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関東地方は雹(ひょう)の多発地帯

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
関東地方はきょうも大気不安定(気象庁・気象レーダ図:4月17日午後3時すぎ)

ゴロゴロを聞いたら、建物へ

きょう(17日)は午後になって、茨城県や千葉県、東京の一部に雷雲が発生しています。今夜にかけて、関東地方の広い範囲で急な雨、カミナリなどの激しい天気となるでしょう。今、晴れていても油断しないで。急に風が強くなってきた、黒い雲が見えたときは天気が急変する兆しです。また、ゴロゴロという雷鳴を聞いたら、10キロくらいまで雷雲が近づいていますから、すばやく建物の中へ移動してください。

関東地方は雹(ひょう)の多発地帯

雹(ひょう)は空から降ってくる氷の塊で、大きさが5ミリ以上のものをいいます。雹(ひょう)は日本全国で降りますが、冬は日本海側で多く、春から初夏にかけては関東地方で多い傾向があります。一方で、九州、四国、近畿南部、東海地方では一年を通して少ないです。

下記の表は、各地の気象台で春から初夏にかけて観測された雹(ひょう)をまとめたものです。2011年6月から最近まで、全国の25都道府県で、のべ44か所で雹(ひょう)が観測されました。ほとんどの気象台で1回から2回です。

雹(ひょう)は目視(目で見る)による観測のため、この記録は気象台の職員が見たときだけです。気象台以外で降った雹(ひょう)は観測回数に入らず、実際はこの何倍も雹(ひょう)が降っていると思います。

雹(ひょう)の観測のべ回数(春~夏)ベスト5
雹(ひょう)の観測のべ回数(春~夏)ベスト5

この表をみると、1位に宇都宮(栃木県)、2位に水戸(茨城県)、前橋(群馬県)と、関東地方がランクインしていることがわかります。アメリカではトルネード(竜巻)が発生しやすい場所を「Tornado Alley」と呼んでいますが、関東地方はさながら雹(ひょう)銀座といえそうです。

雹(ひょう)の落下速度は?

気象台の記録では、雹(ひょう)の大きさは、5ミリからせいぜい1センチくらいです。1センチを超える大物は少ないのですが、最近では2014年5月29日熊谷(埼玉県)の1.2センチ、2012年4月3日彦根(滋賀県)の2センチがあります。

雹(ひょう)が降ってくると、バリバリと屋根に当たる音が激しく、車を運転しているとフロントガラスが割れるのでは?とヒヤヒヤして、かなりの恐怖を感じます。

実際、雹(ひょう)の降ってくる速さは、5ミリから1センチ程度の大きさで時速30キロから50キロくらいです。

以前、ゴルフ雑誌の記者からゴルフ場で雹(ひょう)が降ってきたらどうしたらいいか?と質問されたことがあります。そもそも、雹(ひょう)が降るときは激しい雷雨となっているので、天気が崩れる前にプレイを止めることが一番です。セルフの場合はプレイを止めるのが遅くなってしまうそうですが、雹(ひょう)が当たると痛いですか?なんて、呑気なことを言っていないで、すぐに避難小屋へ避難してください。

雲のなかでトランポリン?

雹(ひょう)のできる仕組み(米海洋大気庁NOAA)
雹(ひょう)のできる仕組み(米海洋大気庁NOAA)

雹(ひょう)は雲のなかで、氷の粒が上がったり、下がったりを繰り返しながら成長し、重みに耐えきれなくなると地上に落下したものです。大きく成長するには激しい上下運動が必要ですから、まるで氷の粒がトランポリンをしているようとも言えます。

少し専門的に言うならば、発達した積乱雲のなかの0℃層(融解層)を何度も上昇、下降することが必要です。そのため、真夏(8月)になると、0℃層(融解層)が雲の上部になり、また、地上の気温が高くなりすぎて、雹(ひょう)は落下する途中で融けてしまい、地上に達するころには大粒の雨に変わります。冬や春に雹(ひょう)が多いのは、雲のなかや地面付近の温度が低いことが影響しているのです。

【参考資料】

米海洋大気庁(NOAA National Weather Service):http://www.erh.noaa.gov/er/cae/svrwx/hail.htm

NSSL(NOAA National Severe Storms Laboratory):SEVERE WEATHER 101<Tornado Basics>

小倉義光,1994:お天気の科学-気象災害から身を守るために-

菊池勝弘,2009:気象ブックス028 雪と雷の世界 雨冠の気象の科学2

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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