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コロナ禍で始まった5つのすごいテイクアウト&デリバリーの秘密

東龍グルメジャーナリスト
ストリングス・パフェ(ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)/ホテル提供

テイクアウトやデリバリーが拡大

「Go To トラベル(Travel)」や「Go To イート(Eat)」も始まり、店内飲食が復調すればと期待しています。

しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況では、テイクアウトやデリバリーの需要はまだ高く、ホテルや飲食店は力を入れていかなければなりません。

今では、ビジネスホテルからラグジュアリーホテルまで、居酒屋からミシュランガイドに掲載されるレストランまで、テイクアウトやデリバリーが至るところで行われています。

コロナ禍から様々なものが始まりましたが、特筆するベきものを紹介していきましょう。

クリスマス アフタヌーンティー(シャングリ・ラ ホテル東京)

クリスマス アフタヌーンティー(シャングリ・ラ ホテル東京)/ホテル提供
クリスマス アフタヌーンティー(シャングリ・ラ ホテル東京)/ホテル提供

アフタヌーンティーはホテルの醍醐味のひとつ。お代わり自由な紅茶とともに、ホテルメイドのスコーンやスイーツ、サンドウィッチなどのセイボリーを、優雅なラウンジで楽しめます。

そんなホテルのアフタヌーンティーをテイクアウトして自宅で体験できるのが、シャングリ・ラ ホテル東京の「クリスマス アフタヌーンティー」(2名用、19,440円、税込)。2020年12月1日から25日にかけて販売されており、受け取り3日前までの要予約となっています。

テイクアウト専用のボックスは、円錐状になっており、見た目もスタイリッシュ。トナカイや雪だるまを模したスイーツ、赤や緑をバランスよく配した色彩でクリスマス感が満載です。

どうしてアフタヌーンティーのテイクアウトを始めたのでしょうか。

広報の津曲修二氏は「自宅で過ごす時間が増える中、カレーラクサやハンバーガーなどのテイクアウトを開始すると好評であった。『ザ・ロビーラウンジ』で人気のアフタヌーンティーもご自宅で楽しんでいただけないかと考えた」といいます。

アフタヌーンティーのティースタンドをそのまま持ち帰るような形状は非常にユニークでしょう。こだわりのケースは特注なので、サンプルを取り寄せて強度を確認するなどし、クリスマスシーズンにちょうど提供できる運びとなりました。

「大切な人ととはもちろん、ホームパーティーなどにお持ちいただければサプライズ感もあり、より一層華やかな時間が過ごせるのでは」といいます。

テイクアウトのアフタヌーンティーは同期間中に「ザ・ロビーラウンジ」で提供されるものとほぼ同じ内容です。ただ、テイクアウトでは、ヴェリーヌ(グラスデザート)を一口サイズのケーキにアレンジしたり、持ち帰る時にスイーツやセイボリーが滑られないように小さなトレイに載せて固定したりするなど、こまやかにアレンジされています。

春先にもテイクアウトのアフタヌーンティーを考えているということなので、特注のティースタンドにどのようなスイーツやセイボリーが並べられるのか、楽しみです。

ストリングス・パフェ(ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)

ストリングス・パフェ(ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)/ホテル提供
ストリングス・パフェ(ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)/ホテル提供

幾重にも層を成すパフェは、ちょっとでもバランスを失うと崩れてしまうもの。ホテルメイドの豪華なパフェをテイクアウトできるとしたら、多くの方が驚くかもしれません。

ストリングスホテル東京インターコンチネンタルでは、「クリスマス・パフェ TO GO」として、「フレーズ」「ショコラ」「サパン」という3種のフレーバーを用意。好きなフレーバーを2つ選べる「デュオ・パフェ TO GO」(3,300円、税別)と、全てが入った「トリオ・パフェ TO GO」(4,500円、税別)をテイクアウトで販売しています。予約は既に始まっており、受け取り期間は2020年12月4日から25日。

パフェのテイクアウトなど聞いたことがありません。マーケティングコミュニケーションズ部長の徳田依子氏は次のように説明します。

「『ストリングス・パフェ』は2019年夏から提供している人気商品で、約2か月ごとにフレーバーが新しくなる。多くのファンがいらっしゃるので、ずっとテイクアウト向け商品を検討していた。そこにホテル初のクリスマステイクアウトの案が持ち上がり、デビューにちょうど相応しいタイミングだと考えた」

特にこだわったところはどこでしょうか。

「甘さや軽さといった味のバランス、ペアリングする素材と食感にこだわった。テイクアウト商品なので、店内で召し上がる『ストリングス・パフェ』と違い、アイスクリームが含まれていないのもチャレンジであった」

モミの木の蜂蜜「ミエル・ド・サパン」を使ったフレーバーを加えるなど、クリスマスらしいラインナップにも仕上がっています。

徳田氏が「ホテルショップがないので試行錯誤しているが、新しい形に挑戦していくことが大切だと感じている」と述べるように、通年メニューとして前向きに検討しているということです。

さらには、カフェ&バー「リュトモス」のアフタヌーンティーが人気なので、11月24日からは「ストリングス・アフタヌーンティー TO GO」と題して、テイクアウトのアフタヌーンティーも販売されるので、こちらからも目が離せません。

スイーツデリバリー(ホテルニューオータニ)

スイーツデリバリー(ホテルニューオータニ)/ホテル提供
スイーツデリバリー(ホテルニューオータニ)/ホテル提供

パティスリーで販売されているスイーツは、ホテルの定番テイクアウト商品のひとつですが、テイクアウトではなく、デリバリーで配送してもらえるサービスが誕生しました。

ホテルニューオータニは日本最大手のタクシー会社である日本交通株式会社と提携して「お家でルームサービス」を開始し、第1弾となる「スイーツデリバリー」が2020年10月1日から始まったのです。

「パティスリーSATSUKI」の「スーパーモンブラン」(3,300円、税別)や「新エクストラスーパーメロンショートケーキ」(3,800円、税別)などを注文でき、商品の代金にデリバリー料金(地域によって異なる。2,000円~、税別)を加えれば、事前決済で自宅まで届けてもらえます。

このような画期的なサービスはどのようにして誕生したのでしょうか。

広報を務める小布施萌氏は「みなさまのライフスタイルが多様化したので、自宅にいながらもホテルメニューをお届けしたいと考えた」といいます。

コロナ禍においても「パティスリーSATSUKI」のスイーツは特に需要が高かったので、第1弾として白羽の矢が立ったということです。そして、日本交通とタクシーデリバリーについて話し合いを重ね、テスト走行等を実施し、安全性を確かめた上でサービス開始に至ったといいます。

特に苦労したところは、どこでしょうか。

小布施氏は「品質を保持したまま届けること、より多くの方に利用してもらえるようなデリバリー料金を設定することに腐心した」と答えます。

「スイーツデリバリー」は都内の多くの地域でデリバリー料金が定額になっているので、利用しやすくなっているのではないでしょうか。

今後はレストランの料理や花束付きのパーティーセットなどをタクシーで配送することも考えているということなので、ホテルのタクシーデリバリーはますます身近になりそうです。

BAKERY BOX(パレスホテル東京)

BAKERY BOX(パレスホテル東京)/ホテル提供
BAKERY BOX(パレスホテル東京)/ホテル提供

ホテルブレッドは、ホテルで提供されるような、味わいがリッチで高級な食パンを指します。このような言葉があるのも、ホテルのパンがそれだけ人々に愛されている証左。

そのホテルのパンをオンラインショップで購入し、配送してくれるホテルがあります。

パレスホテル東京は2020年6月22日から「BAKERY BOX」(2種3,600円、7種4,000円、10種6,000円、税別、送料込)を販売しており、焼きたての状態で冷凍し、自宅まで配送しているのです。

バゲットやパン ド カンパーニュといった定番のテーブルブレッドから、パン オ レやパン オ ショコラ、パン ド ミ プルミエといったリッチなパンまでと、バラエティに富んでいるのも嬉しいところ。

ホテルショップのアイテムで、ホテルメイドのパンは定番中の定番ですが、冷凍パンの配送となれば、なかなか見かけることはありません。

ベーカリーシェフの星敏幸氏は「BAKERY BOX」を販売した理由について「ご家庭や遠方にお住いの方にパンをお届けし、召し上がっていただきたかった」と説明。

どのパンも自然解凍させれば食べられます。好みに合わせてオーブンで焼いたり、バターやオリーブオイルと合わせたりと、好きな楽しみ方を選べるのも魅力。

星氏は「焼いていただくことも考えて、家庭用オーブンに収まるサイズに限定するなど、パンの選定に苦労した。焼きたてに近い状態にこだわったので、焼成時間、冷凍状況、解凍方法について何度も検証した。毎日試作を繰り返していき、みなさまに満足いただけるものに仕上がったのでは」と自信をもちます。

正月やクリスマスといったイベントや様々なシーンに向けた「BAKERY BOX」も考えているということなので、その時だけの限定パンも味わえそうです。

「おいしい時間」ごちそうコース(Ata)

「おいしい時間」ごちそうコース(Ata)/店舗提供
「おいしい時間」ごちそうコース(Ata)/店舗提供

街場のレストランでも、新しいスタイルのデリバリーが始められています。

ミシュランガイドでビブグルマンとして掲載され、魚介類に定評のある「Ata」が、2020年8月5日から「『おいしい時間』ごちそうコース」(2名~、1人5,000円)を提供しているのです。

シグネチャーとなっている「Ata特製ブイヤベース」からお酒に合いそうな「自家製ロースハムと豚肉のパテ・ド・カンパーニュの盛り合わせ」、贅沢な「オマールビスクの海老グラタン」など、コンセプト通り「おうちフレンチ」を存分に堪能できます。

鮮やかなオレンジ色のテーブルクロスや選りすぐりのカトラリーも添えられ、上質なテーブルセットをつくれるのも、他のデリバリーとは違うところ。容器はそれぞれの料理にぴったりなものが選ばれており、形状や色合いも豊かです。盛り付けたり、ソースをかけたりする作業も完了しているので、すぐに食べられます。

本格的なフレンチで、見た目も非常にスタイリッシュ。自宅にいながらにして上質なファインダイニングにいるかのような体験ができる上に手軽です。

オーナーシェフの掛川哲司氏は「新型コロナウイルスの感染が拡大している中で、テイクアウトやデリバリーを色々と食べてみた。しかし、状態がよくなかったり、おいしくなかったりと納得いくようなものに出会えなかった」と、デリバリーを始めた理由を話します。

こだわりは、届く時間から逆算して作り始めているので、できたてをおいしく食べられること。

「デリバリーとケータリングの間という位置付けで、大切な人にも贈れるギフト。自宅のデリバリー体験を革新していきたい」と力強く述べます。

普段「Ata」に子供は入れませんが、これなら小さい子供も含めて、家族みんなで本格フレンチを味わうことができるでしょう。

クリスマス用になど内容を新しくしていく予定なので、新しいデリバリー体験を心待ちにしたいです。

これまでのイメージを覆す着眼点

ここまで新しいテイクアウトやデリバリーについて紹介してきましたが、このどれにも共通点があります。

それは、これまでのイメージを覆す着眼点であり、意外性です。

店内で食べるものと思い込んでいたアフタヌーンティーやパフェを美しくテイクアウトできたり、ホテルショップで焼きたてを購入するものと認識されていたホテルのパンをよい状態で冷凍配送したりと、発想の転換があります。

ケーキは壊れやすいので本来であればデリバリーに向かないものですが、運転技術の高いタクシーと連携することによって克服。高級スイーツがデリバリーで安全に自宅まで運ばれて来ることなど、考えたこともありませんでした。

街場のレストランでもテイクアウトやデリバリーが行われていますが、おせち料理のように豪華すぎたり、コンビニ弁当のようにカジュアルであったりと、両極端のイメージがあります。そういった状況で、デリバリーとケータリングの間という、本格的な料理と手軽さを両立させたものが現れたことは注目に値するでしょう。

テイクアウトやデリバリーのさらなる広がり

新型コロナウイルスの感染がいつ収まるのか、全く先が見えません。しかし、コロナ禍の中にあっても、人々による美食への追求、おいしいものを食べたいという欲求がなくなることはないでしょう。

1990年代後半のパリで、高級な美食であるオートキュイジーヌの隆盛期の影に隠れて、手頃な価格で美食を堪能できるビストロノミーもしくはネオビストロが台頭してきたように、時代のうねりに翻弄されながらも、おいしいものは形を変えながらも常に最適な方法で提供されてきました。

コロナ禍にあっても同様で、テイクアウトやデリバリーという形で美食がより広がっていくのではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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