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【築地移転問題】「豊洲市場棟床下の空洞」謎の水たまりの正体は

池上正樹心と街を追うジャーナリスト
水産卸売り場棟の地下空洞の水たまりの正体は…日本共産党都議団提供

「間違った情報を公開してきたことは、都政への信頼回復に逆行する。全都庁の職員に粛正していきたい」

小池百合子都知事は10日、緊急会見を開いて、築地市場(東京都中央区)の移転先である豊洲市場(江東区)の各市場棟の床下で、土壌汚染対策のはずの高さ4・5メートルの盛り土が行われておらず、空洞になっていたことを明らかにした。

都民との約束破って盛り土せず

都はこれまで、汚染した土壌を入れ替えたうえ、すべての敷地で高さ4・5メートルの盛り土をすると説明してきた。

都の中央卸売市場が2009年2月に発行した『疑問解消BOOK』の中でも、専門家会議(座長・平田建正和歌山大学システム工学部教授=現在、放送大学和歌山学習センター所長)が08年に提言した土壌汚染対策に基づいて、市場建物の下を含む豊洲用地で、

<ガス工場操業時の地面の下2mを掘り、きれいな土と入れ替えます>

<その上に厚さ2・5mのきれいな土壌を盛ります>

といった対策を行うことで、

<食の安全・安心を十分確保していくことができます>

などとうたっていた。

しかし、その建物の下の盛り土が行われず、空洞になっていたということは、都が都民や市場の業者との約束を破ったばかりか、そもそもの土壌汚染対策の大前提が崩れたことになる。

小池知事は「間違った情報だったので、訂正させて頂きたい」と謝罪したうえで、こう言及した。

「建物の下の土壌の安全性に問題があるのではないか。消費者や現場で働く方々が安心できるのか、改めて確認したい」

858億円かけて、なぜ空洞?

また、土壌汚染対策を提言した専門家会議が、こうした建物の地下の安全性を確認する前に解散してしまったのは行政的な問題があると指摘している。

「専門家会議の平田座長も、全然違う前提でフタをしている状況については、ご存じないのではないか?」

そう疑問を投げかけた小池知事は、土壌汚染対策に858億円も投じながら、なぜ盛り土をせずに建物の下が空洞になっていたのか、都の担当職員が情報を正しく伝えていたのかについても、今後、専門家会議の平田座長らに対策の大前提が守られなかったことへの確認を求めるとともに、新しく土壌や建築などの専門家でつくるプロジェクトチーム(PT=座長・小島敏郎青山学院大学国際政治経済学部教授)をスタートさせて、検証していく考えを明らかにした。

さらに、床下に土がぎっしり詰まっている状態に比べて空洞の場合、建物の耐震上の問題はどうなのか、費用に含まれているはずの盛り土代がどこかに消えているのかどうかについても、小島PTのほうで調査していく方針だ。

これに先立って、日本共産党都議会議員団は、7日に豊洲の施設を視察。水産卸売り場棟の地下に降りてドアを開けたところ、高さ5メートルほどの地下空間になっていて、底面には深さ1センチ余りの地下水とみられる水もたまっていたという。

大山とも子・日本共産党都議団幹事長は、こう説明する。

「水たまりがどのくらいの深さなのか、何も道具がなかったので指を入れてみたんです。すると、人差し指の爪くらいの深さでした。物差しで測ると1・2センチくらい。どうして水がたまったのか、都の随行職員に聞くと、地下水管理システムはまだ稼働してないので、地下水だろうとのことでした。ところが、本庁に聞くと、地下水システムはすでに稼働していると言われました。それなのに水たまりがあるということは、もっと問題です」

計算をすべてやり直さなければいけない

床下の空間に地下水が沁み出しているのだとすれば、地下水の管理ができていない可能性もある。

当時の専門家会議座長で、土壌汚染の専門家でもある平田・放送大学和歌山学習センター所長は、筆者の取材に応じ、こう語る。

「まずは、なぜこういうことになったのか、説明を求めたい。次に、盛り土の前提が消えているので、改めて、どのくらい有害物質のガスが上がりやすくなるのか、空洞の中がどのようなガス濃度になっていくのか、計算をすべてやり直さなければいけない」

地下空間の底面にたまる謎の水については、こう指摘する。

「外の地下水位が底面よりも高いか低いかで、地下水なのか雨水が入ったのかを判断しなければいけない。底面よりも高いのであれば、地下水が中に入ってきた可能性もある。また、ベンゼンやシアンなどの有害物質だけでなく、一般的水質も調べる必要がある。ただ、ベンゼンなどは揮発して飛んでるかもしれない」

長年、豊洲市場用地の土壌汚染問題を調べている日本環境学会の畑昭郎元会長は、「盛り土が入っていれば、ベンゼンなどのガスは上に行きにくくなるのに、空洞にした理由がよくわからない。また、建物は雨漏りでもしない限り雨水を排除する一方、横の壁が分厚く、床が薄い捨コンだと水を通すので、下から地下水が湧き出していると見たほうがいい」と話す。

他にも、都の発注した指定調査機関が、専門家会議の概況調査でベンゼンが検出された300区画以上にわたって帯水層の底面調査を行わず、汚染区域の指定から外されていた問題も最近、明らかになっている。

専門家会議の平田座長は、300カ所以上の未調査区域があることについて「現段階ではノーコメント」としながら、「適正に調査が行われたのかどうか」を確認したいという。

小池知事は、10日の会見の中で「あのまま移転を認めていたら、大変な問題になっていた。予断を持たずに、いろんなケースを考えていきたい」として、移転を止める可能性についても否定しなかった。

心と街を追うジャーナリスト

通信社などの勤務を経てジャーナリスト。約30年前にわたって「ひきこもり」関係の取材を続けている。兄弟姉妹オンライン支部長。「ひきこもりフューチャーセッション庵-IORI-」設立メンバー。岐阜市ひきこもり支援連携会議座長、江戸川区ひきこもりサポート協議会副座長、港区ひきこもり支援調整会議委員、厚労省ひきこもり広報事業企画検討委員会委員等。著書『ルポ「8050問題」』『ルポひきこもり未満』『ふたたび、ここから~東日本大震災・石巻の人たちの50日間』等多数。『ひきこもり先生』や『こもりびと』などのNHKドラマの監修も務める。テレビやラジオにも多数出演。全国各地の行政機関などで講演

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