メッシの王位は揺るがず。バルサのジョーカーと、戴冠に向けた14選手。
3冠が、現実味を帯びてきた。
バルセロナがタイトル獲得に向けて邁進中だ。リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグという主要3大会制覇を視野に捉えている。
■11+3
昨季はローテーションを採用せず、疲労が蓄積した結果、チャンピオンズリーグで準々決勝敗退に終わった。その過ちを繰り返すまいと、エルネスト・バルベルデ監督は強固なチームを作り上げようとした。
トップチームの22選手。そのうち、14選手をバルベルデ監督はレギュラー格の選手として扱ってきた。
チャンピオンズリーグ準決勝リヴァプール戦を控え、3ポジションで熾烈なレギュラー争いが続いている。左ウィング、インテリオール、右サイドバックである。フィリップ・コウチーニョとウスマン・デンベレ。アルトゥール・メロとアルトゥーロ・ビダル。セルジ・ロベルトとネルソン・セメド。彼らが、指揮官の頭を悩ませる。
冬の移籍市場で加入したジェイソン・ムリージョ、ケヴィン=プリンス・ボアテング、ジャン=クレール・トディボ、彼らは実質構想外だ。その一方で、カンテラーノのカルレス・アレニャや、マウコムといった選手が要所で輝きを放っている。組織全体のパフォーマンスは非常に高い。
■ポジション争い
セメド(リーガ18試合先発で戦績12勝6分け)とセルジ・ロベルト(21試合先発14勝5分け2敗)は攻守の点で貢献度が異なる。
対人に強いセメドは守備要員である。今季、スピードのあるサイドアタッカーがいるチームと対峙した時に苦しんできたバルセロナだが、セメドの起用で徐々に対抗策を見出せるようになった。対して、セルジ・ロベルトはビルドアップを助ける。中盤まで上がり、ポゼッション率の増加に貢献する。リオネル・メッシとの連携力が高く、右サイドの攻撃力アップとメッシのトップ下への移動を可能にする。
アルトゥール(17試合先発12勝4分け1敗)は、チームに落ち着きをもたらす存在だ。調和性を備えている。対するビダル(19試合先発12勝7分け)は肉弾戦に強く、空中戦で競り勝てる。いわばフィジカル要員だ。これは昨季パウリーニョが担っていた役割である。
注目されるのが、デンベレ(18試合先発14勝3分け1敗/8得点)とコウチーニョ(20試合先発13勝6分け1敗/5得点)の左ウィングだ。デンベレは簡単にボールをロストしたかと思えば、観衆を黙らせるようなゴラッソを沈めてしまう。不安定なパフォーマンスに終始しながら、バルセロニスタに認められ始めている。両足が使えて、縦に速い。カウンターの時に、独力でボールを運べる。
コウチーニョはバルセロナで適性ポジションを見つけるのに苦労してきた。ウィングとしては突破力と得点力に欠け、インテリオールとしてはプレービジョンと創造性が不足している。また、オフ・ザ・ボールに課題を残している。しかしながら、メッシとスアレスと流動的にポジションチェンジを行いながら、少しずつ本来の姿を取り戻しつつある。
■王位
そして最も難航しているのが、この左ウィングの選考である。左サイドはジョルディ・アルバの「偽ウィング」が大きな武器となっている。メッシとアルバのコンビネーションは抜群だ。左のウィングには、この2人の関係性を尊重しながらの動きが求められる。4-2-4のオプション化で、だから左WGのタスクは難しい。
バルベルデ監督は昨季、就任一年目で伝統の4-3-3を辞めて4-4-2に布陣を変更した。プレスとショートカウンター。バルベルデの掲げるプレースタイルは常に論争の的になった。ポゼッション主義者から、反発を受けたためだ。
バルセロナの生態系を崩したバルベルデ監督だが、メッシ絶対主義に変わりはない。それは不変だ。不世出の選手を弄るなど、できないだろう。今季、メッシは46得点20アシストを記録しており、チーム得点の51%に関与している。
これは、2011-2012シーズン、ジョゼップ・グアルディオラ政権におけるメッシの数字に近づくものだ。メッシは公式戦73得点29アシストで、チームの得点の53%に関与していた。
メッシ依存症ーー。バルセロナが勝ち続ければ、まことしやかに囁かれる。ただ、一人で試合を決めてしまうソリスト。それがリオネル・メッシであるというのも事実だ。
その上で、11選手の固定メンバーではなく、14選手をマネジメントする。誰がスタメンになるか、あるいはジョーカーとして使われるのかは分からない。人心掌握術に長けたバルベルデ監督と、王位に君臨するメッシが、戴冠に向けた道標を示す。