ベンゼマとヴィニシウスが爆発した理由。エンバペとハーランドのレアル移籍の憶測が流れる陰で。
タイトル獲得に向けて、着実に前進している。
レアル・マドリーはチャンピオンズリーグ準々決勝でチェルシーと対戦。アウェーのファーストレグを3−1で制して、ベスト4入りに近づいている。
リーガエスパニョーラでは、第31節でヘタフェを破り、首位をキープ。2位セビージャに勝ち点12差をつけており、2シーズンぶりのリーガ制覇が現実味を帯びてきている。
■アンチェロッティのプラン
今季、マドリーはカルロ・アンチェロッティ監督の下で再発進した。ジネディーヌ・ジダン前監督の昨季限りでの退任を受け、アンチェロッティ監督の就任が決定。2014−15シーズン以来、およそ7年ぶりの復帰だった。
「ベンゼマは1シーズンに50ゴールを決めなければいけない。30ゴールではダメだ。ヴィニシウスもゴール数を増やす必要がある」
アンチェロッティ監督は就任時にそのように語った。カリム・ベンゼマとヴィニシウス・ジュニオール。この2人の得点力アップが不可欠だと説いていた。
ベンゼマは今季、37試合37得点13アシストを記録している。1シーズンに50得点というのも射程圏内で、2009年夏にマドリーに加入して以降、最高の数字を残す可能性がある。
ビッグクラブの“9番”としては物足りない。ベンゼマは、マドリーに移籍してから、度々そういった批判を受けてきた。その背景には、クリスティアーノ・ロナウドの存在があった。C・ロナウドがマドリーでプレーしていた期間(2009年―2018年)で、ベンゼマは彼のサポート役に回っていた。
現に、C・ロナウドが去ってから、ベンゼマの得点数は増えている。2018−19シーズン(30得点)、19−20シーズン(27得点)、20−21シーズン(30得点)、今シーズン(37得点)とゴールを量産している。これはベンゼマが変わったわけではない。ベンゼマの本来の姿が、浮かび上がってきた結果だ。
■ベンゼマの相棒
一方、マドリーは、次の課題を抱えることになった。ベンゼマのパートナー探しだ。
今季のマドリーで、ベンゼマに次いで得点を記録しているのはヴィニシウスである。ヴィニシウスは公式戦42試合17得点16アシストを記録。決定力が爆上がりして、マドリーの左サイドの支配者となった。
昨季、チャンピオンズリーグのボルシア・メンヒェングラッドバッハ戦で、ハーフタイムのベンゼマとフェルラン・メンディの会話が話題を呼んだ。「ヴィニシウスにパスするな。自分勝手なプレーをしている。僕たちの不利益になるようなプレーだ」とベンゼマが話しているところがカメラに抜かれたのだ。
無論、試合中の一幕だ。熱くなって、言葉が過ぎることもある。しかしながら、ピッチ上のコンビネーションでも、ベンゼマとヴィニシウスよりベンゼマとエデン・アザールの方が、関係性が良いのは明らかだった。
だが今季のベンゼマとヴィニシウスの関係性は、昨季までのものとは異なっている。
「僕はヴィニシウスにフットボールを教えてはいない。でも、彼の考えを変えようと努めた。以前の彼は、まずドリブルをして、『それからどうするか決めよう』というプレーをしていた。でも、現在は、ゴールを決めにいくのか、クロスを送るのか、中央に行くのかを分かった上でドリブルしている。昨シーズンとの唯一の違いは、彼の判断力が良くなったことだ」とは先のフランス『レキップ』のインタビューでのベンゼマのコメントだ。
ベンゼマはワインのようだ。そのように評したのは、アンチェロッティ監督である。
月日が経てば経つほど、旨味を増す。ベンゼマを見ていると、確かにそういった印象を受ける。なおかつ、いま、ヴィニシウスというパートナーを得て、ゴールに、アシストに、攻撃を牽引している。
最近では、キリアン・エムバペやアーリング・ハーランドの名前が、マドリーの補強候補に挙げられている。しかし、現在のマドリーにはベンゼマとヴィニシウスがいる。それはすでに、欧州屈指の破壊力を備えている。