激闘の井岡一翔が目指すビッグマッチ「統一戦や名の知れている選手とやりたい」
大晦日に大田区総合体育館で、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチが行われ、4階級王者の井岡一翔(30=Reason大貴)が、同級1位ジェイビエール・シントロン(24=プエルトリコ)と対戦した。
試合の展開
序盤は、オリンピック2度の出場経験を持つ技巧派サウスポーのシントロンを相手に、井岡が大苦戦した。
シントロンが長いリーチからのキレのあるリードパンチを放ち、井岡はなかなか入り込めない。
井岡は様子を見ながらも前にプレッシャーを掛けていくが、シントロンが巧みにサイドに動くので捉えられない。
井岡が止まったところを見計らって、シントロンがパンチを放ちペースを握られてしまう。
中盤からは、顔だと当たらないため、ボディ狙いに切り替えてパンチをボディに集めていく。
すると、そのボディが効果的に決まり、徐々にシントロンの勢いが落ちていった。
井岡は「序盤に結構もらい出した時に、もらってもいくしかないと覚悟を決めた」と話したように、どんどん前に出てプレッシャーを強めていった。
それでも、シントロンは自分の間合いになると、見栄えの良いストレートを放ち、一進一退の攻防が続いていく。
後半になると、井岡は更に圧力を強めパンチを上下に打ち分けた。
シントロンもボディが効いてきたのか、苦しい表情を見せクリンチが続いた。
井岡も相手をコーナーに詰めていき、パンチをまとめて見せ場を作る。最終ラウンドでは両者パンチを交錯させ、打ち合って試合終了。
試合は、3-0(116-112が2者、115-113が1者)の判定で、井岡が初防衛に成功した。
アグレッシブな井岡
今回の試合では、井岡が覚悟を見せた。テクニックがある挑戦者を相手に、自分のボクシングを貫いて勝利を得た。
ミニマム級から階級を上げて戦ってきた井岡だが、階級を上げるにつれて、そのスタイルも進化してきている。
フライ級時代は、166cmと軽量級では長身の部類に入るため、長いリーチを活かしたヒットアンドアウェイの戦いで勝利を積み重ねてきた。
しかし、階級が上がりスーパーフライ級になると、相手の体格が上回り、身長やリーチ差が変わってくる。そのため戦い方も違ってくる。
この階級に上げてからは、積極的に前に出て、アグレッシブに戦うようになった。
今回の試合では、相手のリーチに阻まれ序盤は自分のペースに持ち込めなかったが、中盤から後半に掛けて積極的な攻勢でペースを引き戻した。
戦ってみての相手の印象は「想像以上にスピードも速く距離も長かったし、強かった」と話している。
そのため、パンチを受けながらも捨て身の覚悟で前に出た。
その言葉通り、試合後の会見に現れた井岡の顔は傷とアザだらけで激闘を物語っていた。
井岡も「階級も上げて対戦相手の質も上がり、勝利の代償としてしかたない」と話した。
中盤以降は井岡のプレッシャーが効果的で、ペースを握った。
試合に向けてのプランは、「4R最初に取られても残り全部取り返せばいい。相手は足を使うから、プレッシャーを掛けて追い込んで山場を作れた。準備してきた戦い方ができた」と作戦通りに戦えたようだ。
井岡は「チャンピオンとして、絶対ベルトを渡したくない」と言う強い思いがあったようで、今回の試合では井岡の執念を感じた。
今後の井岡一翔
試合後の一夜明け会見では、ホッとした顔を見せた。
試合を振り返って「想像以上に厳しい試合になった。相手の技術も含めて強かった」その言葉通り、井岡の顔はサングラスの上からでも腫れているのがわかった。
井岡も「鏡を見なくてもわかるくらい顔が腫れているのがわかる」と、過去これまでに感じたことがないくらいのダメージを負ったようだ。
また「この先ボクシング人生も長くない。終わりに差し掛かっている。だからこそ出し切って、やりきりたい、そういう戦い方をしたい」と熱く語っていた。
だからこそ、今回の試合のようなリスクを取った戦い方をして、見事な試合運びで勝利を掴み取った。
今後に向けては、「更なる高みを目指して、見たい景色を追い求めていきたい。緊張感がある試合、統一戦や名の知れている選手とやりたい」と話した。
この階級には、以下の王者が君臨している。
WBC ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)
WBA カリッド・ヤファイ(イギリス)
IBF ヘルウィン・アンカハス(フィリピン)
その他にも復帰を飾った、元パウンド・フォー・パウンド(全階級を通じてNO1)のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)や、一昨年の大晦日で井岡に勝利した、ドニー・ニエテス(フィリピン)など強豪が名を連ねる。
井岡が求める「見たい景色」とは、ベルトや防衛回数ではなく、強豪とのビッグマッチだ。
今後もアメリカを拠点として、そこを目指していく。井岡一翔の名前を世界に知らしめてほしい。