「ひきこもり」状態の人は「10世帯に1世帯」仙台市の全戸実態調査で
仕事や学校などに行かず、家族以外の人との交流をほとんどしない「ひきこもり」状態の人がいる世帯は、回答者の「10世帯に1世帯」に上ったことが仙台市の全戸実態調査によってわかった。
「ひきこもり」に関する自治体の全戸調査は、全国でもまだあまり例がない。2011年に秋田県藤里町社会福祉協議会が行った全世帯訪問調査では、「11世帯に1世帯」の割合で「ひきこもり状態」の該当者がいた。また、2020年に新潟県社協が行った津南(つなん)町民の全戸実態調査によると、仙台市の「ひきこもり」と同様の定義の「社会的孤立者」は「13世帯に1世帯」だったことが明らかになっている。
東京都江戸川区も2022年に「ひきこもり」状態の人の実数調査を公表しているものの、対象者は給与所得がなく行政サービスも受けていない約18万世帯に絞られたものだった。
ひきこもり期間「10年以上」が27.1%
同市がこのほど公表したのは、「市民の生活状況に関する調査―ひきこもり支援の充実に向けてー結果報告書」。2023年8月から2024年3月にかけて、市内の15歳から64歳が居住する408759世帯を対象に調査用紙をポスティングで配布し、返信用はがきとインターネットで回答を求めた。
回答したのは、対象者の8.3%にあたる33959世帯。回答率が低かったことによる結果への影響を分析する必要はあるものの、回答した世帯の1割に当たる3325世帯で、ひきこもる本人自身であるかひきこもる家族がいると答え、人数も3956人に上る。ひきこもり状態の該当者が「6人以上」と回答した世帯も21人いた。
とくに興味深いのは、該当者の47.8%にあたる1590人が「本人」だと回答。自ら積極的に回答している様子がうかがえる。
性別は、男性48.4%、女性47.5%、未回答4.1%。女性の割合が増えているのは最近の傾向といえる。
現在の状況になってからの期間も、「10年以上」が27.1%に上り、該当者の4分の1を超えた。
年齢は、50代が最も多く18.1%。次に40代が17.2%と続いていて、高齢化は確実に進み、「8050問題」が切実になってきている。
「ひきこもり本人」だけの回答を見ると、日常生活の不安や悩みに思っていることは、76,5%にあたる1217人が「収入・生活資金」。次に、63.8%の1015人が「自分や家族の健康」を挙げた。
若い女性や主婦の中にも増えている
これから必要なことについては、「自分に合った仕事を探すこと」が最も多く、42.1%の670人。人を社会に適応させるのではなく、社会の側が人に合わせようという時代の流れを感じさせる。次に多いのが「健康づくりや体調管理に取り組むこと」で41.9%の666人。ひきこもっていても生きていくために、日常の健康管理は必要不可欠であってそれぞれ大事にしている状況が伺える。
そして、日常生活の不安や悩みを誰に相談しているかと尋ねると、相談相手は「家族」という回答が半数近い48.6%(772人)と突出した一方で、「相談する人いない」人も4割を超えた。このように多くの本人たちにとっては、家族が唯一のつながりになっているという結果からも、家庭内で信頼関係を築き、安心して弱音なども話せるよう、改めて家族支援の大切さを示したデータだ。
専門機関や医療機関に相談したことがあるかどうかについては、やはり「相談したことはない」は半数近い49.5%(787人)を占めた。相談したことがことがあるものの途絶してしまったケースも含めると、現在相談できていない人は全体の7割。どこに相談していいのかわからない、過去に相談したがどこにもつながらなかった、責められるので相談したくない、そもそも情報が届いていないーといった状況が推測できる。
調査を担当した同市障害者支援課によると、これまで見過ごされてきた若い女性や主婦の中にも自分が「ひきこもり」だと認識している人たちが増えてきていて、生きていく上で不全感を持っていることや、ユニバーサルな状態、または問題の捉え直しも求められていることを感じたという。
市では今後、調査項目を決めた有識者会議で本人と家族の回答に分けるなどして、さらにデータの分析を行い、施策にも反映させていきたいとしている。