Yahoo!ニュース

【ベーチェット病】原因から治療まで。皮膚症状にも注目!

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【ベーチェット病とは?症状と診断基準】

ベーチェット病は全身の血管に炎症が起こる難病です。再発と寛解を繰り返す慢性の経過をたどります。口腔内アフタ性潰瘍(口内炎)、皮膚症状、外陰部潰瘍、ぶどう膜炎の4つの主症状があります。

口腔内アフタ性潰瘍は患者さんの95%以上に見られ、口の中に有痛性の潰瘍ができます。皮膚症状としては結節性紅斑様皮疹、にきび様の皮疹、毛嚢炎などがあります。外陰部潰瘍は陰嚢や外陰部に潰瘍ができ、治癒後に瘢痕を残すことがあります。ぶどう膜炎は目の充血、痛み、視力低下を引き起こします。

ベーチェット病の診断基準としては、国際ベーチェット病診断基準が用いられます。口腔内アフタ性潰瘍に加えて、外陰部潰瘍、眼病変、皮膚病変、パテルギー反応(軽い外的刺激により好中球が過剰に反応し異常集積する現象)のうち2つ以上を満たす場合にベーチェット病と診断されます[1]。

【原因と疫学:皮膚症状との関連も】

ベーチェット病の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的素因と環境因子の組み合わせが関与していると考えられています。東アジアから地中海沿岸の「シルクロード」に沿った国々で有病率が高いことが知られています。

遺伝的には、HLA-B51という遺伝子型との関連が示唆されています。HLA-B51陽性者ではベーチェット病を発症するリスクが高いとされます。一方、環境因子としては、連鎖球菌感染や単純ヘルペスウイルス感染などが引き金になる可能性が指摘されています[2]。

また、ベーチェット病では好中球の過剰な活性化や、サイトカインの産生異常など、自然免疫と獲得免疫の両方の異常が病態に関与しています。特にIL-17を産生するTh17細胞の関与が近年注目されています。皮膚症状の発現には好中球の浸潤や炎症性サイトカインの関与が示唆されています。

【ベーチェット病の治療法と皮膚症状への対処】

ベーチェット病の治療は、症状のコントロールと再発予防が目的です。軽症例ではコルヒチンなどの抗炎症薬が使用されます。中等症以上では副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬の併用が行われます。シクロスポリンやアザチオプリンなどが使用されます。

近年、生物学的製剤の有効性が報告されています。抗TNFα製剤のインフリキシマブやアダリムマブ、IL-6受容体阻害薬のトシリズマブなどが使用されます。眼病変に対してはインターフェロンαも有効とされています[3]。

皮膚症状に対しては、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などが用いられます。重症例ではコルヒチンの内服も検討されます。潰瘍には創傷被覆材の使用も有効です。日光や熱などが皮疹の悪化因子となるため、予防が重要です[4]。

以上、ベーチェット病について概説しました。病態解明と治療法の進歩により、予後は改善してきていますが、未だ原因不明の部分も多く、治療に難渋する症例も存在します。今後のさらなる研究の発展が期待されます。

参考文献:

[1] International Team for the Revision of the International Criteria for Behçet's Disease (ITR-ICBD), et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014; 28(3): 338-47.

[2] Yazici H, et al. Nat Rev Rheumatol. 2018; 14(2): 107-119.

[3] Hatemi G, et al. Ann Rheum Dis. 2018; 77(6): 808-818.

[4] Scherrer MAR, et al. An Bras Dermatol. 2017; 92(4): 452-464.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

大塚篤司の最近の記事