新たな刺客カシメロ「モンスターかかってこい」井上尚弥も対戦前向き
11月30日(日本時間12月1日)イギリスのバーミンガムで、WBO世界バンタム級王座統一戦が行われ、正規王者ゾラニ・テテ(31=南アフリカ)と同暫定王者ジョエルリエル・カシメロ(30=フィリピン)が戦った。
この階級は、井上尚弥(26=大橋)が2団体王者(WBA&IBF)として君臨し注目を集めている。
序盤に試合が動く
両者がリングに上がり目についたのは身長差だ。
テテは173cm(リーチ182cm)、対してカシメロは163cm(リーチ162cm)。
身長差は10cm、リーチ差は20cmもある。
序盤はテテが、リーチを活かして戦おうとするのに対し、カシメロはガードを下げ体ごと飛び込みながらパンチを狙う。
テテは怪我の影響で1年近くのブランクがあるため、慎重な立ち上がりを見せた。
続く第2Rでは、テテがジャブでペースを握っていく。カシメロは、長いリーチを持つテテの懐に入り込めずにいた。
少しづつテテが、ペースを握っていくかに見えたが、第3Rで状況が一変。カシメロが体ごと飛び込みながら放った右がヒットし、テテがダウン。
テテは立ち上がったが、ロープに持たれかかり足元もおぼつかない。そんなテテに対して、カシメロがラッシュをかけ、2度目のダウンを奪う。
その後立ち上がるも、もうフラフラだ。カシメロが詰めかかったところでレフリーが試合をストップ。
カシメロの3RTKO勝利となった。予想ではテテ有利の声が多く、番狂わせとなった。
飛び込みながら打つ
KO勝ちに繋がったパンチをスローで見ると、カシメロが飛び込みながら放った右が、ダッキングしようとしたテテのテンプルにもろに入っている。
急所であるテンプルにパンチをもらうと脳が揺れて、方向感覚がなくなる。
顎へのパンチと違い、三半規管が揺れて体を制御できなくなるのだ。
私も経験があるが、相手との距離感がわからなくなりパンチをもらいやすくなる。
立ち上がったテテだったが、この一発が完全に効いてしまい、その後もパンチを浴び続けてしまった。
カシメロは、2Rからしきりに踏み込みとフェイントを掛けていたので、狙っていたパンチだったのだろう。
パッキャオをはじめフィリピンの選手は、体重を乗せながら打つパンチを得意としている。
体ごとぶつけてくるようなパンチを打つので、非常に体重が乗った強いパンチとなる。
下の階級から上げてきたカシメロだが、体重が増えるに連れて力強くなっている印象を受ける。
番狂わせと言われた試合だったが、カシメロはここまで3階級を制覇している実力者だ。
過去には井岡一翔に勝利した、IBF世界フライ級王者アムナット・ルエンロンにも勝利している。
混戦のバンタム級
今回の試合を得てバンタム級は以下の顔ぶれとなった。
WBA スーパー&IBF 井上尚弥(26=大橋)
WBC ノルディ・ウーバーリ(フランス)
WBO ジョンリル・カシメロ(フィリピン)
一時期は暫定王者を含めて6名の王者がいたが、現在は3名となった。
井上も自身のSNSで、以下のように載せており対戦に前向きのようだ。
カシメロも「次は井上と戦いたい。モンスター、かかってこい」と対戦を熱望している。
井上の次戦は、ドネア戦での怪我の回復に努めて、来春にアメリカ開催の予定だ。
うまく交渉がまとまれば、次の試合での対戦もありえるかもしれない。
今回勝利したカシメロは非常に好戦的な選手であるので、井上とのぶつかり合いもぜひ見たい。
井上が目指す4団体同時統一王者は、これまで以下の4名だけだ。
テレンス・クロフォード(スーパーライト級)
バーナード・ホプキンス(ミドル級)
ジャーメイン・テイラー(ミドル級)
オレクサンドル・ウシク(クルーザー級)
全階級で過去にも4名しかいない、階級最強の証でもある快挙達成に期待したい。