日本国産の長距離ミサイル2種類は2023年に量産着手、2026年に納入予定
4月11日、防衛省は「スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について」で三菱重工と契約したと発表しました。これらの新型ミサイルの開発方針は2022年12月16日に策定された防衛3文書や令和4年度事前の事業評価、令和5年度防衛予算などで正式に発表済みであり、今回の発表は進捗状況を改めて発表したものです。
- 12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の量産
- 12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型・艦発型・空発型)の開発
- 島嶼防衛用高速滑空弾の量産
- 潜水艦発射型誘導弾の開発 ※関連記事
※12式地対艦誘導弾能力向上型・・・対地・対艦兼用の巡航ミサイル(推定射程1500km以上)
※地発型(地上発射型)、艦発型(艦上発射型)、空発型(空中発射型)
※島嶼防衛用高速滑空弾・・・対地用の極超音速滑空ミサイル(推定射程500km)。これを元に開発中の島嶼防衛用高速滑空弾能力向上型(推定射程3000km)とはまた別の早期装備型
2023年量産着手、2025年開発完了、2026年納入開始の意味
今回の発表では開発中の「12式地対艦誘導弾能力向上型」と「島嶼防衛用高速滑空弾」は今年の2023年から量産に着手して、2025年に開発完了、2026年から納入を開始する予定です。2023年から量産に着手することは既に令和5年度防衛予算で発表済みであり、今回の発表で新しく判明したのは2026年に納入を開始という部分です。
- 令和5年度(FY2023)に量産着手
- 令和7年度(FY2025)に開発完了
- 令和8年度(FY2026)に納入開始
これはおそらくですが、製造工場の組み立て生産ラインの準備や量産仕様が確定している部品の先行量産を2023年から前倒しして行い、2025年の開発完了と同時に量産型の本格生産を開始して、2026年に正式採用して部隊に配備開始という流れなのだと思われます。
過去の例だと、正式採用時に12式地対艦誘導弾という名前になった「88式地対艦誘導弾システム(改)」の開発は実用試験が平成23年度(FY2011)に完了、平成24年(FY2012)に12式地対艦誘導弾として正式採用されていますが、量産型の調達予算の計上が同年でした。教育部隊への配備開始は平成26年度(FY2014)から、実戦部隊育成用の配備開始はその翌年です。正式採用から本格的な量産型の納入まで2年のタイムラグがありました。
つまり12式地対艦誘導弾能力向上型と島嶼防衛用高速滑空弾はこのタイムラグを埋めるために量産の着手を前倒しして実施することになったのでしょう。平時では問題が無かった通常の生産スケジュールを特別に早める切迫した事情があるということになります。
なおアメリカから購入予定のトマホーク巡航ミサイルも令和8年度(FY2026)に納入開始予定で、12式地対艦誘導弾能力向上型や島嶼防衛用高速滑空弾と同じタイミングになりますが、これは開発中の新兵器である国産ミサイルの調達スケジュールが何らかのトラブルで遅れた場合の保険としての意味合いになります。