コロナで露呈:商業捕鯨再開から1年、クジラに根強いタブー視
民間企業の努力が報われない“多重苦“の現実
商業捕鯨が再開してから1年経過、東京・新宿歌舞伎町でくじら料理を扱う老舗飲食店「樽一」を6月下旬に訪ねると、代表取締役の佐藤慎太郎氏(49)がため息をついた。緊急事態宣言が都内で解除された後も、新型コロナウイルス感染者が歌舞伎町で相次いだことが報道された影響で、客足は真っ昼間の日中も遠のいている。
採算があわなくても多くの一般の人にクジラを手軽に食べてもらおうと、ランチを昨年6月からスタートし、「クジラカレー」を500円で提供している。換気対策の一環で、店外に席を設けているが、なおも厳しい状況という。
「根強い“タブー視“があり、デリバリーサービスを断られたことも」
換気、値段を考慮した努力も報われないまま、つい先日、新宿にある2号店は閉店したという。また、多くの飲食店がいち早く導入したデリバリーサービスUber Eatsによる提供も、「クジラは運べない」と配達を断られたという(現在は対応可能になった)。
比較される戦後とコロナ禍:戦後の食料タンパク源の救世主だったクジラへの扱いの格差大
クジラはかつて、戦後の焼け野原となった日本人の多くの命を飢えから救った救世主の食材だった。日本はこうした日本の土地の特性を考慮し、海からの食料確保を重要視している。しかし、戦争と比べられることが多い今回のコロナ禍においては、クジラ肉は皮肉にも国内においても根強くタブー視される食材として苦境に立たされているのが現状なのだ。