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アウディの最新モデル、RS5をアンドラ公国で試す。【動画あり】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

羽田からミュンヘンを経由して、降り立ったのはフランスのトゥールーズ。エアバスの工場があることで有名な場所でもある。

トゥールーズを訪れたのは、アウディの国際試乗会に招かれて。今回試乗するのは、RS5というモデル。RS5は、既に日本でも発売されているA5シリーズの頂点に位置する。A5シリーズはそもそも、アウディの基幹モデルであるA4の派生版(A4はセダンとワゴンで構成される)で、ボディ形状はクーペ、カブリオレ、そして5ドアのスポーツバックの3種類となり、このラインナップの中で最もハイパフォーマンスとなる一台が今回のRS5だ。

日本でもA5は既にクーペとスポーツバックのそれぞれに、S5というハイパフォーマンスモデルが用意される。このモデルは3.0LのV6ターボで、最高出力354ps、最大トルク500Nmを発生する。これに対して、今回試したRS5は、最高出力450ps、最大トルク600Nmを発生する、新世代の2.9LのV6直噴ツインターボ・エンジンを搭載する。このエンジンは、同じVWグループの中では最近、ポルシェのパナメーラに搭載されたものと同様だという。

このエンジンに8速ATのティプトロニックを組み合わせて、アウディのお家芸であるクワトロ(=4WD)によって、生み出されるパワーとトルクを効率よく路面に伝える。0−100km/h加速タイムは3.9秒、最高速は280km/h。言うまでもなく、圧倒的な動力性能を実現している。

ノーマルのA5に対して、よりスポーティなS5、さらにその上に位置するRS5という序列となるため、今回のRS5が当然最もパフォーマンスが高く、その名からもキャラクターが最もハードだろうという想像をするのが普通だろう。事実、これまでを振り返っても、RSモデルはハードなキャラクターの走りのモデルという感覚だった。

しかし今回、RS5に試乗して真っ先に驚いたのは、シリーズの中で随一といえる乗り心地の良さを実現していたことだった。

足元をチェックすると、前後ともに275/30R20というサイズの極めて大きな径のタイヤ&ホイールを装着している。大きな径のタイヤ&ホイールは、運動性能を高めるためには有効である一方で、その大きさ重さから来る慣性マスの大きさゆえに、乗り心地の良さを実現するのは難しいとされる。

しかしRS5は走らせると同社のサルーンを思わせるような、まるで路面に絨毯が敷かれたかのようなフラットで衝撃を徹底的に緩和した乗り心地を披露してくれたのだった。

乗り心地の良さは、RS5が備えるサスペンションから来るもの。RS5のサスペンションは電子制御式の可変式とされており、これにより高い快適性とハンドリングを両立できるためである。アウディドライブセレクトという走行モードを変更できるボタンを押すと、コンフォート、オート、ダイナミック、インディヴィデュアルと4つのモードが選べる。これによって乗り心地も変わるし、オートならばその時の走りの状況に応じて自動的にサスペンションを設定してくれるわけだ。

トゥールーズから高速を使って、スペイン方面へと走っていくピレネー山脈が近い。そうして高速を降りてしばらくすると、つづら折れがどこまでも続く道が広がった。そこが、フランスとスペインの間にある小国、アンドラ公国だった。

そしてここまで高速でハイスピードツーリングをこなし、さらにこれから目の前に広がるワインディングを見て、なるほど今回の試乗会の意図がわかった。RS5の説明の際に、自ら「グランツーリスモ」とそのキャラクターを謳ったわけだが、なるほど今回の道程もここまでで既に約200kmを走破しているし、併せてその乗り心地の良さにも納得がいく、というわけだ。

しかし、RS5は単に乗り心地が良いだけのモデルではないことも、読者のみなさんは予測済みだろう。そう、RS5をアンドラのワインディングに解き放つと、まさに圧倒的なスポーツモデルとしての姿を披露してくれたのだった。

450ps、600Nmを発生するV6直噴ツインターボは、決して軽くないRS5のボディを軽々と動かすだけのパワー&トルクで、実に痛快な加速を味あわせてくれる。ドライブセレクトをダイナミックにすると、エンジンの反応がより敏感となって、高回転まで吹け上がることを許容する設定となるため、まるで別物のような印象さえ受ける。そしてこの時、室内に響き渡るサウンドが実に耳に心地よい。

最近のスポーツモデルでは、主にアメリカ市場でのニーズからか、アクセルオフにした時のアフターファイア音で、バリバリッという過激な音を強調するモデルが増えているが、アウディはそうしたトレンドとは明らかに一線を画している。エンジンの回転の高まりとともにボリュームこそ増すものの、純粋に響き渡る音の気持ち良いところだけを室内に響かせるようにしている。

そしてダイナミックモードでワインディングを走ると、RS5は異次元のコーナリングを披露してくれる。特に試乗車両はスポーツディファレンシャルを備えているモデルだったため、カーブを曲がる時にスポーツディファレンシャルによって左右輪にかかるトルクをも配分して曲がりやすくしてくれるために、たとえ高い速度であってハンドル操作に対しては極めて忠実にカーブを曲がって行き、カーブで膨らむような感覚がほぼ皆無なのだ。

もちろんこれはスポーツディファレンシャルだけでなく、可変式サスペンションも効果している上に、さらにRS5だけのオプション装備として、DRC(ダイナミックライドコントロール)を採用したRSスポーツサスペンションプラスというものが選べる。これによって、実に秀逸なボディコントロールがなされるのだ。

DRCは日本のヤマハが開発した技術で、サスペンションの右前と左後、左前と左後をX字型のオイルラインで結び、中央に調整バルブを備えた可変のダンパーを備える機構。かつてはトヨタのスープラやクラウンなどに、Xリアスという名前で採用されていたものだが、この機構をアウディも随分前から使っており、走りの性能を高めるために用いている。

このDRCによって、ボディの前後左右への傾きがコントロールされることや、先の様々な制御があいまって、RS5はとても素晴らしいコーナリングフォームを見せてくれる。車は通常カーブを曲がる時に、傾いて最後にグッと踏ん張る感覚を伝えるが、RS5は傾きが一定のところまで来ると、踏ん張る感じがあまりないのに高い安心感をともなってカーブを駆け抜けていくのだ。

しかもこの駆け抜けていく速度は、どこまでも高めて大丈夫とすら思えるほど。そして実際に高い速度まで、オンザレール感覚でカーブを駆け抜けていく様には舌を巻いたのだった。しかも、こうした走りをしている際にも、乗り心地はとても良好。路面に大きく荒れた部分や継ぎ目がない限りは、実にフラットな感覚とともに路面に吸い付く感覚をずっと提供しつづけるのだ。

写真や動画で、内外装を見ていただくとわかるように、RS5は通常のA5から比べると大分派手な見た目を持っている。特に注目なのはエクステリアにおけるヘッドライトとテールレンズの外側に与えられた小さな黒いパーツ。ここはエアのインレットになっており、ノーマルには採用されないパーツだ。そして前後のライドを包み込む前後のフェンダーは、ノーマルに対して左右とも15mm拡幅されている。つまりワイドなフェンダーを与えてよりスタンスを広げているのである。また前後のバンパーも、ノーマルよりもスポーティなデザインとなっており、よりどう猛なイメージを与えるものとなっている。

一方でインテリアは、既に登場済みのS5にかなり近いものだが、シートのステッチ等がボディ同色となるなどのコダワリを見せる他、随所に与えられたRS5のロゴが誇らしく光っている。

さらにこのRS5、圧倒的なパフォーマンス、そしてそんなパフォーマンスとは裏腹なサルーンのような乗り心地を持つなど、モードに応じて様々な顔を見せるだけでなく、安全装備は現在考えられる最良のものが与えられている。通常のA4やA5のように、全車速域対応のアダプティブクルーズコントロールに加えて、自動ブレーキはもちろん、渋滞時にはほぼ自動運転といえるだけの運転支援を行なってくれる。もはやスポーツモデルとはいえ、こうした装備がスタンダートになりつつあるし、こうした装備によってスポーツモデルは、解放された場所でその性能を存分に楽しむことができるし、その帰り道ではクルマにアシストしてもらって疲れを軽減して家路につくこともできるわけだ。

アウディRS5が日本に上陸を果たすのは、今年の後半といわれているが、既に日本での受注が始まっている。価格は1257万円からとなる。非常に高価ではあるが、その性能と内容を考えるとむしろ、納得の価格といえるだろう。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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