ミスター慶應でフェンシング全国ベスト5の西垣匠。ドラマデビューから出演作が続く超新星の素顔
『ミスター慶應2019』でグランプリを獲得した慶應大生の西垣匠が、ドラマ『夢中さ、きみに。』で俳優デビューした。同枠の『西荻窪 三ツ星洋酒堂』にも連続出演のほか、『COTORICA.』のメンズモデル、SEKAI NO OWARIの曲がモチーフのショートドラマ出演と抜擢が相次ぐ。高校時代にはフェンシングで全国5位に入って文武両道に長けつつ、やさしそうなたたずまい。長澤まさみ、浜辺美波、上白石姉妹ら女優のイメージが強い東宝芸能に所属する注目の新人だ。デビューまでの経緯や素顔について深掘りした。
最初に憧れたのはスパイダーマンです
――大学は元から慶應を志望していたんですか?
西垣 ずっとフェンシングをやっていて、高校では私立専願コースで勉強していたら、先生に「慶應を目指したら?」と言われたんです。慶應はフェンシングも強くて、成績的にも合格が狙えるということで目指して、結局、指定校推薦で入りました。
――慶應はスポーツ推薦はないそうで、西垣さんはフェンシングで全国5位になりつつ、成績も良かったんでしょうね。
西垣 勉強も一生懸命やっていました。
――法学部を選んだ理由は?
西垣 フェンシングで日本代表として海外遠征によく行っていて、外国では日本とシステムが違うことが多々あったんです。学部を調べていたら、法学部の政治学科は1~2年生の間に幅広く勉強する中で、外国の政治や日本との外交関係を学べるということだったので、面白そうだなと思いました。
――その時点では、どんな人生設計がありました?
西垣 法学部から何かになろうというのはありませんでした。もともと小さい頃から映画が好きで、芸能界に興味はあったんです。最初に観た映画は、保育園の頃に母親にレンタルショップに連れて行かれて選んだ『スパイダーマン』でした。観てから腹巻きをマスクみたいにかぶってサングラスをして、家の中を走り回っていました(笑)。
――男の子は特撮ヒーローに憧れますが、『スパイダーマン』から入りましたか。
西垣 戦隊シリーズも『ガオレンジャー』から観始めて、昔の作品も昭和まで遡って観ました。『ゴーゴーファイブ』とか『ジュウレンジャー』とか『ギンガマン』とか。それで自分もヒーローになりたいと思ったんですけど、石川県に住んでいたので、芸能に進む道はないかなと。でも、大学で東京に出てきて、年齢的には最後のチャンスで、芸能のほうに行けたらと思うようになりました。
高校ではフェンシングと勉強だけの生活でした
――高校時代はフェンシング中心の生活だったわけですか?
西垣 そうですね。父親が指導者で現役時代も強くて、教えられてきました。フェンシング以外は勉強しかしてません。
――青春的な思い出は?
西垣 ないですね(笑)。高校にフェンシング部はなくて、授業が終わったら1人で父親のところに練習に行っていたので、学校帰りに友だちと遊ぶこともありませんでした。
――女子にはモテたでしょうけど。バレンタインはチョコの山とか。
西垣 まったくなかったです……。
――まあ、自分で「モテてました」とは言えませんよね(笑)。
西垣 いや、本当にそんなことはなかったんです(笑)! 男の友だちは普通にいましたけど、高校が進学校で、みんな勉強するか部活するかみたいな感じだったので。
――大学に入ってからは、いわゆる慶應ボーイっぽいこともしてました?
西垣 派手なことが苦手なのでキラキラした生活はしていなくて(笑)、国際交流のサークルに入りました。外国人の留学生が遊びに来て、みんなで鎌倉を散策したりしました。
――2年生のときに『ミスター慶應』のグランプリになったでんすよね。
西垣 1年のときは芸能のことでずっと迷っていて、2年になったタイミングで友だちの推薦でコンテストに出場しました。たくさんの方が観に来られたステージで、意外と緊張せずにスピーチもできて、自分は人前に出るのが好きなのかなと気づきました。
岡田将生さんが理想の俳優像と重なります
――ミスター慶應になったあと、1年間の演技レッスンを経て東宝芸能の所属になったそうですが、長澤まさみさん、浜辺美波さん、上白石萌音さん・萌歌さんと女優さんのイメージが強い事務所ですね。
西垣 だからこそチャンスだと思いました。男性の新人として僕が頑張れば、唯一無二の存在になれるかなと。あと、もともと映画が好きだったので、(東宝系列の)この事務所で挑戦したい、というのもありました。
――ヒーローものの話がありましたが、他のジャンルだと、どんな映画が好きなんですか?
西垣 『マスク』とかコメディチックなものも好きでした。あと、アクションもので『スパイキッズ』も好きで、子どもの頃は腕時計をスパイの道具に見立てて遊んでました(笑)。邦画だと、大好きなのが『横道世之介』です。2時間40分くらいあるのに、一瞬も飽きません。起承転結がそれほどハッキリなく大学生の日常を追い続けても、これだけ面白いのは、きっと役者さんたちの演技力のぶつかり合いが素晴らしいからだろうなと、感動しました。
――好きな俳優さんもいますか?
西垣 岡田将生さんです。『リーガルハイ』や『伊藤くんA to E』が好きでした。カッコイイけど、少し抜けてる3枚目も演じられるのが、理想の俳優像とピッタリ重なって尊敬しています。
追い込まれてから力が出るタイプです
――演技レッスンでは苦戦したことはありました?
西垣 1回目は何もわからず手も足も出なかったのが、だんだん、ちょっとずつですけど慣れてきました。最初の頃は「演じるな」とよく言われました。「何かになろうとしても、どうせできないから、自分ならどうするかをやってみなさい」と。そこからのスタートでした。
――泣いたり怒ったりする演技は、すぐできました?
西垣 一度だけカメラの前で泣いたことがあって、不思議な感覚でした。泣こうと思って泣けたことはなくて、いまだによくわからないですね。
――普段はそういう感情の起伏はありますか?
西垣 本当に泣き虫です。映画を観ても音楽を聴いても、すぐボロボロ泣いちゃいます。
――たとえば、どんな作品で?
西垣 家族ものにすごく弱くて、大泉洋さんの『青天の霹靂』はフェンシングの海外遠征から帰る飛行機の中で観て、ボロボロ泣きました。隣りに座っていたコーチに「どうした?」と心配されるくらいに(笑)。
――演技ですごく悩むところまで行ったことはないですか?
西垣 追い込まれたりはします。でも、僕は追い込まれると燃えるタイプなんです。フェンシングでもそうでした。点差が開いてギリギリにならないと、エンジンがかからなくて。わざとではなくて、最初から頑張っているんですけど、なぜか3点差くらいつけられて「ヤバイ!」となってから、ポンと力が出ました。だから、演技レッスンもスパルタでやってもらっています(笑)。
ヤンキー役は自分と真逆で振り切れました
――デビュー作となったドラマ『夢中さ、きみに。』の5話では、後輩をパシリに使って、お金も払わず弁当を買ってこさせるヤンキーの役でした。西垣さんのやさしそうな雰囲気とは全然違ってましたね。
西垣 自分と真逆なキャラクターで、最初は「僕がこれをやるんですか?」ってビックリしました。でも、割り切って振り切れた分、やりやすかったです。
――ヤンキーっぽい振る舞いは研究したんですか?
西垣 『クローズZERO』を観ました(笑)。肩を揺らしながら歩くとか、眉毛をちょっと寄せて話すとかマネして、話し方も普段と変えてます。あんな低い声でまくしたてることも、大きい声で怒鳴ることもないので、新鮮でしたね。
――初めてのドラマで、なかなかOKが出ない場面とか、ありませんでした?
西垣 なかったと思います。やっぱり初めての作品として残りますし、後悔は絶対したくなかったので、練習はいっぱいしました。現場ではそれを思い切り出すだけ。余計なことを考えず、とにかく声を大きく出すことだけ意識して演じました。
――初めての現場で驚いたことはありましたか?
西垣 「ひとつのシーンをこんなに何回も撮るんだ」と思いました。1日かけて撮ったものが15分とかになるって、すごい世界ですよね。「今度はここから」というのがあって、動きとか変わらないようにして台詞を言わないといけないのは、大変でした。
――でも、頭からカフェオレをかけられたシーンは、たぶん1回でOKを出さないといけなかったんですよね?
西垣 そうなんです。撮り直しだと、制服を着替えて髪もセットし直して、メイクももう1回となるので、とっても緊張しました。「絶対噛んじゃダメだ」と思っていたので、よく観ると目が泳いでいて(笑)。そんな中で一発でOKが出て、本当に良かったです。
目力はあって表情はやさしいところを出して
――続いて出演の『西荻窪 三ツ星洋酒堂』では、町田啓太さんが演じる主人公の高校時代の役。
西垣 とにかく町田さんに見えないとダメだと思って、現場を見学させていただいて、ご挨拶もして、過去作を観たりもしました。ヴィジュアルもできるだけ似るように、メイクさんと「こうしたほうがいいんじゃないか?」と研究しました。
――町田さんというと、二枚目の典型的のような方ですよね。
西垣 本当にカッコ良くて、物腰は柔らかくて、すごく気さくな方でした。「こんな男性になりたい」と思いながら、お話させていただきました。
――ご本人と話したことが演技に活かせました?
西垣 町田さんは目力があるのに、表情はやさしい。そういうところをうまく出せるように頑張りました。
台詞ナシでムードメーカーに見えるように
――それから、名曲とドラマを融合させる『Music Story produced by ABEMA』の第1弾となる、SEKAI NO OWARIの『YOKOHAMA blues』のショートドラマにも出演。セカオワは自分で聴いてました?
西垣 小学生の頃からずっと聴いていました。特に『眠り姫』や『スターライトパレード』が好きです。あと、『進撃の巨人』の実写映画の主題歌だった『ANTI-HERO』は、英語の歌詞を見ながら聴きました。なので、今回のショートドラマに出られて、すごく嬉しかったです。
――結婚式を挙げる新郎の役でした。
西垣 結婚式って、小さい頃に行った写真は残っているんですけど、まったく覚えてなくて。父親に「どうだった? 緊張した?」と聴いて参考にしました。
――昔のバンド仲間でミュージシャンになった友人が式に来て、実は彼は新婦に想いを寄せていたという。
西垣 僕はその想いを知らずに、主人公から好きな子を奪う形になった男なので、ちょっとズレるとイヤな感じになってしまう。だから、鈍感だけどやさしくて、ムードメーカー的に見えたらと。台詞がなくて動きと表情だけで表現しないといけなかったので、そこは頑張りました。
ビビリでジェットコースターはダメです(笑)
――デビューから立て続けに仕事が決まって、良いことですけど戸惑いもないですか?
西垣 本当にありがたいのですが、理解は追い付いてない状態です。現場では完全に置いていかれて、出来上がった作品を観て「おーっ、映ってる!」みたいな(笑)。ただ、フェンシングの試合ほど緊張することはなくて。思い切りの良さはあると自分では思っています。
――フェンシングで全国トップレベルで戦ってきて、度胸はついているんでしょうね。当面の課題と考えていることはありますか?
西垣 まだ想像力が足りないと思います。台本を渡されて演じる空間があって、「ここで何ができるか?」と考えたことがまだ浅くて。レッスンで先生に諭されて、初めて「こういうやり方もあった」と気づくことが多いです。
――現場で思わぬ演出をされることもありますよね。
西垣 そうなったとき、お芝居が小さくなったりするんです。そこは課題だと思います。
――西垣さんはスポーツとか勉強とか何でもできるみたいですが、苦手なことはないですか?
西垣 エビが食べられません(笑)。石川出身で海鮮は好きで、刺身はいいんですけど、エビを茹でたりされると、プリプリした食感が苦手です。あと、高いところもダメで、ジェットコースターとかフリーフォールとか、友だちに連れて行かれると声が出せません。実はすごくビビリです(笑)。
子どもたちの憧れのヒーローになれたら
――原点だった戦隊モノは、今でも出たい気持ちはあるんですか?
西垣 ぜひ挑戦させていただきたいです! 学童保育のアルバイトをしていたこともあって小さい子も好きで、そういう子たちの憧れになれますよね。あとはミステリーとかサスペンスとか頭を使う作品も好きなので、そういう役にもチャレンジしてみたいです。
――西垣さんは穏やかでやさしそうに見えますが、内心ではメラメラ燃えるものもあるんですか?
西垣 あまり表に出ないとよく言われますけど、ものすごく負けず嫌いです。フェンシングでもずっとそうで、試合で負けたときは、悔しすぎて控え室で泣いていました。
――芸能界でも同年代の俳優さんを追い越そうと思っていたり?
西垣 それがないと勝てないと思います。もちろん今は足元にも及びませんけど、いつかは追い抜くつもりでやっています。
――レッスンを受ける以外に、日常で演技力向上のためにしていることも?
西垣 人間観察もしますし、観た作品で「この役は面白そう」と思ったら、そのシーンを自分でやってみて、スマホで撮って観てみます。自分がイメージしている表情とカメラに映った表情にまだまだズレがあったりするので、すり合わせて一致するように努力しています。
――ガムシャラに練習するだけでなく、頭を使って取り組んでいるみたいですね。
西垣 ちゃんと筋道を立てないとできないタイプで、「こうすれば、こんな成果があるだろうな」とか「こうしたほうがキャラクターの魅力が伝わるな」とか、理解してから取り組みます。
――長い目で将来的なことも見据えていますか?
西垣 本当に先々のことになりますけど、初めて憧れたのがスパイダーマンだったので、アメコミのヒーローを一度はやりたいです。マーベルが好きで『アベンジャーズ』シリーズも観ていて、キャプテン・アメリカのフィギィアも持っています(笑)。日本人のヒーローもいるので、ぜひやってみたいです!
Profile
西垣匠(にしがき・しょう)
1999年5月26日生まれ、石川県出身、178cm。
ドラマ『夢中さ、きみに。』の第5話にゲスト出演して俳優デビュー。MARK STYLER『COTORICA.』メンズモデル。SEKAI NO OWARI『YOKOHAMA blues』ショートドラマに出演。ドラマ『西荻窪 三ツ星洋酒堂』(MBSほか)に出演中。