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金総書記は密輸した「新型ベンツ」に乗り換えていた!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
金正恩総書記の新車ベンツメルセデスマイバッハ「S650」(「SBSテレビ」から)

 日本から高級車レクサスのSUVをバングラデシュ経由で北朝鮮に運び込もうとした不正輸出事件が摘発され、北朝鮮による「制裁破り」が俄かに注目されているが、昨日、韓国の「SBSテレビ」は夕方の放送で金正恩(キム・ジョンウン)総書記の専用車、ベンツが「新型になっている」とスクープしていた。

 「SBSテレビ」は金総書記が愛車のメルセデスベンツを新型に乗り換えたことを今月4日、平壌で開催された全国母親大会に出席した母親ら全員と平壌体育館前の広場で記念写真を撮るため乗ってきた車を見て、確認したようだ。

 車のバックドアの辺りに2019年に出庫された新型ベンツ、メルセデスマイバッハのマークが見え、トランクのところには「S650」という文字が確認されたそうだ。

 金総書記は9月に訪露した際には旧型のベンツを列車に運んで使用しており、この「S650」新型車は使われてなかった。従って、直近の1~2か月の間に交換したものと「SBSテレビ」は報じていた。

訪露に使用された旧型のベS600600」(「朝鮮中央テレビ」から)
訪露に使用された旧型のベS600600」(「朝鮮中央テレビ」から)

 マイバッハ「S650」は数千万円もする最高級車で当然、2013年3月に採択された国連安保理の制裁決議「2094」によって輸出品目に指定されている。

 「SBSテレビ」は新型車が北朝鮮にどのような経路で持ち込まれたのかは不明だとしているが、過去の例からして複数の国を通じて北朝鮮が輸入した可能性が高いと推測している。

 「SBSテレビ」は前例として、2019年の米紙「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)の報道を引用していたが、当時「NYT」はベンツの北朝鮮搬入経路を追跡した結果、約3か月半掛けて5か国を通じて北朝鮮に運びこまれていたと伝えていた。

 「NYT」は米民間シンクタンク、「先進国防研究センター」の報告書と独自取材に基づきマイバッハ「S600」2台が積載されたコンテナの移動経路を追跡した結果、最終目的地が北朝鮮であることを突き止めた。

 「先進国防研究センター」の報告書によると、「S600」2台はオランダ(ロッテルダム港)―中国(大連港)―日本(大阪港)―韓国(釜山港)―ロシア(ナホトカ港)を経由し、ウラジオストクから空路平壌に輸送されていた。 

 ロッテルダムから平壌までの輸送期間は108日間。コンテナ船はロッテルダムを2018年6月20日に出航し、平壌に着いたのは同年10月7日頃とみられている。ちなみに大阪に到着したのは9月18日で、出航したのは27日だった。

 当時ベンツを購入し、北朝鮮に輸送した会社は「Do Young Shipping」という名の船舶会社で2019年2月に北朝鮮産石炭3217トンを積んで浦項港に入港した際に北朝鮮からの石炭の輸入を禁止した安保理制裁決議違反の容疑で調査を受けた会社である。

 金総書記が2019年1月31日に中国公演を無事終えた芸術団と記念写真を撮るため労働党中央庁舎前にマイバッハ「S600」で乗りつけたことから搬入された1台が金総書記の専用車として使用されていたことが確認された。

 前出の「先進国防研究センター」は2019年7月16日に「豪華版(Lux & Loaded)」と題する対北贅沢品輸出報告書を発表しているが、驚いたことに当時で国連加盟国のうち「90か国が北朝鮮に規制品を輸出していた」とし、輸出金額を「総額で51億6938万ドルに達する」と弾き出していた。このうち93%が中国からだった。

 また、中国と同様に国連安保理制裁決議に同調していたロシアも2016年2月から2017年11月まで82回にわたり新車及び中古車を延べ803台も北朝鮮に輸出していたことが明らかにされており、その中には2018年4月の板門店での南北首脳会談の際に金総書記が利用した「S600」や随行員が乗っていたレクサスLX「570」も含まれていた。

 今回、千葉の中古車販売会社がレクサスのSUVを不正に輸出した事件では車を載せた船は当初、バングラデシュに向け出航したものの受取先が北朝鮮大使館だったことから問題になったため再度、宛先をシンガポールに変更し、再輸出したようだが、実際にはバングラデシュに運び、そこから北朝鮮に搬出する予定だったとされている。

 ちなみに北朝鮮のバングラデシュの大使館は先月20日に閉鎖され、パク・ソンヨプ大使を含む4人の外交官は すでに本国に帰国している。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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