわずかな保護費の中でのささやかな楽しみまで全部管理をされるのかということがあってはならないわけです。

私達、カジノ合法化推進派は、国民が自ら稼いだお金を何に使うかというのは基本的に自由であるべきと考えています(勿論、違法賭博はダメだが)。そこには当然、アルコール依存症や買い物依存症への対応策と同様に、ギャンブル依存症に対する病的な支援策は必要なのですが、それらの一部の問題行動を理由にして国民が自ら稼いだお金の中でのささやかな楽しみまでを全部管理されることがあってはならない。むしろ、そこには経済効果が生まれるワケですから、それは逆に上手く利用して行くべきと主張しているワケです。

一方、小野市条例に関しては、生活困窮者に対して給付される大切な生活保護費を賭博やパチンコで浪費する行為というのは間違いなく問題行動なのであって、もはやその是非に関して適正判断が付かなくなっている一部の方々は限りなく「病的なリスクが高い」状態にあります。そこに何らかの対策をしようとする同条例は趣旨として非常に正しいワケで、我々多くのカジノ合法化賛成派が賛同しているのはそのためです。

但し、小野市の条例は実効性という点ではあまり意味がないものになっているので、それらに関してはカジノ合法化と合わせて国全体でより実効性のある依存症対策を施行していくようにしなければならない。これが我々カジノ合法化推進派が主張していることであって、我々の立場からすれば生活保護受給者の賭博行為に関しては「基本的に自由であって、ささやかな楽しみくらい許容すべき」としながら、一方でその他多くの国民が自らの稼ぎで参加する賭博行為に関しては「依存症を招くので禁ずるべき」とする共産党の主張は全くもってナンセンスであるといえます。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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