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“性的暴行”容疑で選手2人が出頭…不祥事多発の韓国プロ野球は「道徳不感症」なのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
WBCをきっかけに野球人気が上昇した韓国だが…(写真:ロイター/アフロ)

韓国プロ野球界に衝撃が走っている。

昨日5月28日午前、韓国プロ野球ネクセンヒーローズのパク・トンウォン、チョ・サンウの両選手が警察に出頭したのだ。

両選手は「合意の上」と否認

彼らが今回、警察に出頭したのは、仁川(インチョン)市内のホテルで酒に酔った女性に対して性的暴行を加えた疑いをかけられているからだ。

警察は5月23日の午前5時21分に、被害女性の友人から通報を受けており、2人の捜査に着手。そして昨日、2人に出頭を命じたわけだ。

(参考記事:韓国プロ野球選手2人に“性的暴行の容疑”!! 1軍登録抹消も「合意の上だった」と否認

両選手が容疑を否認しているだけに現時点ではなんとも言えないが、シーズン中に宿舎に女性を呼んで明け方までお酒を飲む行為自体が、プロとしての自覚を問われて当然だろう。

ましてや近年、韓国プロ野球界では何かと不祥事が起きている背景も問題視されている。

例えば、2017年11月には元ハンファ・イーグルスの投手ユ・チャンシクが性的暴行の容疑で懲役2年6か月を宣告されている。また2016年6月にはKTウィズのキム・サンヒョンが公然わいせつ行為で懲役8月となった。

キム・サンヒョンはMVPにも輝いたことがあるベテラン内野手で、そんな彼が信じがたい公然わいせつ行為に及んだだけに、発覚時はかなり衝撃的だった。

(参考記事:韓国のプロ野球選手が公然わいせつ行為で任意脱退の懲戒処分。韓国ネット民の反応は?)

美女チアリーダーが被害に…

この他にも、2016年には韓国NO.1チアリーダーとされるパク・キリャンがKTウィズのチャン・ソンウ選手を名誉毀損で訴えるという事件も起きている。

チャン・ソンウと交際していた女性が破局の腹いせに、チャン・ソンウと交際中にやり取りしていた内容をSNSで公開。そこには監督、コーチ、選手はもちろん、パク・キリャンらチアリーダーたちへの暴言や悪口も含まれており、「チアリーダーたちは私生活が乱れている」という風評を世に広めてしまったのだ。

結局、事実無根ということだったが、パク・キリャンをはじめとする人気チアリーダーたちにいらぬ誤解を与える出来事だった。

韓国では各球団のチアリーダーたちが“球場の華”として脚光を浴び、メディアでも「チアリーダー・ベスト10」といった特集が組まれるなど、大きく取り上げられるだけにイメージダウンをも招きかねない事件だった。

ただ、今回の性的暴行事件発覚で何よりも深刻なのは、「また韓国プロ野球で不祥事か」と呆れる声が多いことだ。

韓国プロ野球は道徳不感症なのか

というのも、最近、世界中で注目を集めている「MeToo(私も)運動」によって、韓国でもセクハラ・性的暴力被害を告発する「MeToo運動」が活発化。

政界や文学界、芸能界などで勇気ある告発が続き、その影響も受けてスポーツ界でもセクハラ・性的暴力があるか調査されることになった。

韓国の文化体育観光部(日本の文部科学省にあたる)が韓国プロスポーツ協会(KPSA)に実態を調査するよう指示しているのだ。

(参考記事:女子ゴルフ、美女チア、人気アナまで…セクハラ被害調査に着手する韓国プロスポーツ)

そんな中で現役選手が宿舎に酔った女性を連れ込んだというのだから言語道断だろう。韓国プロ野球ではこうしたセクハラ・性的暴行事件だけではなく、飲酒運転や薬物疑惑、さらにはかつて八百長事件も起きるなど、不祥事が耐えない。

年間観客動員数800万人を超え、トップクラスになると年俸100億ウォン(約10億円)を稼ぐスター選手まで出現している中でも不祥事が相次ぐ事態を、韓国メディアYTNなどは「韓国プロ野球は道徳不感症に病んでいる」と厳しく指摘しているほどだ。

何よりも心配なのは、こういった不祥事が韓国の野球人気に悪影響を与えてしまうのではということだろう。

実際、右肩上がりに観客数を増やしてきた韓国プロ野球も陰りが見えている。

『聨合ニュース』が報じたところによれば、5月上旬の時点で、韓国プロ野球10球団のうち、ホームでの観客数が前年よりも増加したのはSKワイバーンズが唯一。全体の観客数も前年同時期8%減となっており、今回、警察に出頭した両選手が所属するネクセン・ヒーローズにいたっては37%も減少したという。

韓国プロ野球関係者は観客数の減少を「今シーズン序盤は強風やPM2.5悪化など異常気象で観戦に向かない日が多かった」としているが、選手たちの不祥事が影響を与えている可能性もゼロではないのだ。

いずれにしても今回、警察に出頭した両選手に対する韓国社会の目は厳しい。捜査に誠実に協力することを願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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