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元棋王・佐藤康光九段(52)棋王戦ベスト4に進出! 豪腕で谷合廣紀四段(27)のダイヤモンド美濃粉砕

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月12日。東京・将棋会館において第47期棋王戦・挑戦者決定トーナメント4回戦▲谷合廣紀四段(27歳)-△佐藤康光九段(52歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は18時13分に終局。結果は106手で佐藤九段の勝ちとなりました。

 佐藤九段はこれで今期ベスト4進出一番乗り。久々のタイトル戦番勝負出場に向け、また一歩前進しました。

 佐藤九段は次戦、郷田真隆九段-斎藤慎太郎八段戦の勝者と対戦します。

佐藤九段、ダイヤモンド美濃を攻略

 佐藤九段はタイトル通算13期を誇る名棋士。棋王戦では2006年度、07年度の五番勝負を制して、棋王位2期の実績があります。

 佐藤九段は10月1日に誕生日を迎え、52歳となりました。日本将棋連盟会長という重責を担い、日々激務に追われる一方で、現役プレイヤーとしても第一線で活躍を続けています。今年度は王座戦挑決にまで勝ち進みました。

 直近ではA級順位戦で山崎隆之八段に勝っています。

 今期棋王戦ベスト8のうち7人は、順位戦ではA級かB級1組に所属しています。また7人ともタイトル経験者で、渡辺明棋王と番勝負を戦った経験があります。各棋戦でコンスタントに上位に進出する、おなじみのメンバーと言っていいでしょう。

 その中で谷合四段はただ一人C級2組所属でタイトル獲得歴なし。最後に残った予選突破組です。

 谷合四段は昨年2020年4月に四段昇段。東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士後期課程在籍中の棋士として話題となりました。

 谷合四段は今期棋王戦で次々と強豪を連破して、ここまで勝ち上がってきました。

 棋王戦ではベスト4以上に進むと、たとえ敗れても敗者復活戦に進むことができます。この独自のシステムが、数々のドラマを生んできました。

 振り駒の結果、先手は谷合四段。まずは力戦派・佐藤九段の作戦が注目されましたが、2手目に飛車先を突き、居飛車で臨むことを明示しました。対して谷合四段は得意の四間飛車です。

 佐藤九段は地下壕深くに潜る2一玉型で金銀4枚を密集させます。対して谷合四段は金銀4枚が美しく連結するダイヤモンド美濃に組みました。

 中盤、戦いが始まると、佐藤九段の飛車は中段に飛び出し、縦横に大きく利いてきました。一方、谷合四段の飛車は自陣に抑え込まれます。その飛車のはたらきの分、佐藤九段が優位に立ったようです。

 佐藤九段は一時的に銀香損となりましたが、谷合陣のダイヤモンド美濃を一気に攻略。中段の飛車を主軸に次々とハードパンチを浴びせかけ、谷合四段に粘る余地を与えません。

 谷合四段の飛車は最後まで抑え込まれたままだったのに対し、佐藤九段の飛車は縦横の活躍。最後はその飛車が谷合玉を詰ませる形となりました。

 谷合四段の快進撃は残念ながらここでストップとなりました。

 佐藤九段はベスト4進出。今年度成績はこれで13勝5敗(勝率0.722)。直近では6連勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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