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WBA/IBF/WBOヘビー級タイトルマッチ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
7月13日、ロンドンで行われた記者会見で(写真:ロイター/アフロ)

 WBA/IBF/WBOヘビー級チャンピオン、オレクサンドル・ウシク(36)の次戦が決定した。残念ながらWBC王者タイソン・フューリーとの統一戦ではなく、8月26日にポーランドのヴロツワフで、WBAレギュラー王者のダニエル・デュボア(25)と対戦する。

 元クルーザー級4冠統一チャンピオンで、現ヘビー級3冠チャンプのウシクにとっては、2022年8月20日のアンソニー・ジョシュア戦以来のファイトである。

写真:ロイター/アフロ

 ご存知のように、ウシクの国籍はウクライナだ。祖国はロシアの侵攻を受け、毎日のように同胞が命を落とし、家を破壊されるといった状況下にある。もっと頻繁に試合を重ねたかったウシクも、戦火を逃れるために母国を離れねばならなかった。

写真:ロイター/アフロ

 2019年10月のヘビー級転向後、ウシクは、年に1度のペースでしかリングに上がれていない。20戦全勝13KOの3冠ヘビー級チャンピオンは、自身の勝利がいかに祖国に歓喜を齎すかを熟知している。だからこそ、フューリーとの統一戦を望んでいる。

撮影:筆者 米国カリフォルニア州に住むウクライナ人たちの平和を祈る活動
撮影:筆者 米国カリフォルニア州に住むウクライナ人たちの平和を祈る活動

撮影:筆者
撮影:筆者

 だが、フューリーはこの一戦を熱望していると発言しながらも、不誠実な交渉、デッドラインの強要、あるいは不公平な分割払い要求などを繰り返し、非難を浴びている。

写真:ロイター/アフロ

 英国出身で、目下19勝(18KO)1敗のデュボアは、2020年11月28日にジョー・ジョイスに10ラウンドでストップされ、キャリア初の敗北を喫した。昨年末のケビン・レレナ戦でもファーストラウンドに3度のダウンを奪われている。第3ラウンドに逆転KO勝ちを飾ったが、打たれ脆さを露呈した。25歳の若さが武器だが、順当にいけばウシクの防衛だろう。

写真:ロイター/アフロ

 傷付いた兵士たちの慰問訪問を続けるチャンピオンは、文字通り祖国のためにリングで戦うであろう。果たして、どんな一戦となるか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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