シングル女性の夢遠のく……都心1LDK5000万円に上昇で、狙いは郊外物件に
新築分譲マンションで1LDKの比率が増え、価格も上昇している。
不動産経済研究所が発表している「首都圏 新築分譲マンション市場動向」によると、今年9月に東京区部で発売されたマンション住戸971戸のうち1LDKは111戸。10月は同1071戸のうち1LDKが261戸。11月は同2096戸のうち1LDKは100戸ちょうどだった。
11月に1LDK比率が下がったのは、五輪選手村マンションである「晴海フラッグ」で2LDK以上の住戸631戸が売り出されたため。それ以外の時期、新築マンションの間取りで1LDKは確実に増加している。
一方で、東京区部で分譲される新築マンション1LDKの価格は上昇中だ。中野区内や台東区内で新規販売されるマンションの1LDKが4000万円を超え、5000万円台というケースも目立つ。
3000万円台後半で購入できる住戸もあるのだが、それは1LDKではなく、1DK。寝室兼居室が1部屋にキッチンが付く間取りだ。
1LDKならば、リビングと寝室を明確に分けることができるし、収納スペースにも余裕がある。
しかし、1DKだとワンルームに近い間取りとなり、「この住まいに、ずっと住み続けるのか」と考えて、契約に躊躇する人も出てくる。
都心マンションの価格上昇は1LDKでも顕著なのだ。
2004年頃なら、都心で3000万円を切る1LDKも
「シングル女性のマンションブーム」が最初に起きたのは21世紀に入ってすぐの頃。2004年から2006年あたりだ。
当時、23区内の新築マンション価格が上がり始め、3LDKが5000万円以上になった。今から考えれば、5000万円台ならまだ安いと思えるが、当時は「高すぎる」と言われた。
そこで増えたのが、3LDKの半分くらいの面積でつくることができる1LDK。面積を半分にすれば、都心部でも安く売ることができる。その結果、東京メトロ東西線の門前仲町駅周辺で3000万円台前半、秋葉原に近い外神田エリアで2800万円といった価格水準の1LDKが発売され、シングル女性の人気を集めた。
それ以降、シングル女性がマンションを買う場合の希望価格帯は変わっていない。
「予算は3000万円台まで。できれば、3000万円以内」である。
3000万円前後で、便利な都心部……といっても南青山や六本木は無理なので、下町エリアがシングル女性向け分譲1LDKの狙い目エリアとなっていた。
その狙い目エリアで、3000万円台の1LDKが徐々に姿を消し、今は4000万円台、5000万円台の新築物件が目立つ状況になってしまった。
そこで、今、シングル向け分譲マンションには3つの新しい動きが出ている。
1LDKではなく、1DKが増加
1つ目の動きは、前述したとおり、「1LDKではなく、1DKが増えている」というもの。1LDKよりも狭くなる分、価格が抑えられ、東京23区内でも4000万円を切る価格が実現する。
住戸が狭くなる分、ゆとりはないのだが、間取りの工夫で満足度を高めるようにしている。たとえば、ベッドスペースをカーテンで区切り、生活空間を分けるとか、ベッド下収納を活用する、といった工夫だ。
その工夫を見て、これなら納得できる、というなら買いだろう。
1LDKは、シングル男性がターゲット?
次の動きは、シングル女性にとって少々残念なものだ。
4000万円台、5000万円台になった1LDKはシングル女性ではなく、シングル男性をメインターゲットにするようになったのである。
男性で1人暮らしの場合、家事や掃除の手間を省くため、住まいに高い機能性を求めがちだ。
たとえば、生ゴミのゴミ出しを不要にしてくれるディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)や食器洗い乾燥機、そして、バスルームでは浴槽に入らなくても満足できる全身シャワーが喜ばれる。
そのように設備にお金をかけると、その分、価格は上昇する。
1人暮らしの男性は駅に近いことや飲食店が充実する街を好む傾向も強いため、地価が高い場所に建設せざるを得ず、都心1LDKの価格が大きく上昇。購入できる人を限定するようになってしまった。
郊外3000万円台1LDKに熱い視線
最後の動きは、郊外で発売される1LDKが増えたことだ。
不動産経済研究所の発表によると、11月に都下、神奈川、埼玉、千葉で発売された1LDKは109戸。都区部の100戸より多かった。
10月は都区部261戸に対して郊外291戸、9月は都区部111戸に対し、郊外で200戸の1LDKが発売されていた。
これは、都心の1LDKが高額化したため、郊外エリアで発売される1LDKが増えたことを意味している。
都下や神奈川、埼玉、千葉であれば、駅に近い場所の新築マンション1LDKが3000万円台で購入できる。それならば買える、と注目度が高く、短期間で完売するケースも出ている。
郊外の1LDK多発地帯が、横浜
郊外エリアでも1LDKが増える、といっても、場所はある程度限定される。やはり、都心への通勤が便利で、メジャーな場所だ。
たとえば、神奈川県横浜市の関内駅周辺は複数のマンションで1LDKが販売されている「1LDK多発地帯」のひとつ。その価格水準は3000万円台前半から半ばのものが多くなっている。
各種の住みたい街ランキングで上位にランクインする横浜は、「今、1LDKが多くみつかる場所」でもあるわけだ。
シングル向け1LDKは、郊外部において、新しい年2022年も増えることが予想される。