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韓国選手団の選手村横断幕 、何がダメ?大韓体育会「代表チーム応援する純粋な意図が歪曲され残念」

金明昱スポーツライター
ベランダに掲げられた韓国国旗と横断幕(写真・「国民日報」キャプチャー)

 東京五輪に出場する選手たちが宿泊する東京・晴海にある選手村の周辺は、かなり静かだった。

 周辺は多くの警察官が立ち、交通規制もあって選手村には近づけない。ただ、そんな静けさの裏側で、もめ始めたのが韓国と日本だ。

 東京五輪に出場する韓国選手団が選手村で、「抗日の英雄」とされる将軍・李舜臣の言葉をアレンジした横断幕の掲出が問題視され、日韓双方のメディアが騒ぎ始めている。

 問題になったのは韓国選手団が居住するベランダに韓国語で掲げられた「臣にはまだ5000万国民の応援と支持が残っています」という内容の横断幕だ。

 なんとも韓国選手団らしいと思ってしまった。

 これは 1592年から始まった豊臣秀吉の朝鮮出兵(日本では「文禄・慶長の役」、韓国では「壬辰倭乱」)で、国民英雄となった朝鮮水軍の将軍・李舜臣の「今臣戦船、尚有十二、舜臣不死(今、臣にはまだ戦船12隻が残っている。舜臣は死んでいない)」という言葉にかけたものだ。

 韓国のソウルの光化門(クァンファムン)広場に李舜臣将軍の銅像が建てられ、100ウォン硬貨と旧500ウォン紙幣の肖像にもなったほど。

 韓国・ソウルに観光やビジネスで行った人がある人はきっとこの銅像を見たことがあるはずだ。

 今回の騒動について、横断幕を掲げた大韓体育協会は立場を表明。「朝鮮日報」が関係者の声を伝えている。

「日本では過度にあまりにも敏感に受け入れているのではないだろうか。この横断幕が政治的にクローズアップされるのは、我々も望んでおらず、日本がこれを政治的に利用すれば我々にもいいことがない。オリンピック組織委員会側が動き始めるのではないかと心配だ」

 また、「コロナ禍によって東京五輪に参加しないという騒動などもあり、選手団の士気が下がり(以前の大会に比べて)国民の支持を受けられていない。選手たちに元気を与え、国民から応援してもらえるように掲げた言葉」とも話している。

 とにかく韓国側としては、日本に向けたメッセージでなく、純粋に選手たちの士気を高めて五輪で戦いたいという思いがあっての今回の横断幕だったはずだ。

 ただ、今回の件に日本が敏感に反応することくらいは、韓国側も想像はできたはず。ある程度は想定しておくべきだったと感じる。

 コロナ禍で騒がしい開幕前の東京五輪。こうした騒動が大きなニュースになるのも残念で仕方がない。とにかく無事に大会が完遂することを願うばかりだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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