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アマゾンのPrime、値上げしても消費者はついてくる?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 アマゾンは先ごろ、有料会員プログラム「Prime」の米国年会費を119ドルへと、従来から約2割引き上げた。

2度目の値上げ、初の100ドル超え

 値上げが実施されたのは、5月11日。既存会員は、6月16日以降の更新が値上げの対象になる。

 同社はこれに先立ち、米国におけるPrimeの月間プラン料金を、9.99ドルか12.99ドルに引き上げていた。今回の年間プラン料金は、この新たな月間プラン料金を1年払い続けるより、37ドル安くなる。

 しかし、海外メディアの報道によると、今回の値上げ発表を受けて、ツイッターなどソーシャルメディアでは、反発の声が広がっている。「とんでもないことだ」「ばかにしている」「もう更新はしない」といった文言が綴られている。

 アマゾンは顧客囲い込みの戦略として、2005年2月に米国でPrimeを開始した。当初は、年額79ドルだったが、9年後の2014年4月に、99ドルに引き上げた。

 つまり、年会費の引き上げは、これで2回目。いずれも従来から20ドルの値上げだ。唯一異なるのは、今回初めて100ドルの大台を超えたこと。これによる心理的な影響から、消費者のPrime離れが起きるではないかといった声も聞かれるという。

「Primeは年間400ドル分の価値」

 ただ、この値上げによる影響は小さいと伝えるメディアもある。米フォーブスによると、Primeはすでに人々の生活に欠かせないものになっている。

 中には、不満を漏らし、解約する人もいるだろうが、圧倒的多数の人々は、20ドルの値上げ分を支払うことをいとわないだろうと、同誌は伝えている。

 一方、米シーネットは、「Primeには年間で400ドル分の価値がある」とする、アナリストの見解を伝えている。

 米国のPrimeには、追加料金なしで商品が2日後に届く「Two-Day Shipping」や、1回の買い物金額が35ドル以上になれば、同じく追加料金なしで商品が即日届く「Same-Day Delivery」といった特典がある。

 Primeにはこのほか、有料や無料の即時配達サービス「Prime Now」、生鮮食料品を配達する「AmazonFresh」、映画・テレビ番組が見放題になるストリーミングビデオサービス「Prime Video」、聴き放題の音楽ストリーミングサービス「Prime Music」、電子書籍を無料でレンタルできる「Prime Reading」、写真を無制限にクラウドストレージに保存できる「Prime Photos」などもある。

 アマゾンは会員向けの大型セール「Prime Day」を年1回実施している。米国では、買収した高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)」の商品を即時配達するサービスも始めた。先ごろは、購入商品の受け取り場所に、Prime会員の自家用車を指定できるサービスを始めると発表した。

事業の安定化で、Primeの価値向上か

 アマゾンは、年会費の値上げで、高騰する配送コストを補うが、これによりPrimeの事業はこれまで以上に安定し、アマゾンは新たな特典を付けられるようになると、シーネットの記事は伝えている。

 フォーブスの別の記事によると、こうしてアマゾンは顧客満足度を向上させることができるのだという。

 そして、アマゾンの顧客はますます、同社で商品を買うようになる。これに伴い、アマゾンに出店するブランドが増え、Primeの価値はますます高まっていくと同誌は伝えている。

(このコラムは「JBpress」2018年5月2日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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