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野球日本代表が東京五輪で金メダルを獲るための条件とは

横尾弘一野球ジャーナリスト
東京五輪で、野球日本代表が金メダルを手にするために必要なこととは……。(写真:青木紘二/アフロスポーツ)

 6月26日に行なわれた世界最終予選でドミニカ共和国がベネズエラを破り、東京五輪に出場する6チームがようやく内定した。6月16日に24名を発表した日本代表も、會澤 翼捕手(広島)、中川皓太、菅野智之両投手(ともに巨人)がコンディション不良のため辞退。新たに梅野隆太郎捕手(阪神)、千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)、伊藤大海投手(北海道日本ハム)が加わり、稲葉篤紀監督の下で金メダルを目指す。

 日本はドミニカ共和国、メキシコと同組になり、7月28日に福島県のあづま球場でドミニカ共和国との第1戦に臨む。金メダルにはリーグ戦から最短で5試合、最長でも7試合の短期決戦ゆえ、選手起用が大きなポイントになると言われている。では、その選手起用でカギとなるのは何か。東芝府中時代に世界選手権など国際大会を経験し、中日監督としても高い手腕を発揮した落合博満、また監督経験が豊富で、2013年の第3回ワールド・ベースボール・クラシックで日本代表の野手総合コーチを務めた梨田昌孝らが口を揃えるのが「第1戦の先発投手」だ。

 2004年のアテネ五輪に、日本は初めてオールプロの編成で出場することになり、長嶋茂雄監督が就任。絶対に負けられない2003年のアジア予選で長嶋監督は、以下の9名の投手を選出した。

上原浩治、木佐貫 洋(巨人)、岩瀬仁紀(中日)、黒田博樹(広島)、安藤優也(阪神)、 石井弘寿(ヤクルト)、松坂大輔(西武)、和田 毅(福岡ダイエー)、小林雅英(千葉ロッテ)

 この顔ぶれを見たファンやメディアは、松坂か上原が投手陣の軸になると考えた。ともに1999年にプロ入りし、松坂はルーキーから3年連続で最多勝利に輝くなど、この年までに67勝。上原は新人で20勝を達成するなど、やはり5年間で72勝をマークしている。ただ、シドニー五輪での経験値、唸りを上げる剛球の印象が強く、エースは松坂だろうと言われた。しかし、落合は「勝ちたいなら、上原を中心にまわすべき」と断言した。

「トーナメントの一発勝負や短期決戦、プロでも絶対に負けられない試合があるけれど、そこで信頼できるのはボールの速さや勢いではなく、高さもコースも間違えない絶対的なコントロールだ。そう考えたら、プロでも上原しかいないだろう」

対戦相手ではなく、第1戦に上原で勝つこと

 その後、代表決定リーグ戦の対戦順が中国、チャイニーズ・タイペイ、韓国に決まると、上原は中国との第1戦に先発させるべきだと語った。

「最も厳しい展開が想定される韓国戦に、上原を先発させたいと考える人は多いだろう。でも、一番大切なのは第1戦にきっちり勝つこと。中国が相手ならば、日本は誰が投げても勝つはず。それでも、先の戦いまで見据えれば、はじめに上原で勝つことが必要なんだ」

日米で、また先発でもリリーフでも活躍した上原浩治の存在は、日本代表にとっても不可欠だった。
日米で、また先発でもリリーフでも活躍した上原浩治の存在は、日本代表にとっても不可欠だった。写真:ロイター/アフロ

 そうしてアジア予選を迎えると、中国との第1戦では上原が先発した。長嶋監督に話を聞くと、落合とまったく同じ考え方であり、「第1戦を上原で勝てば、第2戦、第3戦は誰が先発でもいいくらい。それだけ第1戦の上原は絶対なんです」と強い口調で言った。現役時代に日本シリーズ9連覇の偉業を経験している長嶋監督も、短期決戦でものを言うのは制球力が土台になる投球術だときっぱり。

 東京五輪で金メダルを手にするためのカギのひとつは、ドミニカ共和国との第1戦の先発投手ということになるようだが、稲葉監督は誰にその役割を託すのか。7月24日に東北楽天、25日には巨人と行なう強化試合も参考にしながら考えてみたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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