Yahoo!ニュース

早見沙織 歌手デビュー10周年を前に刺激を受けた、「奇跡みたいな時間だった」セッションとは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

3人のアレンジャー、スーパーバンドと今届けたい3曲をセッション

『ONE PIECE』ヤマト役、『鬼滅の刃』胡蝶しのぶ役、『SPY×FAMILY』ヨル・フォージャー役を始め数々の人気作品に出演し、声優界のトップランナーとして走り続けている早見沙織。2015年シンガーとしてデビューし来年10周年を迎える早見が、大編成のバンドで生演奏にこだわり、上質な音楽を作り続けるライヴ番組『Sound Inn S』(BS-TBS)に登場(11月16日(土)18:30~)。

3人のアレンジャーと共に今届けたい3曲をセッション。「3曲歌わせていただいて、ミュージシャンの皆さんとの呼吸の感覚、自分の緊張感、曲に対しての没入感が増していく感覚があって、その瞬間、瞬間の積み重ねで生まれた奇跡みたいな時間だった」と語る、感動的なセッションをレポート。

「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」を冨田恵一のアレンジでカバー。「冨田さんのアレンジで一層華やかでカッコよくなりました」

1曲目はAdoの「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」を冨田恵一のアレンジでカバー。Mrs. GREEN APPLE・大森元貴が作詞・曲を手がけた『ONE PIECE FILM RED』(2022年)の劇中歌だ。早見のミニアルバム『GARDEN』(2020年)に収録されている「garden」のアレンジを冨田が手がけたり、冨田のプロジェクト・冨田ラボのアルバム『7+』(2022年)に早見が参加したり、それぞれがリスペクトし合う関係だ。そして二人は「コン・ファンク・シャン、スティーリー・ダン好き」という音楽的な趣味も共通している。

冨田恵一
冨田恵一

シンガー早見について冨田は「声優として色々なキャラクターの声を出していますが、早見沙織さんの歌い方だなというのが第一印象でした。彼女自身のキャラクターが声から出ていると思いました」と評している。超絶テクのドラムとベースの強力リズム隊が生む熱いビート、力強いストリングスが印象的なアレンジの「私は最強」を作り上げ、早見は圧倒的なパフォーマンスを見せる。

アッパーな曲でも、その柔らかな歌声でしなやかさが響いてくる歌は、唯一無二だ。まるでミュージカル曲のようなドラマティックな仕上がりになっている。早見は「本当にパワーをもらえる曲です。この映画を劇場で見てその音楽シーンが忘れられなくて、もちろん歌うのがとても難しい曲ですが、今回、冨田さんのアレンジでより一層華やかでかっこよくなって、でも難易度もアップしていますが(笑)、今すごくハッピーな気持ちなんです。歌詞の力も大きいと思います」と語っていた。

思い出の曲、宇多田ヒカル「光」を船山基紀のアレンジでカバー。「鳥肌が立ちました」

船山基紀
船山基紀

2曲目は宇多田ヒカルの「光」(2002年)を名匠・船山基紀のアレンジでカバー。この曲は早見が子供の頃家族と車の中で聴いたり、自身が楽しんでいたゲーム(『キングダムハーツ』)のエンディングテーマとして記憶に強く残っている曲だという。船山が「タイトルの『光』という言葉をより強くイメージした」、華やかな中にも柔らかで包み込んでくれるようなアレンジを作り上げた。それを演奏する名手揃いのバンドが紡ぐサウンドをバックに、ひと言ひと言を丁寧に届けるように情感豊かに歌う早見。歌い終わった早見は「鳥肌が立ちました。キラキラしているような、包まれているような気持ちでした」と感激した様子だった。

「Awake」を斎藤ネコのアレンジで披露。「『Awake』という曲がどんどん大きな花となって咲いていく感覚があって、幸せでした」

ラストは自身の楽曲で作詞も手がけている「Awake」を斎藤ネコのアレンジで歌った。作曲はTK(凛として時雨)。静と動、冷たさと熱さ、その両方を併せ持つ「繊細なところからダイナミックなところまで本当に幅がある曲」(早見)で、難易度が高い作品だ。この曲は「コロナ禍で活動がストップした時間が忘れられない」早見が、“孤独を感じている人の救いになるような歌”を歌っていきたいと、思いを新たにし制作した大切な作品であり、自身が主人公の声を務めたテレビアニメ『RWBY 氷雪帝国』のエンディング主題歌でもある。自身と主人公の想いを交差させて「聴いてくれる人に光を届けるイメージ」で歌詞を作り上げた。

総勢28名のバンドが演奏する壮大な音世界の中で、早見の感情が歌に溶けだしていく

斎藤ネコ
斎藤ネコ

斎藤のアレンジは、楽器ひとつ一つの音が祈りを届けるように繊細で、それが重なり、深くそして豊かで、痛みを共有し共に進んでいくというメッセージを伝える歌詞の温度と表情が立ち昇ってくるようだ。総勢28名のバンドが演奏する壮大な音世界の中で、早見の感情が歌に溶けだしていく。音域が広い“激しい”曲を、低い声から美しいファルセットまで駆使して、思いをストレートに伝えていく。歌い終わった早見は「感無量すぎて言葉が出ないです。『Awake』という曲がどんどん大きな花となって咲いていく感覚があって、幸せでした」と感動していた。

来年10周年。「自分の中のハードルも取り払って、より自由に音楽と向き合って挑戦していけたら」

最後にこれからの活動について聞かれた早見は「来年は音楽活動を始めて10周年イヤーになるので、ひとつの節目という意味で、これまで積み重ねてきた自分自身の音楽も大事に届けていきたいと同時に、自分の中のハードルも取り払って、より自由に音楽と向き合って挑戦していけたら」と語っていた。

その言葉通り「早見沙織史上最も攻めたライブ」(早見)『Hayami Saori セメ Live Vol.1』を、2025年3月20日大阪・GOLLILA HALL OSAKA、3月30日 東京・EX THEATER ROPPONGIで開催する。

早見沙織のパフォーマンスが楽しめる『Sound Inn S』は、11月16 日(土)BS-TBS(18時30分~)で放送される。またTVerでは未公開部分を追加した特別バージョンが見逃し配信される【配信期間11月17(日) 12:00~12月17(火) 11:59】。

BS-TBS『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事