侍ジャパンは黒星発進!! 金メダルへのキーマンは近藤健介だ
稲葉篤紀監督が率いる野球日本代表“侍ジャパン”が、7月24日に楽天生命パークで東北楽天との強化試合を実施。いよいよ実戦を開始した。東京五輪で金メダルを手にするために、プロ監督経験者の落合博満や梨田昌孝らが口を揃えたのは初戦の先発投手だ。
この試合にも、7月28日のドミニカ共和国との初戦の先発が有力と言われている山本由伸(オリックス)が先発した。1回表の先頭・小深田大翔に右前安打を許すも、落ち着いて後続を仕留め、続く2回表も3者凡退で森下暢仁にマウンドを譲った。コンディションも含め、不安はないという印象だ。
ただ、国際大会の怖さとして思い出すのは、2004年のアテネ五輪である。第1戦の相手は実力差のあったイタリアだったが、エースの上原浩治を先発させて12対0(7回コールド)の完勝。その勢いのまま、第2戦には国際大会初経験の岩隈久志が先発する。チーム最年少の23歳ながら、前年に15勝をマーク。この年も15勝2敗で大阪近鉄のエースにのし上がる期待の星も、格下のオランダに自分の投球ができず、2回途中3失点で降板。その後はマウンドに登ることもなかった。
山本は、当時の岩隈と同じプロ5年目。2019年のプレミア12など国際大会も経験しているが、悲願の金メダルに向かう大事な初戦の先発となれば、ペナントレースとは違った気持ちにもなるはず。そんな山本に普段通りの投球をしてもらうためにも、早い段階での援護は不可欠だろう。その打線は、右脇腹に違和を覚えている柳田悠岐(福岡ソフトバンク)が外れ、以下のようなスタメンを組んだ。
3 山田哲人
6 坂本勇人
7 吉田正尚
9 鈴木誠也
D 浅村栄斗
5 村上宗隆
8 近藤健介
2 甲斐拓也
4 菊池涼介
1回裏には山田哲人(東京ヤクルト)が四球、坂本勇人(巨人)と吉田正尚(オリックス)の連打で無死満塁とし、鈴木誠也(広島)の押し出し四球で先制。さらに、浅村栄斗(東北楽天)の右前安打と近藤健介(北海道日本ハム)の中犠飛で3点を奪ったが、その後は早川隆久、岸 孝之、アラン・ブセニッツらの継投に追加点を挙げることができない。そして、中盤に失点して追いつかれると、8回表には千賀滉大が2点を許し、強化試合とはいえ黒星を喫してしまった。
二番・近藤で攻撃の幅は広げられる
初戦とはいえ、2回以降はなかなかつながらなかった攻撃を見て、あらためて感じたのは二番打者の重要性だ。チャンスメイクできる確実性と勝負強さに優れ、できれば一発長打の怖さもと、欲張りな役割を求められるだけに、坂本を据えた稲葉監督の考えはよく理解できる。ただ、これまでの実績と現状のパフォーマンスを加味すると、もうひとり適役がいる。この試合は七番の近藤だ。
第1戦に先発する投手の重要性を説く落合は、攻撃のポイントには「黙っていても一、二塁間にゴロを打てる左打者」の存在を挙げる。
「トーナメントのように負けられない一発勝負になると、一番打者が出塁した時、簡単に犠打でアウトをやりたくないケースも出てくる。相手バッテリーに色々と考えさせ、結果的に最低でも一死二塁の形を作りたいから、追い込まれてもライト方向に強い打球、一、二塁間にゴロを打てる技術を持った選手を二番に置きたい。ヒットになれば、一気に一、三塁とチャンスも広げられる」
実際、中日で監督を務めていた2011年、巨人の小笠原道大が深刻な不振でスタメンを外れることが多くなると、「彼を二番で使えばいいのに。クリーンアップの働きを期待できなくても、黙っていても一、二塁間にゴロを打てる二番がいれば、攻撃の幅が広げられるのだから」と見ていた。
そんな小笠原の打撃をイメージすると、バットコントロールと選球眼に長け、出塁率も高く、甘いボールは長打にできる近藤を二番で起用する手も有効なのではないか。1回裏の中犠飛はもちろん、2点を追う8回裏二死から四球を選んだ打席にも、近藤の存在感が見て取れた。いずれにしても、国際大会は何が起きても不思議ではない特別な舞台。日本代表には、流れや運も呼び込める戦いを繰り広げてもらいたい。