カスハラから対応者を守る・毅然と対応するための言い回し
東京都は、顧客の迷惑行為から労働者を守るため、カスハラ対策防止条例を定める方針を固めました。
カスハラ(カスタマーズハラスメント)とは、顧客からの理不尽な要求や、威圧的な言動による苦情のことです。
カスハラ被害は深刻です。
対応した人がPTSD(※)を発症したり、迷惑行為で業務が滞り、他のお客様にも悪影響を及ぼすことがあります。
(※PTSD:心的外傷後ストレス障害。恐怖体験などのトラウマによる、強い精神不安。日常生活に支障をきたすこともある。)
そこでこの記事では、カスハラに該当する行為別に、毅然と対応するための言い回しについて、お伝えします。
カスハラ行為別 言い回しの例
時間拘束型
店舗内に居座る、長時間の電話をする、従業員を拘束し、長時間対応させるなどの迷惑行為。
時間拘束型は、以下の3点を簡潔に伝えます。
1.話は十分に聴き、理解したこと
2.現時点では、これ以上の対応ができないこと
3.お引き取りいただくこと
帰らない場合には、警察への通報を示唆するという方法もあります。
「お話は十分に伺いました。どのような対応ができるか確認後に、改めてご連絡いたします。○○(具体的な日時)には、ご連絡いたしますので、本日はお帰りいただけますでしょうか。」
「恐れ入りますが、現時点ではこれ以上の対応をいたしかねます。お帰り下さい。」
「居座るおつもりでしたら、専門機関への通報をせざるを得ません。」
リピート型
頻繁に来店しては、都度、苦情を言う。理不尽な要望や苦情を言うために、繰り返しの電話をする。
リピート型は、「もうその件は完了した」というスタンスで接するのがよいでしょう。以下3点を、毅然と伝えましょう。
1.同様の話を何度も聴き、できる対応をしたこと
2.今後は、同じ話の対応はできないこと
3.行為が続く場合は、今後の利用をお断りすること
電話であれば、通話内容を記録しておき、状況により弁護士などの専門家に相談します。都度、対応せず、窓口を一本化するのも有効です。
「これまでも同様のご意見を〇回ほどいただいております。弊社でお答えできる事柄はすべてお伝えしておりますので、今後、同様のお問い合わせには対応できかねます。」
暴言・大声・強要型
暴言、侮辱的な発言、大声を出して秩序を乱す。「外に出ろ」「謝れ」など侮辱的な行為を強要する。
大声や暴言に対しては、対応する側の感情コントロールが必要になります。いくら毅然と対応しましょうといっても、実際にその場になれば、頭が真っ白になることもあるでしょう。
そこで肝心なのは、ひとりで解決しようとしないことです。複数で対応する・警備員を呼ぶなどして、身の安全を確保しましょう。複数で連携し、録音・退去を促すなどして、場の鎮静化に努めましょう。
「お怒りの気持ちはよくわかりました。しかし、そのような暴言を口にされるのであれば、これ以上は対応できません。」
「ひどいお言葉が続くようでしたら、私どもでは対応できません。専門機関への引き渡しを検討します。」
「今日はお帰りください。おちついてお話ができる状況になりましたら、お話を伺います。」
理不尽な返金要求・商品交換の要求
返金要求や商品交換については、社内で一定の判断基準を定めておくとよいでしょう。現場で即決できない場合は、安易なことを答えず、社内の対応部署と検討の時間を設けましょう。
「誠意を見せてほしい」などの威圧的な要求には、具体的に何を望んでいるかを確認し、基準に照らし合わせます。
(誠意を見せてほしい)→「具体的には、どのようなことをお望みでしょうか」
(仕事を休んでここまで来た、給料と交通費を払え)→「恐れ入りますが、個人のご事情については、私どもは対応策を持ち合わせておりません。」
(返金をしてほしい)→「社内で総合的に判断し、ご返金はできないという結論にいたりました。理由といたしましては・・・(規定等を伝える)」
以上、カスハラの行為別の言い回しについてお伝えしました。
この他にも、カスハラには様々なケースがあるでしょう。大切なのは、個人が心身を痛めることがないようにすることです。組織で対応する、警察や弁護士などの専門機関に相談するなどして、最善を尽くしてください。