平年並みに戻った親潮 海の影響で東北地方太平洋側は日本海側より気温が低い
東北地方の気温
東北地方は、日本海側と太平洋側の気温を比べると、冬期を除くと、日本海側の方が気温が高くなります。
これは、日本海側は沖合いを黒潮の分流である対馬暖流が流れていることに対し、太平洋側は寒流である親潮が流れているからです。
ほぼ同じ緯度にある秋田と岩手県宮古の平年の平均気温を比べると、冬期は秋田の方が少し低くなっています。
秋田は、大陸からの南下しながら暖まる寒気か、宮古より先にやってくるからです。
しかし、冬期以外は秋田の方が気温が高く、特に、夏期は気温がかなり高くなっています。(図1)。
夏期に気温がかなり高くなるのは、海流の影響のほかに、日本海側は太平洋高気圧による南よりの風によってフェーン現象の影響が加わるからです。
東北地方の日本海側が米どころである所以です。
ただ、これは平年での話で、年によって多少違います。
図1で示したように、令和2年(2020年)前半は、親潮が記録的に弱かったために、春になっても秋田と宮古の気温差が大きくなっていません。
また、令和3年(2021年)2月は、寒気が南下することが多いために、秋田の気温の方が低かったのですが、親潮の強さが平年並に戻った4月は、宮古の方が気温が低くなっています。
親潮の季節変化
親潮は、千島列島に沿って南下し、日本の東海上まで達する寒流です(図2)。
名前は、ケイ酸塩など栄養塩と呼ばれる物質を多く含み、魚類や海藻類と育む親であることに由来します。
親潮は緑や茶色がかった色をしており、青や紺色をしている黒潮とは違います。
北日本の東海上を南下する親潮は、北上してくる暖流である黒潮に直接ぶつかるわけではありません。
途中に寒流と暖流の混合域があり、どこからどこまでが親潮なのかわかりにくくなっています。
気象庁では、東経141度から148度、北緯43度以南における、深さ100mの水温が5度以下の領域を親潮の面積としています。
親潮がより南の海域まで達すると、この親潮の面積は大きくなります。
図3は、親潮の面積の時系列で、黄色の線は、平成5年(1993年)から平成29年(2017年)までの25年平均の推移を示しています。
親潮の面積は、3月から4月の春に大きくなり、12月から1月の冬に小さくなるという年変化をしています。
しかし、赤い線で示す親潮の面積の時系列をみると、令和2年(2020年)は、2月から7月にかけて親潮の面積が小さく、それも、薄い青で示す上位10分の1と下位10分の1を除いた範囲に入っていません。
つまり、親潮がそれだけ弱かったのです。
しかし、令和3年(2021年)4月は、濃い青で示す上位3分の1と下位3分の1を除いた範囲に入ってくるなど、平年通りの親潮の南下になっています。
黒潮は大蛇行継続
黒潮は、東シナ海を北上して九州と奄美大島の間のトカラ海峡から太平洋に入り、日本の南岸に沿って流れ、房総半島沖を東に流れる海流ですが、平成29年(2017年)8月から黒潮の大蛇行が続いています(表)。
本州南方で四国・本州南岸にほぼ沿って流れるのではなく、紀伊半島沖から大きく南下した流れになっているのです(図4)。
日本近海の漁業は、黒潮や親潮の動向によって漁場がかわるなど、大きな影響を受けます。
令和2年(2020年)は、日本近海の代表的な海流である親潮と黒潮がともに平年とは違っており、漁業等の大きな影響を与えました。
令和3年(2021年)の現在までの状況は、親潮の黒潮の南下は平年並みに戻ったものの、黒潮の大蛇行は続いたままですので、漁業等への影響は続いています。
黒潮の大蛇行は、昭和42年(1967年)以降、5回発生していますが、過去には4年以上続いた例もありますので、どこまで続くか懸念されています。
図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図2、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。
表の出典:気象庁資料をもとに著者作成